運命の輪の中で・・・-1-
「おい 爺さんアンタの所の網弄ってるのって」
「ああ 鬼っ子じゃよ」
「いいのかよ 鬼なんかに網弄らせて」
「なぁ〜に 網を直して貰ってるだけじゃ 問題ない」
紅い髪の小柄な鬼・・・
頭には小さな角が1本生えていた
鬼によって角の本数は違う
別に力の強さを現しているワケでは無い
遺伝によるものが殆どだ
「爺さん網直ったぜ」
「おお すまないね」
「いいって」
そう言うと鬼は、何処かに行ってしまった
「爺さん 本当にいいのか?」
「ああ構わん 利用するだけしてその後始末すればいいんじゃ
あの鬼が島にすんどるのは大方あの鬼ぐらいじゃろうて」
1匹で居るのが寂しいからコッチに来とるんじゃ
「なるほどね」
「遊戯 貴様また人間に会ったのか?」
「あっ 瀬人様」
土を掘り穴を作っている最中だった手を休め遊戯と呼ばれた鬼は、長身の男の方を見る
「だって困っているみたいだったから・・・」
「貴様の一族がどうなったのか忘れたワケでは有るまい?」
「忘れてないけど・・・」
島に急に現れた病持ちの犬・・・
病持ちの犬を哀れんだ鬼達は、犬の病を治そうとしたがその病に対しての免疫を持ち合わせ
て居なかった鬼達の間に瞬く間に病が広がり
病を持ち込んだ犬諸とも死に至った
遊戯は、運良くと言うべきなのか瀬人の住む社の掃除の為1ヶ月程島の一番高い山の頂上に
居た所為で感染を免れた
しかし御役目を終え山の麓に降りた遊戯が目にしたのは、余りにも酷い惨状・・・
異臭が立ち込め長く居ると吐き気をもようして来る程
瀬人は、急ぎ遊戯を連れ山の頂上に戻り
龍神の力を使い麓で蔓延しているウィルスを消滅させた
瀬人の正体は、海王神・・・
大神の怒りに触れ海神としての本来の力を封じられ位の低い龍神になり住処を求め彷徨って
居る所を鬼達に知られ鬼達の好意で鬼が島に間借りさせて貰っているのだった
しかも社を作って貰い身の回り世話もして貰った
余りの惨状にショックを受けた遊戯の心は、モノ抜け状態だった。
瀬人の言葉さえ耳に届かぬ程に・・・
それでも日を追う事に何とか自分らしさを取り戻そうしている遊戯
そんな遊戯が仲間の為に墓を作りたいと瀬人に頼み込み山の麓に降りては仲間の
墓穴を掘り朽ちた仲間の遺体を埋めた
そんな作業を繰り返しながら時折人間の住む漁村に足を踏み入れた時知ってしまった
のだ
何故鬼達が滅んだのか
鬼を疎ましく思っていた人間によって置いて行った病持ちの犬数頭の所為で滅んだ事を
更なる事実に遊戯は苦しんだ
仲間を滅ぼした人間を恨むべきなのかどうか・・・
でも仲間は、きっと自分が仲間を恨む事を望んでないと思い遊戯は人間を恨まない様にした
寧ろ何とか人間と協力したって生きて行く事に勤める様にした
それでも一部の人間にしか受け入れて貰えず
石や小枝を投げられる事なんて日常茶飯事
遊戯は、仲間の墓を作る傍らそれでも人間に近付いた
何度瀬人に咎められようとも・・・
「遊戯 何度言えば解る?貴様は人間に利用されているだけなのだ
利用価値が無くなれば貴様は同胞同様に消される・・・」
貴様を・・・貴様までも失いたくない
自分を受け入れ護ってくれた鬼達
その生き残りであり自分を最初に見つけ仲間に紹介してくれたのは遊戯
遊戯までも失う事を想像してしまいそれを振り払うかの様に攻めたてる
「・・・あ・・・はぁ・・・それでも・・・望みを捨てたくない・・・」
もしかしたら受け入れて貰えるかも知れない
甘い考えなのは解っている でも望みたい
瀬人の腕の中 激しく襲い来る波に見を捩り翻弄されながらも希望を持って居たかった
「爺さん また鬼っ子に手伝わせているのか?」
「お前さんは、知らないのかもしれないが舟を作らせたら鬼は丈夫なのを作ってくれおる
まぁ・・・近い内に消えて貰うがな」
そんな事は露知らず遊戯は、漁民の為に舟を作った。
喜んで貰う姿が見たくて
「爺さん舟出来たぜ・・・あっでももし漁に出るんなら2〜3日してからの方がいいぜ」
「どうしてかね?」
遊戯は、空を見上げながら
「明日から大雨が降る 海が荒れるぜ」
空は、晴天だというのに遊戯は雨が降ると言う漁夫は
「こんなに御天道様がイイってのに雨なんか降らねえだろ?」
遊戯の言葉通り翌日は雨が降ったしかも海は荒れて・・・
「あの鬼っ子は役に立つだろう?」
「しかし何時までも生かしておくには・・・」
「もしかしたら親切にするのも仲間の事でワシ等に復讐する機会を狙っての事かも
しれん」
「なんちゅう恐ろしい鬼っ子じゃ」
「仕方が無いがあの鬼っ子には海の波が落ち着いたら消えてもらうしかないか」
海が荒れていては鬼が島には行けないし遊戯もこっちに来ない