妖艶-1-
帰って来ると部屋の中には、嗅いだ事の無い異臭に思わず眉間に皺が寄る。
遊星は、日中仲間達と一緒にジャンク探しに出掛けていた。
一人残ったジャック・・・
別に彼を誘わなかったワケでは、無い。ちゃんと声を掛けたが「いや いい・・・」と断られたのだ。
仕方が無いけどジャックには、留守番をして貰う事にした。
留守番を言ってもジャックにだって彼だけの住処は、在るのだが何故か遊星の住処にいつ居てしまい一緒に
住むようになっただけなのだが・・・
(そう言えばジャックは、自分の住処に何時帰っているんだ?)
当たり前のように一緒に居るが彼だって時折自分の住処に帰っている筈・・・なのだが・・・帰った姿を見ていない。
もしかして住処を出払ったのだろうか?
仲間達とのジャンク集めは、それなりに楽しかった。が何時も一緒に居るジャックの姿が無いのが気になる。
何時も振り返ると腕組みをして自分の姿を見ているジャック。
恥かしいと思う事もあったが何故かその紫の瞳に見られていると安心感と言うか何と表現していいのか解らな
いけど嬉しいと思う事もあった。
その紫が今日は、無い。何だか寂しい・・・
そう思いながら帰って来ると異臭・・・リビングの方からだ。
リビングに行くとテーブルの上には、見慣れないボトルが在り見慣れないグラスでボトルに入っている液体を
ジャックが飲んでいた。
異臭の原因は、ボトルの中に入っている液体のようだ。
「ジャック・・・何を飲んでいる?」
「遊星か・・・これは、お前の様なお子ちゃまが飲む事の出来ない代物だ。」
「?だからそれは、何だと聞いている」
お子ちゃま発言にカチンと来たが今迄言い争って彼に勝った試しが無い。
必ず負けるのだ。それなら無益な争いは、避け様と思い怒りをグッと押えた。
それに何だかジャックの様子が何時もと違ったから・・・
「これは、酒だ。」
「さけ・・・?」
サテライトにだって酒ぐらい在る。何が混ざっているのか解らない貧素で毒薬みたいな酒だが・・・
実際サテライトの酒を飲んで稀にだが死者が出ている。死ななくても中毒ぐらいは、日常的かもしれない。
物騒な飲み物なのだがそれを欲しがるヤツは、多い。現実を忘れ架空の幻想的な世界へと羽ばたく為に。
遊星が何を考えているのか解ったジャックは、
「心配するな粗野な連中が飲むような貧素な代物じゃない。シティの連中が飲むような高級な代物だ。」
そう言うとグラスを少し高い位置に持ち上げ中の液体を軽く振る。
琥珀色をした液体。
「お前も飲むか?」
シティのお酒・・・興味が無いワケでは無いが遊星は、今迄お酒自体飲んだ事が無いのだ。
当然の事だが
「いや・・・いい・・・」
と断った。
予想していた通りと言わんばかりに
「そうだなお前の様なお子ちゃまには、酒はキツイかもしれないな」
嫌味を言う。
本当は、今日遊星と一緒に飲むつもりだった。
だが遊星は、仲間達とジャンク集めに出てしまった。
遊星が帰ってくるのを待っていたがジャンク集めに無中になって今日は、もしかしたら帰って来ないだろうと
思いボトルの蓋を開け飲み始めていた。
「お子ちゃま・・・お子ちゃまってオレとお前では、2歳しか違わない・・・」
年の差2歳で子供扱いされるなんて不愉快でしかない。
「だったら飲んでみるか?子供じゃない証として」
遊星に差し出されたグラス。
子供扱いされてムッとしている遊星は、売り言葉に買い言葉でそのグラスを受け取りジャックの向いのソファに
座ろうとしたが
「注ぎ難い俺の傍に座れ」
と言われてしまう。
向いに座ったからと言ってそう距離が在るわけではないのに・・・だが遊星は、何も言わずにジャックの隣に座るの
かと思いきや左右に開かれたジャックの片腿の上に座り密着して来たのだ。
どういう風の吹きまわしか?と思ったし実際行動に移した遊星も自分の行動に驚いていた。
注ぎ込まれるアルコール。
臭いは、好きじゃない。
氷を入れて飲むらしいがサテライトの氷だと美味しく飲めないらしい。
まぁ綺麗な水で作った氷じゃないから仕方が無いとジャックは、苦笑していたがシティの氷はサテライトの氷
より美味しいのだろうか?
シティとサテライトの水を飲み比べなんてした事無いから比較のしようが無い。
遊星は、グラスを鼻先に持って行き再度臭いを嗅ぐ。
好きになれない臭い・・・
それをジャックは、飲んでいる。味は、美味しいのだろうか?興味から少し口に含んでみる。
舌を刺すような痛みと喉を焼くような感覚に咽る。
涙目になっていると
「やはり お前は、お子ちゃまだな。」
と笑われてしまう。
ムス〜としつつもこんなに間近でジャックの楽しそうに笑う顔なんて見る事無いから見入っていると
「そんなに俺を見ていて穴でも開いたらどうする?」
揶揄すると急に遊星の顔が真っ赤になり
「別にお前を見ていたんじゃない!!」
ソッポを向きながらグラスに口づける。
そんな遊星の行動が余りにも可愛く見え緩んだ顔の肉を引き締める事が出来ない。
(まったくそんな行動を取るからお子ちゃまだと言うのだ。)
こんな遊星を見る事が出来るのは、きっと自分だけなのだろう・・・
ラリー達の前では、言葉数も少なく余り笑顔を見せない。笑顔だけじゃない喜怒哀楽自体見せない。
そのため感情に乏しいと思われているかもしれない。
だが2人っきりの時は、喜怒哀楽を見せる。見せると言っても元々上手く自分を表現出来ない遊星にして
みれば見せてくれている方だろうし話してくれている方だろう。
そんな遊星を愛おしいと思う。
2口程口に含みそれを飲む。
ソッポを向いていても喉が上下するのが見える。
それを2〜3回繰り返しただろうか急にグラスをテーブルの上に置きジャックの胸に靠れて来る遊星。
甘えた様な素振りにジャックの心拍数が上がる。
今遊星がどんな表情をしているのか見たいのに遊星は、俯いたままだ。
「遊星・・・」
声を掛けるが余りの事に上ずってしまう。
遊星に早金の様に動く自分の心音を聞かれている事に戸惑う。
そんなジャックに遊星は、顔を上げ満面の笑みを見せながら
「リャックのシンロウ早い・・・(ジャックの心臓早い)」
呂律の回ってない言葉を発する。
「遊星・・・」
明らかに酔っている遊星。
顔を紅潮させ瞳を潤ませ熱い吐息を吐く。
「お前・・・酔っているのか?」
確認なんてしなくても一目瞭然。
(2〜3口飲んだだけだろう?幾らなんでも酔うのが早すぎないか?!)
「よってらいぜ リャックのシンロンほほちいい(酔ってないぜ ジャックの心音心地良い)」
ジャックの胸に耳を宛てながら気持ち良さそうにしている遊星。
膝の上に座ってきたり拗ね様な素振りを見せたり弱いのにお酒を飲んだり。
余りにも遊星の行動がオカシイ。
そんな遊星が今度取った行動がジャックの鼓動を更に高める。
『熱い』と言って大胆にもシャツを脱ぎ出したのだ。
何度も見ている見慣れた艶めかしい上半身。
余計な脂肪も筋肉も無い。寧ろもう少しあっても良いぐらいだと思う。
そう思っていると今度は、口元に柔らかい感触が・・・
「!!!」
重ねられ閉ざされている唇をこじ開けるかのように差し込まれる滑ったモノ。
それが歯列をなぞり口腔内に入ろうと試みているのが解り少しだけ開けてやる。
それは、悪戯心・・・
入って来ないと思っていた。それなのに遊星の舌は、何の躊躇も無く入ってくる。
そして己が自ら絡めて来たのだ。
信じられない気持ちだった。
こんな積極的な遊星なんて知らない。
(理性ガ焼ケ切レソウダ・・・)
「ふぁ・・・ん・・・リャック・・・らにかんがえてる?(ジャック何考えてる?)」
「お前の事だ」
(こんなお前を俺は、知らない。)
「ふ〜ん」
何だか興味が無い様な返事。
遊星は、自分の手より大きいジャックの手を掴み自分の口元に持って行くと長くて綺麗な指をチュパチュパ
と舐め出した。
まるで情事を髣髴とさせる様な舌使いで。
「ゆ・・・」
「はぁんん・・・」
クチュ・・・ピチャ・・・
「リャックの大きい・・・」
濡れた指を自分の胸に這わしながら『くすぐったい』等と言い濡れている処を遊星の乾いた指が後をなぞる。
蕩けた様な瞳でウットリとした表情で・・・
ジャックは、自分のグラスをテーブルの上に置くと眼下に晒されている遊星の胸の飾りを摘まみ引っ張り捏ねる。
「うぁぁ・・・はぁ・・・やぁ・・・イタ・・・」
痛みを訴えている筈のなのにその表情は、快感に歪んでいる。
「全くお前がこんなに淫乱だとは、知らなかったぞ」
初めて見る遊星の痴態に息が上がる。
自分の中心部分に熱が集まる。
このままソファに押し倒して襲いたい心境に陥る。
そんなジャックの心中を察したのか遊星は、軽く自分の口元に手を宛て少し悪戯っぽい笑みを浮かべると
ジャックの膝から降りる。
だが酔っている所為で床に足が着いたとたんふらつきジャックの胸に寄りかかってしまう。
「危ないな」
「りゃっく〜ありがろう〜(ジャックありがとう)」
そう言って軽く唇を合わせるとそのままゆっくりと下へとずれて行き中心部分ままで行くとその部分に手を宛て
「かたい・・・」
一言呟くとベルトを・・・ボタンを外しファスナーを下げると少し湿ったアンダーウェアー。
アンダーウェアー越しに舌を這わしていく。
「・・・くっ・・・」
布越しに感じる温かい湿った感触。
直に触れられていないモドカシイ・・・
「遊星・・・布越しに舐めるのなら直に舐めろ」
その方が感じる。
遊星の髪を撫でながらアンダーウェアーをずらそうとするが遊星がそれを阻止する。