携帯電話-1-

 


別に見たいとは、思わなかった。

ただ気になっただけだった。

 

無造作に机の上に置かれた携帯電話。

瀬人は、ベッドの上から携帯電話を見つめた。

その携帯電話に自分の番号やメアドが入っているワケでは、無い。

別に遊戯の番号やメアドを知りたいとは、思わない。

(既に調べて知っているから)

でも気になった。

遊戯の交友関係とかも把握しているのに・・・

 

瀬人は、机の上に飛び乗り携帯電話を開ける。

遊戯は、数分前に母親に促されて只今入浴中。

暫く戻って来ない事は、解っている。

先ずは、メールの送受信を見る。

送受信相手は、何時もつるんでいる連中ばかり。

ただ『ゆうぎ』と表示されているのも在る。

(ヤツは、自分自身にもメールをする変わり者なのか?)

不思議に思い思わず見てしまう。

 

送信《相棒元気か?

って毎回同じ事書いてるな。

最近綺麗な白ネコが来ているんだぜ。

そのネコがオレのクラスメートに似ているからソイツの名前を取って『瀬人』って名付けたんだ。

今度機会が在れば瀬人を連れて見舞いに行くからな。》

 

受信《へ〜どんなネコなのか興味があるよ。(笑)

君が気に入る程だからよっぽど綺麗なネコなんだね。

友達の名前勝手に付けてるみただけど大丈夫なの?》

 

相手の文面からしてオットリとした様なイメージを抱いてしまう。

自分の知らなかった相手。

瀬人は、この『ゆうぎ』と言う相手がどんな人物なのか遊戯とどう言う関係なのか知りたくなった。

そしてこの人物は、着信履歴にも名が乗っている。

メール程頻繁では、ないようだが。

瀬人は、携帯電話を閉じ机の上で丸くなっていると階段を上って来る足音が聞こえて来る。

この足音の主が誰なのか既に解っている。

 

開けられた扉から入って来たのは、遊戯。

頭からタオルを掛けベッド以外の所に居る瀬人を見ると。

「お前がベッド以外の所に居るなんて珍しいな」

(俺だってたまには、ベッド以外の所に居る)

瀬人の傍には、携帯電話。

遊戯は、瀬人が携帯電話に興味を持っていると思ったらしく。

「お前が人間だったら番号交換やメアド交換したのにな」

(俺が人間だったら・・・だと!!くそ〜何故この身は、ネコなのか!!)

「ニャ〜!」

思わず悔し鳴きをしてしまう瀬人。

そうとも知らない遊戯は、笑みを浮かべながら。

「この携帯は、オレの双子の兄貴と御揃いなんだぜ。」

ニャに?双子の兄貴?

そんなのが居るなんて報告されてないぞ!!

それにだったら何故貴様と同じ名前なんだ(平仮名で)

「相棒は、生まれつき病弱で一緒に居る事が出来ないんだ。

今は、遠くの療養施設に居る。今度お前も一緒に相棒の見舞いに行こうぜ。」

療養施設に入らないとイケナイ程具合が悪いのか?

その携帯は、兄と唯一繋がっているモノ・・・

家から電話をすれば家族が気にするかもしれない。

そんな所から来ているのだろう。

だがそれでも何故貴様と同じ名前なんだ???

病弱と名前が一緒なのは、関係ない筈!!

瀬人の中で謎が深くなるばかり。

「相棒の名前は、『遊樹』と書いて『ゆうぎ』って読むんだぜ。

オレ達の名付け親は、ばぁーちゃんなんだけど。

オレ達が双子って事もあって見分けられないから漢字は、別だけど読み方は、同じにしたらしいぜ」

(ニャにぃ〜貴様等の名前は、手抜きなのか????

それで貴様の両親は、違和感を感じんかったのか?)

「普通違和感を感じるとは、思うんだけどパパもママも『見分けられないから別に同じ名前でも

いいか』って思ったらしいぜ。」

じぃーちゃんは、頭を抱えてたらしいけどな。

 

それって貴様の祖母が只単にゲーマーだったから貴様に『遊戯』と名付け。

その時の偽名が『遊樹』だったんじゃないのか?

だから貴様の祖父は、頭を抱えたんじゃ?????

 



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