一筋の光 -10-


エジプトに戻って数日が経つ

身体に付けられていた所有印は薄すらとは残っているが殆ど消えた

エジプトに戻ってから一度もアテムをその腕に抱きしめる事が出来ないでいるセト

その苛立ちが日増しに酷くなる

 

何故アテムは俺を避ける?

何か知られては困る事でもあるのか?

 

真相を確かめるべくセトは今尚近付く事の出来ない

アテムの部屋に行こうとする

その途中の中庭で大木を背に眠るアテムの姿が・・・

何時も傍に居るアイシスの姿も無い

セトは逸る気持ちを抑えアテムに近付く

久しぶりに見るアテムの寝姿

胸にあった苛立ち等が薄らぎ愛しさが募るのが解る

柔らかい頬に触れその温もりに安堵する

 

アテムの姿をアッシリア城で見た時

その生存に安心したのを覚えている

距離は多少なりとあったが彼が自分の名前を呼んだのを覚えている

微かに開いたアテムの口元

自分を誘っているかの様に思えそっと優しく自分の唇を重ねる

温かく柔らかい唇

眠るその身を優しく抱きしめる

セトはアテムの服の隙間から見える肌に微かにだが所有印らしき痕を見つける

アテムがアッシリアから帰国しても自分を近付けない様に・・・

自分を避けていた理由が解った

アテムに着けられた痕に本来なら怒り狂りアッシリア王にそれ相応

の仕返しをする所だが今は、目の前に居る最愛なる存在の温もり

を感じたいと思う・・・

 

・・・温かい・・・

何だか懐かしい温もり

何だか懐かしい匂い

安心する・・・

 

浮上しかけたアテムの意識は、そのまま心地好い眠りの中に

その表情は微かにだが笑みを浮かべ

 

 

「ファラオ・・・」

少し離れた場所から掛かる声

「あら・・・起こすのは後にしましょう」

大木の木陰

眠るアテムを抱き抱えながら眠るセト

彼の表情もまた穏やかで優しい表情だったのだ

「これでセトの苛立ちは収まるでしょうね」

アッシリア王がファラオ・アテムに行った所行は、ファラオ・アテムと

私の胸の内にしまいましょう

 

 

千年タウクがその後アイシスに見せた光景は現王朝の崩壊

そして時を越え対峙する2人の姿・・・

しかしそれは、身分を気にする事なく2人が対等の立場で

居る事が出来る時代

 

後日エジプトに正式訪問で遊びに来たアッシリア王

セトの前でアテムに大胆にプロポーズしたもののセトに睨まれ

アテムは「ゴメンなさい」と言われたそうな・・・

 


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