卵の中の恋-2-

卵の中の恋 -2-


婦人の言う通りクリティウスはティマイオスの背中を数回叩くと

「ゲプッ・・・」

とゲップをした。

今もクリティウスの肩越しに顔を乗せ周りに背を向けて立つティマイオス

そんなティマイオスを見て西家の当主にしてティマイオスの父親は

ソ〜と手を伸ばしティマイオスを背後から抱こうとしている

親子なのに何故背後から息を殺し己が子を抱こうとしているのか疑問を

表情に浮かべながら様子を見ているクリティウス

何かしらの気配を感じたのか

「ピィ!!!!!!!ピィ!!!!」

と叫びながら逃げ様とクリティウスの身体によじ昇るティマイオス

小さな手で何度もクリティウスの横面を叩き耳を引っ張りながら肩に登ろうと

する

「いっ・・・痛いティマ」

小さな足がクリティウスの頬をムギュ〜と蹴り上げ肩に乗った時

落ちる!!

と思ったが婦人がティマイオスを抱き上げながら

ピィピィ・・・

と鳴くティマイオスの身体を撫で安心させている

優しそうな母の顔・・・しかしその顔が西家当主に向けられた時は余りにも

冷ややかで

「あなた何度言えば解るのです?

ティマイオスを抱きたいのならその髭を剃ってしまいなさい!

その髭で顔をスリスリさせれてティマイオスは痛くて仕方が無いのですよ

長男の時もその髭の所為で散々な目にあっているのに少しは反省しなさい」

「でも髭は貴族にとって・・・」

「お黙り!貴族の集まりなんて殆ど皆無では在りませんか

それに貴方の場合貴族としてでは無く

年の割には若く見られる事が嫌なんでしょ?」

ことごとく痛い所を突いて来る婦人に流石の当主も言葉を失う

そしてそれに身に覚えが在るのかクリティウスの父親もうわの空

母親は、隣でクスクス笑っている

 

夕食を終えあてがわれた客室で寛いでいると

「クリティウス 西家の婦人が貴方にティマイオスの面倒を少し見て欲しい

そうよ」

「侍女とかは?」

「ティマイオスは少々気難しい性格らしくティマイオスが気に入ってる

侍女が1人いるらしいのだけど今日は暇を貰ってるらしいのよ

婦人のお手伝いしてくれるかしら?」

「いいですよ ティマの部屋に行けばいいのですか?」

ティマが気に入ってる侍女ってどんな女の人なんだろう?

ティマ・・・俺の事も気に入ってくれるといいんだけど・・・

 

そう思いながらティマイオスの部屋へ

この時点でクリティウスはティマイオスに気に入られている事に未だ気が

着いてない様である

コンコン・・・

「失礼します」

一応挨拶をして中に入ると床の上にチョコンと座るティマイオスの姿が

「クリティウス 急に御免なさい」

「いいえ構いませんよ」

申し訳無さそうな表情をする婦人

寧ろクリティウスにとっては大歓迎!!

ティマイオスの傍に居られる事が出来て嬉しいのだ

「ティマ お兄さんに遊んでもらうのよ」

「ピィ?」

「それじゃ お願いするわね」

「はい」

そう言って部屋を後にする婦人

予想外の2人きり

嬉しくて仕方が無い

・・・がこれは予めクリティウスの気持ちを東家の婦人から聞いていた西家の

婦人の計らいなのだった。

そうとも知らずクリティウスはティマイオスの遊び相手になってあげる

傍にあったボールをティマイオスの傍に転がしただけで

「ピィピィ」

と喜びの声を上げるティマイオス

そこへ西家の当主が入って来るとティマイオスはヨツンバイになり急いでクリティウス

の背に隠れてしまう

「ティマそう怯えんでくれ 何もしないから」

当主は苦笑しながら

「ティマが妻や侍女以外にナツク相手が居様とは正直思わなかった

アレの兄は、私の髭だけが嫌だったらしく私以外の者とは仲良くしているがアレだけは

自分の気に入った者以外近づけたがらん

それ故にアレの将来を心配していたんだが・・・クリティウスこれから先もアレの良き友

として居てくれぬか?」

将来を心配する父

幼いクリティウスには少々難しい内容だったがそれでも自分が認められている事に

気付き嬉しそうに

「喜んで!」

と返事をした。

クリティウスの背後で不思議そうな顔をしているティマイオス

 

 

2〜3日滞在した後 クリティウス達は西家を後に東へと飛び立った

クリティウスはティマイオスが気に入っている侍女の事を当主に訊ねた所

彼女は当主が幼き時より仕えている女性でたまたま孫の誕生と重なったらしく急ぎ暇

を貰い孫の下へと行ったらしいのだ

 

別れ際西家の婦人から頂いたクリスタルにはティマイオスの映像が収められている

それを嬉しそうに眺めていると

「クリティウス ティマって可愛かったか?」

「兄上・・・ええ可愛いかったですよ」

「本当ティマって婦人似の可愛いオスだよなぁ」

兄の言葉に一瞬固まるクリティウス

「兄上今何とおっしゃいました?ティマがオス?」

「ああ・・・もしかして気が付かなかったのか?ティマはれっきとしたオスだぞ」

「こんなに可愛いのに?」

「だから母親似だと言っただろう?」

ティマがオス・・・???????????

嘘だ〜!!!!!!

否 ティマがオスであれなんであれそんな事は関係ない!!

ようは俺の気持ち次第!!

 

パニクリ何かを決意した弟を横目に見ながら

 

本当 母親似だよなぁ

ティマの母親って細身でありながら文武両道で強いオスだったのに

西家の秘薬でメスになり当主と結婚したんだよなぁ〜・・・







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