運命の輪の中で・・・-2-
遊戯が言う通り漁に出る事ままならず
漁師達は、その間長老の元に訪れ遊戯の始末に関する話しあいを続けた
3日目・・・
空は、晴れていてもやや波が不安定だったので舟を出す事叶わず
4日目にして舟を出す
遊戯は、雨の日も関係無く仲間の墓を作り続け遺骨を埋め続けた
最後の仲間の遺骨を埋め終えた時の事だ
「そんな所で何をしておる?」
背後から声をかけられてビックとする遊戯
この島には龍王瀬人と自分の2人だけのはず
それなのに他者の声に遊戯は、驚いた
振り返れば自分が幾度となく手伝った老人の姿
「爺さんこそこんな所で何してるんだ?」
人が島に訊ねて来るなんて仲間が死んで以来初めての事・・・
それまでも人間が島に訪れる事なんて滅多になかった
もしかしたら自分の思いが通じ異種である自分でも受け入れてくれたのかもしれない
そんな淡い期待が胸を過る
「鬼は、お前さん一人なのかい?」
遊戯が唯一の生き残りだと解っていての再確認
「ああ・・・今最後の一人を埋め終えた所だぜ」
「そうかい では、墓穴をもう一つ掘ってもらわにゃいかんな」
「?」
一瞬老人の言った言葉の意味が解らなかったが
「!!」
岩影から姿を現した数人の漁夫を見て悟った
今日で仲間の墓作りは終わりのはず
この島は、楽しかった思い出と余りにも悲しい思い出が詰った場所
瀬人は遊戯を連れてこの島を出て行くつもりだった
行く宛なんて有りはしない
だがこのままここに居つづけるワケには、いかない
何時人間が遊戯を狙ってくるか解らないからだ
「・・・さ・・・・せ・・・・」
微かに風に乗って聞こえて来る遊戯の声
しかも慌てている様だ
瀬人は、風に意識を乗せ遊戯を探す
暫くして見つけた遊戯
その姿は傷つき所々から血が流れ出している
しかも十数人は、いようか各々に武器を持った漁夫に追われているではないか
瀬人は、遊戯を助けるべくその身を龍の姿に変える
急に山から姿を現した龍神に驚く人々
「貴様等 遊戯に何をしている!」
その声に驚いた漁夫達
遊戯達鬼が龍神を捕らえ島に幽閉していたと勘違いしたのだろう
「龍神様 オラ達がこの鬼っ子を始末しますんで御安心下さい」
等と声を上げ出す者が現れる
「瀬人様どおかこの人達に危害を加えないで下さい!!」
「遊戯 うぬは何故その様な愚かな者達をかばいだてする?貴様の仲間を殺した張本人ぞ!
貴様にとって敵ではないのか?」
「確かに仲間を殺した・・・でも・・・それでもオレは、仲間の夢を叶え・・・あ・・・」
崩れ行く遊戯の姿
「遊戯!!!!!!!」
その背中には深々と突き刺さる銛
「これで龍神様は自由の身!!」
龍神を救ったとなればその見返りに魚が海に大量に姿を現し大漁になる
若い漁夫は、各々に歓喜の声を上げるが老人は龍神が怒っている事を悟る
「うつけ者が!!貴様等が行なった行為は我の逆鱗に触れる行為ぞ!!
遊戯が居ればこそ貴様等への我が怒りは抑えられていたものを」
龍神の一鳴きに空に悪雲垂れ込め海はうねりを上げ荒れ狂い出す
漁夫達は慌てふためき急ぎ舟に戻るが時既に遅し
舟は、沖に流され波に飲み込まれて行った
「龍神様どうかどうか御怒りを鎮めて下さい!!
我等が貴方様に御仕えさせて頂きますゆえに」
老人は、ひたすら龍神に頭を下げるもその声は、荒れる雨風にかき消されてしまう
遊戯 貴様は、何故命をかけて最後の最後まで愚かな人間をかばう?
そこまでの価値があるのか?
自分の掌の上で横たわる遊戯
自分に海王神の力が有れば遊戯の疵を癒し今一度生を与え供に生きるのに・・・
龍神の力で疵は癒せても一度奪われた命まで生きかえらせる事なんて出来ない
遊戯 貴様と俺が出逢った時の事覚えているか?
俺には昨日の出来事の様に思い出されるぞ
初めて遊戯の躰に触れ その身を拓いた事も・・・
全てがつい最近の出来事の様に
遊戯 俺を残して逝くな!!
今一度 俺に貴様の笑顔見せよ
俺に話しかけよ!!!!!!
幾日も続く嵐・・・
遊戯を殺めた漁夫達は、自分達の村に帰る事無くその命を散らせた
暗雲を一筋の月光が鬼が島まで伸び
その光りの上を一人の女神が歩を進めていた
「瀬人・・・」
「イシズか」
岩に背を靠れさせる瀬人
月神イシズは
「大神様よりの御言葉です。【今すぐ嵐を収めよ】との事」
「くくく・・・案ずるなと伝えよ 近い内に我と供にこの嵐も消えよ」
「瀬人」
瀬人の腕に抱きしめられている鬼の姿
龍神の力を使い朽ちる時間を止められているようだ
この嵐の原因を悟ったイシズの胸に微かな悲しみが流れ込む
この嵐は、大切な者を失った貴方の怒りと悲しみなのですね
地に手をかざせば流れ込む大地の記憶
余りの出来事にイシズは言葉を無くす
孤独な海王神が何故大罪を犯したのか・・・
それは一重に愛する者の傍に居たいが為
瀬人は龍神に身を落とす前に遊戯と出逢っていたのだ
しかし海王神の立場では鬼である遊戯達と供に時を刻む事は許されていない
瀬人は考えた末 大神にデマカセを言い剣を突き付けた
一歩間違えれば瀬人は死罪
しかし死罪を免れたのは、予め瀬人は自分を降格して欲しいと大神に願い出ていた為
誰かに相談し頼る事の無い男が初めて誰かに相談し頼ったのだ
余程の決意の元だと感じた大神は出来る事なら瀬人の願いを聞いてやりたかった
しかし何の理由も無く降格なんて出来ない
その事を大神に告げられデマカセを言いながら大神に剣を突き付けたのだ
それを口実に瀬人は降格されてしまう
降格された瀬人は、どうやって遊戯に近付くか思案に耽った
鬼が島の山の麓の岩に居ると遊戯が薪を拾いに近付いてくる
瀬人の姿を見ると
「この島では、見かけない顔だな」
何の疑いも無く瀬人に近付く遊戯
「何か困った事でもあったのか?」
「あっ否・・・今夜寝る所を・・・」
「もしかして宿無しか?」
「ああ・・・」
「お前良い着物着てるなそんな着物着たヤツは、家事が出来ないって長老様が言ってた
それに困ったヤツは、見捨てるなとも言ってた」
だから自分に着いて来いと言うのだ
遊戯は、仲間が住む村に行き長老にワケを話すと
「宿が無いとは、さぞかし御困りであろう しばしワシの家に住まわれるがよかろう」
本当は、遊戯の家に泊まりたかったが何処でも見知らぬ客人をもてなし泊めるのは、その村の長の家と
相場が決まっている
長老の家に泊まる事になった瀬人
その夜
「もし お主は、行く宛でも御座いますかな?」
「否 行く宛は無い」
「お主は、ワケ有りの神では御座いませぬか?」
「何故それを?」
見かけは、人と何等代わり栄えがしない筈なのに
「その身から漂うモノは、人とは異なります故 もし迷惑でなければ山の山頂にて社を造ります故に
そこに住まわれるが良かろうと・・・」
勿論身の回りを世話する者も着けます
神が自分達と対等に村に住むのも尊厳に関わると言うので瀬人は山頂に社を造って貰いそこに住んだ
遊戯には、自分の身の回りの世話をさせる為に一緒に住む事を言ったが
「オレばかり瀬人様の世話をするワケには、いかない
他の者と交替で世話をさせて貰うことになった」
ただ遊戯は瀬人が所望した相手
それ故に遊戯が世話をするのは、1ヶ月しかも泊まり込みで
他の者は1日交替
瀬人は、遊戯が来るのを一日千秋の思いで待っていた・・・