紅玉-至宝の宝-


チュク・・・クチュ・・・

「瀬人様また遊戯を見ておられるのですか?」

瀬人の胸に寄り添い彼の胸に口付けをする女に彼の男根に奉仕する女。

それ以外にも幾人もの女が艶めかしい姿で彼の回りを取り囲む。

その中で遊戯だけは、彼の傍に近付こうとしなかった。

瀬人は、カイバ帝国の皇帝。

近隣諸国の王でさえ彼の顔色を窺い同盟を求める相手。

もし彼の機嫌を損ねる様な事になればどんなに同盟を結んだ国でもまたたく間に滅ぼされる。

それ故に近隣諸国の王は、こぞって娘を差し出してきた。

しかも彼を恐れる重臣でさえ己の娘を差し出して来ているのだ。

差し出された娘達は、後宮に入れられる。

後宮の女達は、皆美しく。何時か皇帝の寵妃となって後宮を出る事を夢見ていた。

「瀬人様・・・白を私の中に下さいませ・・・」

「好きにするが良い」

「ずるいですわ〜私も陛下の白が欲しいのに・・・」

女達は、こぞって瀬人の下肢に群がり瀬人の男根を自分の中に・・・と求めた。

しかし瀬人の心は、群がる女の元には、無い。

瀬人の心は、後宮の中庭に居る遊戯の方に向いていた。

自分に跨り身悶える女の姿を見て何度これが遊戯だったら・・・と思った事か。

しかし瀬人は、決して遊戯をこの狂乱の渦の中には、入れなかった。

遊戯には・・・遊戯だけには、見られたくなかったからだ。

 

だが後宮は、元々皇帝以外の男が出入り出来る事が出来ない場所。

幾ら遊戯が瀬人に気に入られているとは、言え入る事が出来ないのだ。

 

そんな遊戯の事を想いながら瀬人は、次々を跨って身悶える女を容赦無く貫く。

そして遊戯と初めて出逢った日の事を思い出していた。

 

 

++++

 

雲一つ無い空。

数人の部下を連れ向った先は、カイバ帝国とウィザース国の国境に在る森。

この森は、国境に在るとは言えウィザース国の領土。

それを承知で入って行った。

森深く泉の傍で黒馬に水を与える少年を見かけた。

遠目で良く見えなかったが少年の瞳が紅玉の様に思えた。

もっと近くでその瞳を見たいと思ったが近付く事に躊躇う。

そんな自分に驚いてしまう。

(この俺が何を躊躇っているのだ?あの者の瞳の色を確認したければ躊躇う事なく見に行けば良いだけの事)

それなのに躰が思う様に動かない。

そんな主に部下達も表に出さないまでも戸惑っていた。

ガサ・・・

「誰だ?」

躊躇う瀬人が無視気に踏みつけた草が音を立ててしまう。

黒馬を背に庇いながら辺りに気配を配りながら腰に携えた剣に手を伸ばす。

草が風も無く音を立てるなんて在りえない。もし風無く音を立てるとしたら動物かあるいは、人が傍に居る。

ここは、ウィザース国の領地とは言えカイバ帝国までは、ほんの1キロ・・・

時折カイバ帝国の者が出入りしている事は、ウィザース国の者なら誰しも知っている。

急に現れた長身の男。少年が剣を抜くより早く男は、少年の動きを封じると何かしらの呪文を唱え出す。

その呪文を耳にした少年の顔がみるみる強張っていく。

「いやだ!!!」

どんなに拒もうが聞こえる呪文。抵抗虚しく少年は、自分の意識が遠のいてを忌々しく思っていた。

少年の瞼が閉ざされる前に見た紅玉に心を奪われてしまった。

そして少年がウィザース国の王子で在る事を少年の指輪に刻まれた刻印で知った。

(黒馬を操るウィザース国の王子の名は、確か遊戯だったはず・・・)

ウィザース国には、双子の王子が居た事を思い出す。

自分の腕の中で眠る遊戯・・・瀬人は、彼を手放したくなかった。

何故?と問われれば答えなんて無い。

瀬人は、遊戯を抱き抱えながら遊戯の愛馬の手綱を手にすると引っ張り遊戯諸とも連れ去った。

馬なんて帝国の厩舎には、何百頭といる。

今更1頭増やしても意味が無い。寧ろこのまま手にかけた方がいいと思う。

しかし瀬人がそれを行わなかったのは、ここで馬を殺せば遊戯が拉致された事を裏付ける。

しかもここは、カイバ帝国から近い森。戦になりかねない。

ウィザース国に負けるなんて思ってない。しかしウィザース国は、カイバ帝国にない武力を持っている。

長期戦になりうるのだ。

無駄に兵を消耗する気は、無い。

それにこの黒馬を手にかけるのは、何故か惜しいと思ったのだ。

 

瀬人が遊戯を抱き抱えたまま騎乗している事に門兵が驚きながらも出迎え他の兵が瀬人が戻って来た

事を重臣に伝えに行った。

「皇帝陛下お帰りなさいませ」

「陛下御身に抱かれている者は?」

重臣は、各々に問いそして遊戯を<こちらへ>と言わんばかりに手をさし出す。

それを一瞥しながら瀬人は、一先ず遊戯を自分の部屋へと連れて行った。

寝室のベッドに横たえた遊戯。

彼の指にはまっている指輪を取ろうと試みるが何かの呪いがかかっているのか取る事が出来なかった。

遊戯の指を思わず口に含み舌を這わした。

(この躰に自分を刻み込みたい・・・声を・・・俺に感じてる声を聞きたい)

自分からSEXを求めた事なんて無い。

それなのに今日初めて逢った彼に欲情している・・・

眠る遊戯の上に乗り首筋に顔を埋めた。

微かに香る薔薇の匂いがくすぐったい。彼の首筋に所有の印を刻もうとしたが刻めなかった。

彼を抱いては、イケナイと思った。このまま彼を抱けば後悔するかもしれない・・・

心に浮かぶ今迄感じた事のない罪悪感・・・

瀬人は、遊戯が目覚めるのを待つ事にした。

 

目覚めた遊戯には、過去の記憶が無かった。

自分の名前でさえ覚えてない。

瀬人が遊戯にかけた呪文は『忘却の呪文』

自分を見上げる遊戯の表情は、何処か怯えている様に見えた。

それは、記憶が全く無い所から来ているのだろう。そんな表情にそそられる。

「貴様の名は、遊戯だ。俺専属の従者だ。」

と従者などと嘘を付いた。

それでも不安そうな表情が消えない遊戯の躰を抱きしめながら

「何も不安がる事は、無い。俺の傍に居ろ」

優しい言葉にただただ肯く遊戯。瀬人が自分の記憶を奪った張本人だと言う事を知らないまま・・・

 

+++++

「はぁはぁぁぁ・・・んん」

自分の上で腰を振る女の胸を強く搾乳しながら他の女とキスを交わす。

どれだけの女と交わろうが瀬人にしてみればそんな行為に何の意味も無い。

ここに居る女は、ただ差し出された品物でしかない。

子を孕んだとしてもその子に王位を継がせる気なんて毛頭に無い。

遊戯が女だったら孕ませその子を王位に着けるのに・・・

 

 

後宮から出て来た瀬人。

その姿を確認すると遊戯は、瀬人の元に駆けより何も言わずに彼の後ろを歩いた。

瀬人の躰から発ち込める花の匂い・・・後宮の風呂を使った証。

後宮に居る女と交わり後継ぎを作るのも王の役目だと解っている。

だが何故か遊戯の無い筈の記憶が後宮の必要性に疑問を抱いていた。

(自分が生まれ育った場所には、そんなモノは無かった様な気がする・・・)

「ゆう・・・遊戯・・・」

「あっ・・・はっ・・・はい」

慌てて返事をする遊戯。

瀬人は、そんな遊戯に対し眉間に皺を寄せながら

「何を考えていた?」

「え・・・あ・・・何でも無いです」

疑いの目で見られている事に気が付いているが遊戯には、何と言って説明したらいいのか解らなかった。

俯き困っている様子の遊戯に瀬人は、軽く溜息を吐くと

「貴様は、俺の事以外何も考えるな。それよりもう休む・・・」

そう言って自室に姿を消す瀬人に対して遊戯は、

「お休みなさいませ」

と告げながら深々と頭を下げた。

 

瀬人は、ベッドに沈み込む様な気持ちで横になる。

女を抱いている時、相手が遊戯だったら・・・と何度思った事か・・・

世継ぎが要ると言うのなら遊戯との間に出来た子の方がいい。

叶わない夢だと解っている。

今の自分では、彼の裸体に触れる事が出来ないのだから・・・

疲れから意識が遠のく中で

(夢でもいいからあの躰に触れたい・・・)

願ってしまう。

 

その頃遊戯も与えられた部屋に戻ると何時も鏡に向い自分が誰なのか自問してしまう。

だがその答えは、決して返って来ない。

城内の誰に聞いても答えてくれない。

遊戯には、知らされてないが城内に居る者は、瀬人から遊戯に事実を告げては、ならないと厳命されていた。

もしそれを破ればどんな仕打ちが待っているのか解らない為である。

無論口外も禁じられている。

遊戯は、不安から己の身を抱き締める。

何故か安心出来るから・・・無い記憶の中で誰かが何時も自分を抱きしめてくれていたから・・・

(逢いたい・・・誰か知らないけど・・・オレを抱きしめてくれていた人に逢いたい・・・)


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