残想-5-

残想-5-


海馬の不安を余所に多くの愛情でスクスクと育つ我が子

本当に遺伝子に異常が在るとは思えない程元気で屋敷内や

外を走り回っている

遊人が母親の事で幼稚園で辛い想いをしたのは、モクバから

聞いて知っている

だが遊人自身その事を父である瀬人には言った事が無い

遊人は<遊戯>からよく

「遊人のパパって遊人が生まれてから性格変ったね

それだけ遊人の事が大切で仕方ないんだね」

言われていたから

遊戯の前でもそうそうに見せなかった表情を沢山見せてくれてるって

言われたから

遊人は不器用な父から沢山の愛情貰ってるって実感してるから

母の居ない辛さは、余り感じないし

生まれた時から母は居ないので母が居たら・・・と言うのは想像

出来ないらしい

 

そんな遊人も小学5年生を向え

そろそろ中学を公立にするか私立にするか

はたまた海外留学にするか決めなくてはならない時期に入ろうとしていた

そんな矢先

海馬Co.に学校から電話が・・・

遊人が授業中意識を無くしたらしく病院に担ぎこまれたと言うのだ

海馬は、その日の予定をキャンセルして病院に向う

目にした我が子は、無情にも集中治療室で多くの器械に囲まれて眠って居た

医師からは、更に追い討ちをかけるかの様に

「今夜が峠です」

との言葉が・・・

海馬が危惧していた事が現実のモノに

海馬は、そのまま遊人が眠るベッド脇で崩れる様に床に座り込む

遊人が長く生きられないのは、解っていた筈だから遺伝子の研究を海馬Co.

医療スタッフにさせていたのに・・・

それが完成する前に大切な存在を失う

海馬の脳裏には若かりし頃最愛の人を冥界に見送った時の事が想い出される

またあの時の様な想いを俺は、するのか?

何もしないままで・・・

そう想っても何も出来ないのが現実なのだ

うなだれ打ちひしがれる兄の姿を仕事を終え急いで駆けつけたモクバは声さえ

かける事が出来なかった。

<遊戯>達も海馬に何と声を掛けてイイのか解らない

ただ今は遊人の意識が戻る事を祈るだけだった。

 

 

 

 

「何か有ったらオレを呼んでくれ

オレは冥界からでも必ず駆けつけてやる」

 

遊戯・・・俺の声が聞こえているのなら遊人を・・・

遊人を助けてくれ!!

 

オレを呼ぶ懐かしい声・・・

 

でもその声は苦痛と悲しみの色を乗せている

 

悲しまないで・・・

オレはお前と約束しただろ?

お前はオレとの約束を守ってくれたんだ

今度は、オレがお前との約束を守る

だから悲しまないで・・・

 

 

紅い光とそれに従い着いて行く薄紫の光

2つの光は、声のする方向とは別の場所に狙いを定め

飛行する

上下左右の解らない暗闇の中を迷う事なく

程無くして見つけたモノ

 

「そこから先はお前の行くべき世界じゃないぜ」






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