一筋の光 -1-
「宰相シモン様!!一大事で御座います」
槍を手にした兵士が回路を通りシモンの執務室前へ到達する
「騒がしいぞ もっと静かに出来んのか」
急いで来た兵士を叱咤すると兵士は
「ファラオ・アテム様が視察の際何者かの襲撃にあい行方をくらまされました」
「なっ・・・何じゃと!!アテム様が!!急ぎ神官団を召集せよ!!」
暫くしてシモンによって召集された神官達
その面持ちは、険しい
「マハード 確か今回の視察には貴殿の愛弟子が護衛の為
お共に着いて行ってる筈
それなのにファラオを何者かに連れ去られるなど何の為の護衛か?」
千年ロッドを手にした青い法衣を身にまとった神官が同じ千年アイテムである
千年リングを首にかけた神官マハードに食って掛かる
「セト 今は神官同士争っている場合ではありませんよ
早急にファラオを探し出さなければ
それに襲撃者達に連れ去れたとは一概には言えませんよ
もしかしたら難を逃れ何処かに非難されているかもしれません」
千年タウクの所有者であるアイシスの言葉にセトは苦々しい表情を浮かべる
「アイシスの言う通りじゃ 今は一刻も早くアテム様をお探しせねば」
皆の脳裏に過る再悪の事態
それだけは、起こって欲しくない
否 千年タウクの所有者アイシスが不吉な未来を予見し予言をしていない以上
それは回避されているのかもしれない
千年タウクの力・・・それは未来を見通す力・・・
だがその力は同じ千年アイテムの所有者には効き目が無い
「私は、これから兵を編成しファラオを消えられた場所を散策します」
「頼むぞマハード」
そう言い残しマハードは審議の間から姿を消した。
カリムやシャダも各地の街や村・関所に至るまで兵を連れ出かける事となった。
「セト 貴方にお聞きしたい事があります」
毅然とした態度でセトの元に歩み寄るアイシス
「何か?」
「貴方は白き幻獣を操る事が出来る様になられましたか?」
白き幻獣・・・キサラの尊い命を引き換えに手に入れた幻獣
その気高き姿は彼女の魂が全く汚れていない事を表しているかの様に思える
しかし・・・
「貴殿には関係無い事」
「まだ上手く操れないのですね」
白き幻獣の力は強大で敵を威圧し倒すのには適しているが
一歩でも使い方を誤れば大惨事を起こしかねない諸刃の剣なのだ
それを指摘されて愚の音も出ないセト
「神官セトよ そなたは、いざと言う時の為にも白き幻獣を操れる様になられよ」
そんな事言われなくても解っている!!
セトはイマイマシイ表情を浮かべ審議の間を後にする
「アイシスよ そなたの千年タウクでファラオの未来は見えぬか」
「申しワケ御座いません ただ私に解るのはファラオが御存命である事のみ」
千年パズルからの不吉な力を感じられない以上ファラオ・アテムは生きている証
回路を渡り一先ず自室に戻るセト
その心中は嵐の様に乱れに乱れている
アテムよ 御身はいずこに・・・
この俺が直接貴方の警護に当たっていたら・・・
今回の視察にはセトも同行する予定だったが自分の心にカーを飼っている事に
気付かぬ罪人がそのカーに心を食われ凶暴化してしまい
それを始末する為 手が離せなくなり
不本意だがマハードの愛弟子マナを行かせたのだ
アテムよ どうか無事で・・・
千年錘よ どうかアテムを
千年ロッドからの反応が無い
それはアテムが生存している証
だが心が騒いで仕方が無い
外は、既に満天の星が宝石の様に輝いている