運命の輪の中で・・・-3-

 


暫くして嵐が過ぎ穏やかな日差しが水面に反射しキラキラと輝いていた

何事も無かったかの様に・・・

そこに何も存在していなかった様に・・・

 

跡形も無く消え去った島

 

確かに数日前までその場所に存在していた筈なのに

イシズは水面の上に立ち微かにしか感じ取る事の出来ない力を探した

そして行き着いた先は光りが差し込まない深海の底

全ての光りを拒絶しているかの様に・・・

 

深海の底には、白き龍が力無く身を横たえている

その傍らには、人の姿とおぼしき影

 

「瀬人・・・」

「イシズか こんな所まで何の用だ?」

瀬人の腕には時を止め朽ちる事の無い鬼の姿

「瀬人 海王神の力を取り戻し今一度天に・・・そうしなければ貴方の身は・・・」

このまま光りの粒子となり消え果てる

「構わん・・・俺が望んだ事だ」

腕の中で眠る存在を力強く抱き締める

「その者が貴方の生きる気力を奪っているのなら!!」

イシズは、瀬人に近付き遊戯の亡骸に手をかざすがそれを拒むかの様に瀬人がイシズの

手を払い退ける

「貴様まで大罪を犯す必要は無い!!

イシズ 人の世では死したものは輪廻の輪に入り来世に向けて歩むらしい

もし異種である俺達にもその輪廻とやらが有るのなら俺は、こいつと供に・・・」

払い退けられた手

生きる事を拒絶した神

朽ちる事の無い亡骸

「イシズ 大神に迷惑かけたと伝えといてくれ」

目を見開き瀬人の言葉を息を飲んで聞いた

それは、彼の最後の言葉

「解りました お伝えしておきます」

最後の瞬間を見るのが怖かった

 

 

 

 

遊戯 俺は貴様に自分の気持ちを打ち明けてなかったな

貴様を愛している

もし俺に来世と言うものがあるのなら必ず貴様の傍に居る

貴様を守り一緒に・・・

 

遊戯・・・永久に・・・

 

 

 

同胞が消える瞬間なんて見たくない

イシズは、その瞬間を背を向けた

頬の傍を光りの粒子が飛び過ぎて行く

 

 

 

時の神よ

もし御身が存在する神なら

どうか我が同胞の願いを聞き入れ

彼等に来世で出逢う事を・・・

 

 

大神でさえ逢う事を許されない時の神・・・

イシズは、その神に対し一心に祈りを捧げた

消えてしまった瀬人の為に

 

 

 

 

 

 

 

---数百年後---

「・・・ぎ・・・ゆ・・・」

「ん・・・」

「も〜朝から居眠り?」

「あ・・・杏子?」

「杏子?じゃないわよ 早く学校に来てると思いきや

グ〜スカ グ〜スカ寝てるんですもん」

あっそうだ夕べデッキを組んでたんだ

何時もなら夜中までかかるのに今回は、すんなりと組み上がり早目に寝る事が出来たんだ

それに何か今日は、良い事が起きそうな気がして早く家を出たんだった

それにしても・・・

「遊戯 何か辛い夢でも見たの?」

「?どうしてだ」

「魘されてたから」

「・・・変な夢を見た様な気が・・・」

本当に変な夢だった

オレが鬼でしかも最後は人間に殺されるなんて・・・

しかも自分の想い焦がれてた相手が龍神で男

男に想いを寄せるなんて末期かもしれないぜ

そう言えば告白とかしてないんだよな

言葉では、言い尽くせないって事なのか?

 

「オ〜ス 遊戯 どうした浮かない顔して?杏子にでもイジメられたのか?」

「あんた達と一緒にしないでよ〜」

「何か悩み事でもあんなら俺に言えよ ダチなんだから」

「ありがとう 城之内君 本田君」

「あっ そう言えば今日転校生が来るらしいよ」

「あ?この時期にか?」

「季節外れの転校生vvv」

浮かれ顔の城之内に杏子が

「転校生は、男の子よ」

釘を挿す

「げ〜ぇ・・・野郎かよ 何か一気に興ざめ」

「あら 女子の間では興味津々よ」

「まぁ俺達は男だから男の転校生に興味もてね〜は」

城之内も本田も掌をヒラヒラと振り各自の席に向う

 

2人には、申しワケ無いけどオレは気になるぜ

 

鳴り出す予鈴

私語雑談にいそしんでいた生徒達はそれぞれの席に着く

程なくして担任が教室に現れると学級員長が号令をかける

着席すると

「転校生を紹介する  君入ってきたまえ」

ガラガラ・・・と開けられる扉

女子から上がる黄色い声

男からは妬ましげな視線

それをモノともせずに入ってくる長身の男

 

遊戯は目を見張った

男もまた遊戯の方を見ながら驚いた様な表情

 

担任が黒板に男の名前を書く

書かれた名は

【海馬瀬人】

だが遊戯には、その名前が目に入ってなかった

 

 

《まさか夢に出て来た人物?》

紛れもなく海王神にして龍神 瀬人

紛れもなく海王神に愛されていた 遊戯

 

互いが互いに見た夢の中の登場人物

 

 

 

 

 

 

 

『瀬人・・・』

『遊戯・・・』

 

 

逢いたかった・・・

 

 

心の奥底で感じる言葉

こんどこそ供に・・・

 


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