残想-6-

残想-6-


真っ暗な場所・・・

上も下も解らない

 

さっきまで学校で国語の授業受けてた筈なのに

ここは何処?

 

急に心に広がる不安

 

パパやモクバ叔父ちゃんが心配するから早く帰らないと

 

でも何処を見渡しても暗闇しかない

否 一点だけ光が見える

遊人は、その光に向って走り出す

たった一人で居る暗闇が怖いのだ

その恐怖を拭う為にひたすら走った

でもその光になかなか辿り着かない

更に心に中に広がる不安

そんな遊人に聞こえた声

「そこから先はお前の行くべき世界じゃないぜ」

その声に足を止め見渡すが誰も居ない

光を目指そうとすると自分の前に立ちはだかる存在

遊人の目が見開く

そこに居たのは<遊戯>が何度も見せてくれたカード

モンスター・・・・

ブラック・マジシャンの姿があったのだ

ソリットビジョンでは何度も目にした事のあるモンスター

逢った事の無い母が信頼をおくモンスター

先程まで心に占めていた不安感が消え

嬉しさが募り出す

「うわ〜やっぱりブラック・マジシャンってカッコイイ!!」

喜んで近付き触れてみる

ソリットビジョンなら触れる事は不可能なのにこのブラック・

マジシャンには触れる事が出来る

「ブラック・マジシャンに触れられる!!」

その事に感激していると

「本物のに触れられて良かったな

オレも連れて来た甲斐があったぜ」

先程自分に話し掛けてきた声が又聞こえる

不思議そうブラック・マジシャンを見詰め上げると

ブラック・マジシャンは杖で声の方を指す

それにつられて遊人は振り返るとそこには褐色の肌をした

小柄な少年が立っていた

服装は現代風のモノでは無い歴史に出てくる様な衣装

しかもミニスカートを穿いているし見に着けている装飾品も

現代風では、無い

黄金で出来た高価なモノばかり

以前<遊戯>やモクバから聞いた事がある母の姿

母は古代エジプトのファラオ・・・

まさかと思いながらも

「もしかして遊戯ママ・・・?」

ママ・・・海馬のヤツ!!

子供にオレの事をママと教えてるのか?!

否まて・・・現世に残っていたらオレは間違い無くママに

なっていたかも・・・

 

無言で考え込む遊戯に遊人は

「ママじゃないの?」

どうしても訊ねてしまう

遊人は写真の母しか知らない

写真の母は色白で学ランを見に纏っているから・・・

目の前の母と思し気人は顔と髪型は母と同じだが肌の色も

服装も違うのだ

「オレ自身男だからママって発想が在っているのか迷っていたんだ

でも間違い無くお前の親だぜ」

その答えに遊人は満面の笑みを浮かべ遊戯に抱きつく

自分とそれ程身長差は変らないであろう母・・・

「パパが言ってた ママは男だって

人工カプセルで生まれたけど僕はパパとママの遺伝子を受け

継いでいるって」

包み隠さず子供に教えるなんて海馬らしい

 

内心苦笑する遊戯だった

それでも初めて我が子に抱きつかれて嬉しいと思ってしまう

そんな2人を見つめながら優しい笑みを浮かべるブラック・マジシャン

 

「ママはどうしてココに?」

「パパが遊人が大変な状態だから助けて欲しいって教えてくれたんだ」

「ママ・・・僕ママと一緒に居たい・・・」

自分の胸に顔を埋めながら小さく囁く様に言う遊人

遊戯は、驚きつつも優しく遊人の頭を撫でながら

「オレは死人だ・・・遊人と一緒に居る事は出来ない」

悲しそうな顔を上げる遊人

「ママは僕の事嫌い?」

「大好きだぜ」

「だったら何で?」

「遊人はパパを一人ぼっちにする気か?

そんな事したらパパは悲しむぜ?」

それでもイイのか?

「それは嫌だよ・・・

でも人って死んでも生きかえるんでしょ?」

えっ???

驚く遊戯とブラック・マジシャン

「死んだものは生きかえらないぜ

死んだらそれで御終い」

「でもねゲームで悪いヤツに何回殺されてもリセットしたら生きかえるんだよ」

必死に説明する遊人

「それはゲームの世界での事だ 現実世界の事ではない

もしそんな事が現実世界で起きていたら死人だらけになるし

きっとパパがオレを生きかえらせてる筈だぜ

それをしないのは、出来ないからだぜ」

現世では、死に対する考えがずれてるんだな

なんだか悲しいぜ

「僕・・・ママが居なくて寂しいんだよ」

幼稚園では母親が子供を迎えに来る

だが遊人を迎えに来るのは海馬邸のメイド頭か磯野

時間が許される時なら海馬自身やモクバが来てくれる

友達みたいに一度でいいから母親に迎えに来てもらう・・・そんな淡い夢を

もっていたのだ

でもそんな事を父には言えない

父は母の事を想っているは知っているし自分も遊戯以外母親だと想ってない

「オレも皆と居られないのは寂しいぜ」

「マスター・・・」

「解ってる・・・」

時間が無い

このままこの子をココに居させたら現世に戻る道が閉ざされる

仮死状態の今なら戻る事が出来るのだ

「オレな お前が生まれた時パパの傍に居たんだぜ

どれだけ嬉しかった事か 今でも昨日の様に思い出せるんだぜ

それにな毎日モクバが遊人の成長を教えてくれてるんだぜ

それを聞くのがどれだけ楽しみか

そうそうお前の名前を教えてくれたのはパパなんだぜ」

パパは毎日じゃないけど時折話しかけてくれてるんだぜ

「オレは遊人の成長を聞くのが楽しみなんだ

それをお前が終わりにするのか?」

オレと一緒に居るって事はオレの楽しみを奪う事なんだぜ

「ママは僕が大きくなるの楽しみ?」

「ああ・・・勿論だぜ」

パパやモクバ叔父さんがママに自分の事を報告してくれてるなんて恥かしい様な

嬉しい様な複雑な心境だ

「遊人 パパの元に戻るんだ」

お前が戻るのを見送っててやるから

「そうそうパパに伝言してくれないか?

お前が今世で天寿をまっとうしたら迎えに行ってやる

そして来世では共に生きようなって・・・」

「うん・・・解ったよ」

遊戯は遊人を肉体の傍まで送ると

遊人の魂が躰に収まる時まで見届ける






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