ウソと言って!
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=海馬邸=
「オイ 兄さまが遊戯と一緒に帰って来たって本当か?」
今先程兄の部屋から出て来たメイドに話しかける海馬の弟モクバ
「はい モクバ様しかし・・・」
兄の部屋を今一度振り向くメイドにモクバは首を傾げながら
「どうしたんだ? 兄さまと遊戯に何かあったのか?」
「いえ・・・寧ろ何も無いんです・・・」
「何も無いんならいいじゃないか」
「はぁ・・・会話さえ無いんです・・・しかも異用な空気につつまれ・・・
あっ別に喧嘩とかは、されてませんよ
寧ろ御二方共喧嘩をなさる時は大声でなさいますし室内は大嵐で
家具が飛び交うでしょうから」
痛い所を言われ苦笑するモクバ
確かにどういう原理かしらないが2人が対峙すれば室内であっても嵐が
起き家具が飛び交う
瓦礫の山と化した高級な家具達
その都度買い直しをしてる
モクバも2人には何回も注意してる
「確か会話もしてないんだよな」
「はい」
「オレ気になるから様子見てくるぜ」
「モクバさま くれぐれも御気をしっかり持って下さいね」
そう言うとモクバはメイドに見送られながら兄の部屋に
兄の部屋の前に来ると扉越しに感じる異様な雰囲気
それでもモクバは、気を引き締めなおし扉をノックするも返事が返って来ない
何か嫌な感じがするが扉を開けてみる・・・
「うっ・・・」
扉を開けると否な空気が充満しており異様な気に気圧される
「兄さま お帰りなさい!!・・・・・」
モクバが目にしたもの
異様な気を発する兄と遊戯の姿
しかもテーブルを挟んで向いあって座っている
互いの息使いが荒い・・・
(ゆっ・・・遊戯何で掛け布団なんか抱きしめているんだ?)
「遊戯 この前 兄さまに買って貰ったクリボーのヌイグルミとブルーアイズの絵柄
が入ったクッション持って来てやるから掛け布団から離れたらどうだ?
流石にその姿は異様だぜ」
モクバの存在に気が付いた遊戯は
「モクバ 客室の方掃除終わってるのか?」
急な問いに[???]になりつつも
「ああ確か終わってたぜ」
「じゃ客室を使わせて貰うぜ」
遊戯は海馬の方を向きながら言うと
「寝るだけなら俺の寝室でもよかろう?
何故客室を使う必要があるのだ?」
「そっちの方が安心して寝れるからだぜ」
「俺の傍だと安心して眠れないと言うのか?」
「お前の性格からしてお前の寝室で寝るオレを襲うだろう?」
「客室で寝ていようと襲うものは襲う」
「ヤル気満々じゃないか!」
「貴様の全てを感じたくて早く帰って来たのだ」
「オレは眠いんだ!!」
(この2人何を言い争っているのか解らないぜ・・・)
このままにしておくのも何だから一先ず
「兄さま 遊戯が起きて来てからじゃダメなの?」
遊戯の機嫌損ねると厄介なのを知っているのは兄さまじゃないか
モクバの言わんとしている事察した海馬は渋々と言った表情で
「解った貴様が起きて来るまで待つとしよう・・・
モクバ 遊戯に客室を使わせてやれ」
本当は、今すぐ遊戯を全身で感じたいのだが機嫌を損ねた遊戯は
泣き止まない子供と同じで手が着けられないのだ
折角仕事を早めて帰って来て機嫌の悪い遊戯の御機嫌取りをする
ぐらいなら数時間眠らせて起きて来た所を頂けばイイ
モクバは遊戯を促しながら扉の方へ向う
「遊戯 掛け布団ぐらい置いて行けばいいだろ?」
「いや・・・いい・・・」
「転んでもしらないぜ」
「大丈夫だぜ」
そう言った傍から遊戯は掛け布団に足を囚われ転倒してしまう
「あ〜あ だから言ったのに・・・ゆうぎ???」
床に座り込む遊戯・・・
「イテ〜」
顔を強打したらしく顔を抑えてる
そのため手から離された掛け布団
隠していた胸のラインが露わになる
「胸・・・どうしたんだ?」
「遊戯大丈夫か? モクバどうした?」
急いでソファから立ち上がる海馬
転倒した遊戯に声を掛けながら固まっているモクバを見やる
「遊戯に何か・・・!!」
ここに来て遊戯が何を隠していたのかモクバが何を見て固まっているのか
解った。
「遊戯・・・貴様その胸は!」
「!!!!」
慌てて隠すも時既に遅し
海馬に見られてしまったのだ
「遊戯 これは」
「しっ・・・知らないぜ」
「知らないって・・・」
遊戯の両手を掴み左右に開く
「知らないで 貴様に女の様な胸が出来るのか!」
「知らないったら知らない!!朝起きたらこうなってたんだ」
「朝起きたらって・・・」
「兄さま床の上で口論するのも何だから一先ずソファに座ろう?
なぁ遊戯も」
このままじゃ埒があかないので2人にソファに移る様に言うモクバ
「朝起きたら胸が女の様になっていたと言うが下の方もか?」
何とか冷静になろうとする海馬
そんな海馬の問いに遊戯は肯く
「寝る前・・・もしくは日中でもいい何か変ったモノを口にしなかったか?」
「寝る前は相棒のママが入れてくれたミルクを飲んだだけだ
日中は海馬Co.のモニターをして疲れたから海馬が何時も飲んでる
サプリメントって言うのを飲んだ」
「サプリメントだと?」
「!!」
イブカシむ表情の海馬
そして何かを思い出した様な表情に変るモクバ
「兄さま もしかして遊戯が飲んだのって・・・」
「!! 遊戯そのサプリメントは何処に有った」
「え〜と・・・確か金庫の中・・・」
何とか昨日の事を思い出しながら言う遊戯だったが
「兄さま間違い無いよ遊戯が飲んだのってまだ研究段階の薬だよ」
でも兄さまって普段から常用してるサプリメントそんな所に直してたっけ?
「遊戯 貴様勝手に金庫を開けたのか?」
「スマナイゼ・・・」
謝る遊戯に海馬は怒鳴る気になれない
寧ろ呆れて果てて溜息が出る
「俺が常用してるサプリメントは机の引きだしの中に有る
それは貴様も重々承知の筈 だったら何故金庫を勝手に開ける?」
「確かに海馬が常用してるサプリメントが机の引きだしの中に有るのは
知ってるぜ・・・でも・・・もしかしたら海馬の事だから新しいサプリメントを作って
いるんじゃないかなぁって・・・それにもし有るんだったら飲んでみたいと思って・・・」
「それで勝手に開けたら研究段階の薬があって俺が開発した新しいサプリメントだと
思って勝手に飲んだと?」
コクン・・・と肯く遊戯
「得体の知れない薬を勝手に飲むなんて貴様は子供か?
今の貴様のその姿は自業自得だ
己の不甲斐なさが生んだものだ」
手厳しい海馬の言葉
しかし確かに海馬の言う通り自業自得だ
海馬が留守中に勝手に金庫を開け勝手にその中に有った研究段階の薬を
飲んだのだ
しかも海馬が常用してるサプリメントの有る所を知っているのに・・・
会社には、モクバだって居たのに・・・
もし勝手に飲まなかったらこんな事にはならなかったのだ
「海馬・・・オレ元に戻るのか?」
「実験前だったからデータが全く無い
それ故に戻るか戻らないのか全く解らん」
そっそれじゃ・・・オレは御婿に行けないのか?」
いきなり泣き出す遊戯だったが
その言葉に
「貴様〜今何と言った?御婿に行くだと?
何処に御婿として行くつもりだ〜!!!」
「そんなの決まってないぜ」
(あ〜あ 遊戯ったら遊戯の嫁ぎ先なんて兄さまの所以外ないじゃないか
兄さまは遊戯には無茶苦茶優しいし遊戯の事になると狭い心が更に狭くなるのに)
そう言えば海馬は何でこんな薬を作っているのだろう?
今の海馬の反応からオレに飲ませる為に作ったんじゃない事が伺い知れるが
何故?
遊戯の心の中に生まれた疑問
その疑問に
「性同一性障害って遊戯も知ってるよな?」
「ああ・・・時々テレビでやってるから」
「身体と心のバランス・・・中には手術で自分の性を手に入れる人も居る
その手術の後って定期的にホルモン注射を打たないといけないんだ
女の人が男になる時は手術とか無いけどそれでもやっぱりホルモン注射は必要だ
でもその為には経済面や病院に行く時間とか必要になるだろ?」
「ああ・・・」
「もし病院に行く手間を省けたら・・・そういう面から考えて安価で安全で
1箱12乗単位で1週間に1乗の服用で医師の処方箋の下 手に入れられたら
経済的にも時間的にも余裕が出ると思うんだ
その上 長期の服用で完全に自分が望む性別になれたら・・・」
「まさかその為の薬なのか?」
「そうだよ・・・でも完全に性別が変るなんて研究のしなおしだな
時間をかけてゆっくり性を変えないと身体にかかる負担が・・・ってスマナイ遊戯
今は、それどころじゃないよな」
モクバの説明を聞きながらシュンとする遊戯
自分の性別で悩む人がテレビで悩んでいるのは知っている
それにその手術だって・・・ホルモン注射の存在だってテレビで見て知っている
まさか自分がその人達の為に作られている薬を勝手に飲んでしまうとは・・・
しかも今の話じゃ解毒剤なんて作ってなさそうだ
このままじゃ男に戻れないかもしれない・・・
さっきから黙って何かを考えている様子の海馬
「あ・・・あの海馬・・・」
「遊戯 着いて来い」
そう言って海馬は遊戯の腕を掴み寝室へ
「海馬 こんな時に何を考えているんだ!!」
「貴様を抱くことを考えていた」
「!!」
「貴様は勝手に薬を飲み女の姿になった
貴様が俺以外の男の下へ行く可能性だってある
それなら今貴様を抱きはらませれば貴様は俺の下から離れられなくなる」
「オレは嫌だ!!こんな姿で抱かれたくない!!」
遊戯にまともに説明しても無理だろう
これは賭けでもあるのだ
貴様が飲んだのは未完成の女性ホルモンの薬
この薬と対をなす男性ホルモンの薬は未だ着手してない
もし俺の体液を貴様が取り込めば・・・あるいは・・・
数時間後
海馬の隣で疲れ果てスヤスヤ眠る遊戯
その身体は、遊戯本来の男の姿
未完成だった薬は、効果を無くした様だ
「貴様のお陰で新薬の研究は、やり直しだな」
だが・・・もし遊戯が飲んだのが完成品だったら・・・
それこそ治す術なんて無かっただろ
否 そうなれば対をなす薬を飲ませばいいのだがその際起こるであろう
リスクの事を考えると遊戯が誤って飲んだのが未完成品で良かったと思う
「貴様専用のサプリメントでも用意するか?」
後日
海馬のデスクには遊戯専用のサプリメントが数十種類置かれていたらし
私は注射が嫌いだからなぁ
私みたいに注射嫌いの方がホルモン注射打つとしたら勇気要りそうだなぁって
もし時間は掛かるけど完全に性別を変えられるなら飲み薬かなぁ〜って
思って書いたお話しだったんですが・・・