もう一つの出逢い-1-

もう一つの出逢い-1-


 

「明日香さん3番テーブル御氏名です」

「は〜い」

ボーイに呼ばれ控え室から出て来た少女

3年目にしてクラブ【青龍】のNo,1ホステス

好きでホステスをしているワケでは、無い

だからと言って嫌いでも無い

「今晩は〜社長さん」

「明日香くん今日も綺麗だね」

「まぁ〜御口が上手ね」

他愛の無い会話で相手の気持ちを良い気分にしてあげる

指名すると数万

席に座ると数万

そこに飲食と一緒に飲む人が増えれば数十万

多い人で数百万

 

 

そんな明日香には気になる事が1つだけある

最近姿を見ない1人の若い客

話した事は1度も無い

ホステス仲間から聞いた話しだと結構な話術を持っていて楽しいらしい

自分のその輪に入ってみたいと思う

自分が知っているのは、彼が『りょう』って呼ばれている事だけそれ以外知らない

元々客のプライベートなんて興味は無い

 

 

今夜も無難に仕事を終え帰宅をすれば午前様

帰宅をすれば可愛い猫が2匹御出迎えをしてくれる

元々2匹は野良

保健所の人が近所の公園に生息している野良猫を回収しているのを知って連れかえった猫

名前は茶トラが吹雪

茶毛に焦げ茶の斑が入っているのが十代

子猫の十代だけを連れて帰ろうとしたのだが吹雪と離れるのが嫌だった様なので2匹一緒に引き取った

可哀想かもしれないと思いながらも首輪を着ける

嫌がるかもしれいと思ったが大人しく着けてくれた

日中彼等が何をしているのかは知らない

 

今は美味しそうに少し暖めたミルクを2匹仲良く飲んでいる

不意にDVDデッキの方を見ると溜めに溜め込んだ

デュエル番組のDVD・・・

時間が取れたら纏めて見るつもりだったのに・・・

でも消すに消せずそのまま撮り続けてる

 

そ〜言えば今の最強デュエリストって誰だっけ?

 

自分がデュエルしなくなって3年・・・

ホステスの仕事をしだしてからになる

別にデュエルが嫌いでやらなくなったのでは無い

デュエル以外の事をやってみたかった・・・なんて言うのは建前

理由なんて無い

気まぐれかも知れない

 

そう思いながら明日香はスーツを脱ぎ

スウェットの上下に着替えメイクを落としシャワーを浴びる

ドライヤーで髪を乾かし猫達に水と餌をあげ

そのままベッドへ

布団の柔らかい感触が疲れた躰と心を気持ち良く包み込んでくれる

 

飼い主が寝ている姿を猫達は、しばし見つめ時計を見るとまだ3時過ぎ

吹雪が猫用のベッドに戻るとそれに続いて十代も猫用のベッドに戻る

2匹は仲良く1個の猫用ベッドで丸くなりながら眠りに着いた

 


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