世界で一つだけのモノ -1-
「貴様そんなにこの俺の事が信じられないのか!」
もの凄い剣幕の海馬
遊戯の傍に居た<遊戯>とモクバがビクッと身体を震わせる
「貴様の顔なんぞ 二度と見たくも無い
もう二度と俺の目の前に姿を現すな!!」
「か・・・かい・・・」
遊戯に背を向け聞く耳無しと言わんばかりの態度
そんな海馬の背を見つめながら遊戯の表情が曇って行く
今にも泣きだしそうな程
(もう一人の僕・・・)
(遊戯・・・)
これで良いんだぜ・・・
この計画を成功させる為に
計画を成功させる為とは言え心が痛い
胸が苦しい
海馬に優しくされたいのに
誰よりも海馬の事信じてるのに・・・
抱きしめて欲しい
苦しい気持ちのまま遊戯は海馬の私室を出て行く
-10月1日-
「何故貴様まで一緒に居る!」
玄関先で不愉快なまでの表情を現した海馬
屋敷に仕える者から遊戯が門を通ったと内線で連絡があった
遊戯に逢うのは約1週間ぶり
早く遊戯に逢いたいと想う気持ちが何時もなら玄関まで迎えに
行く事の無い海馬を迎えに行かせたのだがそこで海馬が目にしたのは遊戯と一緒に居る<遊戯>の姿
自分は、遊戯を呼んだが<遊戯>は呼んでないのだ
それなのに・・・
「久しぶりだね 海馬君!相変わらず嫌そうな顔を露骨に現さないでよ〜
僕は別に君達の邪魔をしようと思って来たんじゃないんだから」
「だったら何の用で来た」
「モクバ君に呼ばれて来たんだよ」
「モクバ?」
更に不快感を露わにする海馬に遊戯は内心溜息を吐きつつ
「海馬 相棒には相棒の用事ってものが有るんだぜ
余計な詮索は良くないぜ」
海馬の腕をグイグイ引っ張る遊戯
海馬を引っ張って行く遊戯に手を振りながら<遊戯>はモクバの部屋に向う
何故モクバが<遊戯>を呼んだのか遊戯は知っているから
弟を大切にしている海馬がどんな行動に出るか予測出来るから
きっと海馬はモクバの部屋に行くだろう
そして2人の邪魔をするだろう
遊戯は2人の邪魔をしない様に海馬を見張らないとイケナイのだ
海馬の私室に着いた2人
海馬は、不機嫌な顔をしたままだ
そんな海馬の横に座っていた遊戯だったがおもむろに立ちあがり
海馬の膝の上に座る
「!」
今迄自分が求めない限り遊戯が自分の膝の上に座る事なんて有り得なかった
そんな遊戯が自分から膝の上に座って来る行動に驚いていると
両頬を両手で挟まれながら
「オレが傍に居るのに何時までそんな不機嫌そうな顔してるんだ?
そんなにオレと一緒に居るのが嫌なのか?」
思いがけない遊戯の言葉に思わず喉が鳴ってしまう
「オレは、お前に逢いたかったんだぜ
お前から『屋敷に来い』って連絡受けた時どんなに嬉しかったか
お前に解るか?
それなのに来て早々お前の不機嫌そうな顔を見る羽目になる
なんてオレは来ない方が良かったのか?」
可愛い遊戯の発言に気を良くした海馬は華奢なその身体を抱き寄せ
小さな口に啄む様なキスを繰り返しながら
「俺とて貴様にどれだけ逢いたかった事か・・・
貴様が来たと連絡を受けた時 どれだけ俺の鼓動が高鳴った事か・・・」
「だったら不機嫌な顔をするなよ」
甘い・・・甘える様な遊戯からの言葉に思わず酔いしれてしまう
まるで睦言の様な・・・
遊戯の背に回した腕に力が入る
(くっ・・・苦しいぜ・・・でもこれも計画の為だぜ)
海馬の胸に顔を埋める
聞こえて来る心地好い鼓動
(ああ・・・この鼓動をこんな傍で聞けるなんてオレだけの特権なんだよな)
ウットリしてしまう
そんな甘い時間を2人は、心行くまで堪能したのだった。