一筋の光 -2-
ファラオ・アテムが消息を断って半月にもなるが
以前としてその足取りが掴めず
神官団の緊張と焦りと疲労が見て取れる状態に
その頃アテムは、
「何時までそう頑なな態度を取られるつもりか?」
アテムの身体を不シツケなまでに撫でまわす男
そんな男の為すが儘なっているアテムの表情は無い
否 表面的には、そう見えてるだけかもしれない
内心は不快感と不愉快さが同居していたのだから
「貴殿の身体は、既に私のモノ・・・
いっそうの事その心も私に委ねられたらいかがか?」
そんな男にアテムは、臆する事なく
紅い瞳に力を宿し
「アッシリアの王よ 例え身体を奪われ様とも心まで渡す気は無い」
そんなアテムの気迫にアッシリアの王は一瞬ひるむが
「そんな態度を何時までも続けていると人質達の命がどうなるか・・・
貴殿の心次第ですぞ」
「卑怯な!!」
窮屈な王宮から出たい余りアテムは「視察に出たい」と我儘を言い
その事により急遽視察が決まった
余りにも急な事だっただけに神官達の都合が付かず
修行中の身であるマナが同行する事になった
だが少数だった為と自国だった油断からかエジプトに来ていた商人の
キャバンに身を費やしていたアッシリアの間者にことごとく襲われ
囚われの身に・・・
アッシリアの王の御前に連れて来られたアテム・・・
そのアテムに付き付けられたモノ
「人質の命が大切ならその身を我に捧げよ」
だった。
見知らぬ男に足を広げなければならない屈辱
だがこれを拒めば生き残っている兵やマナの命は無いのだ
昼夜を問わず陵辱され続ける屈辱
何度自らの命を断とうかと考えた事か
だがその都度脳裏に浮かぶのは人質となっている者達の事
もしココで自分が命を断ったら人質としての彼等の命は無い
そして最愛の人の事・・・
もしココで命を断ったら彼は何と言うだろう
もし自害が許されるのなら一目でいい彼に逢いたい
だから耐えたのだ
この半月を・・・
例え身体を奪われても心は守ると誓いながら
だが心まで請求され様とは・・・
このアッシリアの王は一体何を考えているのか?
「しかし貴殿の国の神官達は、噂と違い何と頼りがいのない連中なのだ?
ファラオの行方が解らんと言うのに捜索をせず
のんびりと王宮にいるのだから気楽としか言いようがない」
自分に対する侮辱発言なら甘んじて聞こう
だが自分以外の者を侮辱する言葉を甘んじて聞くつもりは無い
「そうとも言えない
オレの生存を信じオレの留守を預かっているだけ
我が国の神官団は優秀なのですよ
それでなければオレが半月も不在なのに国は乱れる事無く民は何時もの
様に日常を送っているだろう」
そしてお前が知らぬ所で神官団はオレの捜索をしている
アッシリアの王はアテムの不安そうな顔を見たかったがその表情が見る事
叶わぬと解ると華奢なアテムの身体を己の身体の下に組み敷き
アテムが身にまとっている衣服を剥ぎ取った
屈辱に歪むアテムの顔見たさに・・・
しかしアテムの表情は冷たく瞳は軽蔑の色を乗せていた。
それは相手に対し屈辱の何モノでもなかった
自分がアテムの命を・・・人質達の命を握っているのに・・・
立場上自分が優位の筈なのに
それなのに彼を前にして恐怖を感じる
彼には、どんな事をしても勝てない
彼の上位には立つ事が出来ないと思ってしまう
彼は生まれながらの王・・・
アッシリアの王自身も王なのに・・・
決してアテムには叶う事が無いと無意識の内の悟るのだが
それは認めたくない
事実アテムの前でどんなに虚勢を張ろうと彼の心を揺るがす事
が出来ないのだから
それ故に汚し貶めたいのだ・・・人を魅了して止まない高貴な魂を・・・
一方牢に閉じ込められているマナ達だってただ捕まっているワケでは無い
アテムから託された千年錘を守っているのだ
マナに至っては魔術を使いながら兵をも守っているのだ
だが幾ら彼女が魔術師とは言え見習いの身
未熟な魔術故に自分達を守るだけで精一杯なのだ
何かを媒体にすれば何とかなるのだが・・・
そんなマナに兵から
「どうかファラオを守って下さい
それが我々の使命なのです」
「私だってアテム様をお守りしたい!!
でもアテム様の・・・ファラオの命(めい)は背けない・・・」
彼女だって悔しいのだ
そして悩んでいるのだ
何とかしてこの状況をエジプトに居る師匠に伝えたい
アテム様きっと師匠達が助けに来てくれます
それまでは・・・