残想-7-

残想-7-


ベッドに横たわる遊人

その傍で疲労からか転寝をする海馬の姿

「ブラック・マジシャン悪いが力を貸してくれないか?」

「遊戯様・・・もしかして・・・」

「お前も気付いていただろう?遊人の魂は不安定だ

このまま肉体に戻しても又今回と同じ事が起きるだろう

それを防ぐためにも魂を肉体に定着させる」

「しかしそんな事をすれば折角転生するために溜めた

力を失う事になります」

「それでも構わない

どんな形であれオレは、あの子の親なんだ

親としてあの子には、生きてもらいたい

そのために使うなら惜しくない

それに力は、また溜めればいい」

親としての表情を見せる遊戯

その表情は、優しく慈愛に満ちている

きっと自分が彼と同じ立場だったら同じ事をするかもしれない

そう想いながらブラック・マジシャンは優しい笑みを浮かべ

「解りました」

とだけ言うと遊戯共々遊人の肉体に手をかざし力を

注ぎ込む

初めて抱きしめた我が子

遊戯は、遊人の事を想い

力を注ぎ魂を肉体に定着させる

 

海馬・・・もう大丈夫だぜ

遊人は、お前の元に戻ったから・・・

 

一瞬感じた温もり

その温もりに目が覚める

「・・・遊戯・・・」

そして心に届いた声

紛れも無く遊戯の声・・・

もしかして遊戯がココに来たのか?

今も目を閉じ眠る遊人

海馬は遊人の胸に耳を当てる

しっかりと力強く刻む心音

その心音に安心する

「・・・う・・・ん・・・」

「遊人!」

微かに動く瞼

ゆっくりと開かれる

 

ボンヤリと霞む景色

そこにハッキリと見えないけど見なれたシルエット

それと自分を呼ぶ声

「・・・パ・・・パ・・・」

「遊人!!」

心から湧きあがる嬉しさに想わず海馬は遊人を抱き締める

 

 

「兄様着替え持って来たよ・・・」

兄の着替えを取りに一端屋敷に戻っていたモクバ

「に・・・い・・・」

兄にしがみつく小さな手

それが意味する事に気が付き持ってきた荷物を思わず落としてしまう

「遊人!!意識が戻ったんだな!!」

溢れる涙

「ママに逢ったんだ

ママが言ってたパパが僕を助けて欲しいって言ってたって」

遊人の言葉に海馬は否定する事なく聞きいれる

確かに遊戯にそう願った

遊戯は「何か有ったらオレを呼んでくれ

オレは冥界からでも必ず駆けつけてやる」の言葉通り約束を守ってくれた

そしてさっき感じた温もりは、彼が傍に居たから感じた温もりだったのだろう

「パパ・・・ママから伝言『お前が今世で天寿をまっとうしたら迎えに行ってやる

そして来世では共に生きような』って・・・」

遊戯が冥界に戻った時でさえ出なかった涙

それなのに遊戯からの伝言を聞いた途端に止めど無く溢れてくる

彼は冥界に帰っても自分の事を忘れていなかった

それより来世で自分と共に生きてくれると言ってくれたのだ

 

暫くして<遊戯>達も病院に訪れ遊人は遊戯と逢った話しを嬉しそうに

話していた。

数年の歳月が流れ遊人も大人になり

何時かは海馬Co.を次ぐ為修行と称し外資系企業で働いていた

遊人の心には小さい頃母が言った言葉が刻まれている

自分の成長を楽しみにしていると言っていた

もしかしたら自分の成長を何処かで見ているのかもしれない

もしかしたらモクバ叔父さんが報告しているのかもしれない

母に恥かしい姿なんか見られたくない

もし母に逢う事があったら胸を張って逢いたい

そう想い日々を生きていた

そして何よりあの日から母の存在が身近に感じられるのだ

 

更に年月が流れ

海馬が病床に伏した

海馬は既に海馬Co、の会長の座をモクバに譲り遊人を社長の座に着けていた

「父さん・・・」

「おじいちゃん」

遊人は30代半ばになって結婚をし子供をもうけた

「兄様しっかりして!」

「モクバ 今迄私の我儘に付き合ってくれてありがとう

遊人寂しい想いを沢山させたな本当にスマナイと想ってる

遊人 海馬Co,はお前の代で同族経営を脱しても構わないからな」

自分の傍で心配そうに見つめる孫の姿

「兄様何を弱気な事をオレは、兄様のお陰でどんなに楽しい人生を送れたか

それなのに・・・気をしっかり持って」

海馬は部屋の一角に視線を移し目を細めながら

「遊戯・・・来てくれたのか・・・」

ああ・・・お前との約束だからな

まぁ〜正確には遊人に一方的に頼んだ伝言だがな

 

海馬の前に現れた遊戯

その肌は白く服装は学ラン・・・

海馬が若かりし頃に見馴れた姿

「それでも貴様は来てくれた

どんなにこの時を待った事か・・・」

「兄様・・・遊戯がココに来ているの?遊戯!兄様を連れて行かないでくれ」

「母さん僕からも・・・お願いだよ」

お前が望むのならお前の寿命を延ばし

このままオレは帰るぜ

数年ぐらい待つのは平気だから

「馬鹿な事言うな どれだけ長い歳月の中 貴様に逢える日を夢見た事か

遊戯 私を連れて行け」

「お父さん!」

モクバは、遊人の肩を掴み 静かに首を左右に振る

兄がどれだけ遊戯に逢いたがっていたのか知っているから

遊人もそれは、知っている

 

海馬 オレの手を取れ

 

指し出される手

海馬は、その手に触れる

ただ海馬のその手は半透明に透けていた

海馬は不思議そうに肉体を眺めている

その傍で泣きじゃくるモクバと遊人

ただ海馬の傍で2人の様子を見る孫・・・

海馬の望みでそれ以外の親近者の立ち合いは無い

 

「海馬長居は無用だぜ」

このまま未練が残れば成仏出来ない

来世への道が閉ざされる

「解っている」

遊戯と共に歩む海馬の姿は遊戯がしる17歳の時の姿

 

もし叶うなら2人一緒の人生を・・・


何とか最終話を迎えました!!
最初の設定から掛け離れたものの何とか海馬と遊戯が逢う事が出来たよ〜
ココまで読んで頂き有難う御座います
そしてお疲れ様です!!



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