密室-2-


夕飯を終え不動が後片付けをしている最中アトラスは、デスクの上に置かれている書類を手にしてみた。

確かにこれは、手強いかもしれない。

不動の下に居るのは、日本人だけじゃない。

世界各国の優秀な人材が彼の下に居るのだ。

当然上げられる報告書は、日本語だけじゃないのだ。

ただ一部のスタッフは、不動の負担を考え日本文字を学びたどたどしいまでもちゃんと日本語で書いている

者も居るがその国の言葉で書かれている場合が多い。

それらを訳しデータとして保管するのだ恐れ入る。

それにしても不動が言語学に堪能なのも肯ける。

 

一先ず分担して書類日本語に訳しながらディスクに入力していく。

優秀な人材だけあって書かれている内容に興味をそそられるが如何せん言語がバラバラなので訳すのに疲れる。

時間が有ればこのデータをちゃんと読みたいモノだと思っていると、

「アトラスの人相データと眼球データ、指紋に音声も取らせてもらおう。」

「?」

「ここの部屋を自由に出入り出来るようにしようと言っているんだ。」

「・・・良いのか?」

「お前は。オレの優秀な片腕なんだろう?だったら当然じゃないか。」

「他の連中は・・・」

「彼等だってお前の才能を認めているから問題無い。」

(そう言う問題か?違うと思うぞ不動)

「それにオレの世話をお前に押しつけておけば自分達の研究が捗ると思っているだろうしな。」

「!!」

確かに不動程の人物の下に付くのは、どんなに優秀な者達でも一苦労。

彼が発する言葉を実現化するのが難しいのだ。

だがアトラスさえ居ればそれは、容易に片付くのだ。

自分達は、形になったモノをアトラスから見せて貰い更にそれを参考にすればいいだけの事。

「・・・オレとしてもこの部屋に不特定多数の人間を入れたく無い。」

この部屋は、不動にとって気が休まる場所の一つなのだ。

 

少し寂しそうな顔をする不動にアトラスの胸が高鳴る。

普段の彼から想像も出来ない表情。

普段どれだけの鉄仮面を被っているのか着けているのか・・・。

「さぁ 雑談は、ここまでだ早く作業を進めなくてはな。」

早く終わらせ休息を取りたい。

ココ数日不動は、徹夜続きだったのだ。

何時もなら1人で終わらせられる作業をアトラスに手伝って貰う事にしたのも躰を休めたかっただけ。

そうとは、知らないアトラスは不動と2人だけで作業が出来る事を喜んでいた。

 

アトラスの協力があったお影でデータの入力が思っていた以上に早く済んだ。

不動は、アトラスに労いの言葉を掛け彼にベッドを使う様に指示を出し自分は、タオルと下着を持ってシャワー

ルームへと向った。

大人しくしていたアトラスにしてみれば不動がシャワーを浴びる事は絶好のチャンス。

もしかしたら作業疲れでシャワーを浴びずに寝てしまうかもしれないと危惧していたのだ。

(まぁ浴びても浴びなくても不動に手を出す事に変り無いが・・・)

しかしここでアトラスにも戸惑いが生まれる。

男としては、自分の惚れた相手の服を脱がしたい。

だがシャワールームで不動を襲えば脱がす事が出来ない・・・。

そこで脳裏にある光景が浮かぶ。

それがアトラスの行動を決めた。

 

彼の脳裏に浮かんだもの・・・それは・・・

 

摺りガラス越しに見える不動の裸体。

不鮮明差によってぼやけたシルエットを想像したら見てみたくなったのだ。

 

もう迷う事なくアトラスは、シャワールームへと向った。

幸運な事に脱衣所には、不動の姿が無い。

音を立てずにソ〜と脱衣所に入りこみ扉付近に在る洗濯機の蓋が開いているのを見つけ中を覗けば先程

まで不動が穿いていた下着が入っている。

その下には、アトラスの下着も入っている。

自分の下着を不動が洗ってくれるのかと思うと躰の熱が上がってしまう。

しかも下半身の熱が・・・。

水音が聞える方に向けばこちらに背を向けシャワーを浴びる不動のシルエット!!。

摺りガラスによってぼやけているのが余計に欲情をそそる。

暫く不動の裸体を堪能するつもりだったが初めて見る不動の裸体を直接見たい・触れたい・感じたい。

と思う欲望に負けアトラスは、自身を包む衣服を脱ぎ捨てた。

 

水音でハッキリと聞えなかったが確かに背後から扉を開ける音が聞えた。

振り返り確認しようと思ったが背後から触れて来る手に・・・声に・・・振り返る事が出来ない。

「アトラス どういうつもりだ?濡れてしまうぞ」

「もう遅いですよ。既に濡れてしまった。」

「もう一度浴びたいと言うのならオレは、出るが・・・!!!」

不動の肩に置かれていた両手が肩甲骨をなぞり胸元に辿りつく。

「そんな必要は、無い。俺は、貴方と一緒に入りたい。否 俺を貴方の中に入らせて貰いたい。」

語尾を聞いて不動の瞳が見開かれる。

アトラスの言っている意味が理解出来るから・・・。

「何を言っている!!オレとお前は、男同士だ。そんな事・・・それにオレ達には、妻子が・・・」

「そう俺達は、男同士で妻子の在る身。だがそれがどうした?俺は、貴方が欲しい。」

アトラスは、不動の胸を弄りながら躰を寄せて来る。

不動の腰にアトラスのソソリ立つ熱が押し当てられる。

その感触にゾクッとさせられてしまう。

「安心して・・・直に入れたりしないから。ゆっくりと解してあげますよ。」

立っていられなくなるぐらい。

俺を求め、受け入れられる様になるまで。

「夜は、長いのですから・・・」

 

狭いシャワールーム。

不動は、身を捩り抵抗するがアトラスの行為が治まるどころかエスカレートしていくだけ。

嫌ならアトラスを殴り傷つけてでも逃げればいい。

それなのにそんな行動に出ない。

不動は、人を傷つけられない。それは、心身ともに・・・。『優しい』と言えば優しいのだろうがそれは、自身が

傷つく事を恐れる余りの事だとアトラスは、感じた。

「嫌なら俺を傷つけても逃げればいい。」

項に唇を押し当て吸い上げる。

「誰・・・も・・・傷つけ・・・たくない・・・」

不動の男根を掴み前後にゆっくりと扱きながら、

「誰も傷つけたくない・・・か・・・貴方自身が傷つきたくないだけでしょ?」

 

 

「そんな貴方の態度が・・・貴方は、無意識の内に人を傷つけてしまっている。」

その言葉に不動は、ショックを受けてしまう。

自分でも解っていた。

自分を傷つけない様にするためには、他人に優しくすればいい・・・と言い聞かせていたから。

それを今迄誰からも指摘されなかった。

誰しもが自分の事を『優しい人』として見てくれていたから。

だが今自分に手を出しているこの男は、その事を指摘して来た。

 

抵抗を止め身を固くしている不動にアトラスは、

「事実を突き付けられて余ほどショックだったのですね。

しかしこれで貴方を無理に縛る事なく行為に進める。

貴方の綺麗な肌に拘束の痕なんて似合わない。貴方に似合うのは、俺が着けた行為の痕だけ。

ああ・・・そうそう安心して下さい。貴方は、今迄通り他人には『優しい人』を演じていて下さい。

そして俺の前だけ貴方の本心を晒して下さい。包み隠す事無く・・・。」

耳元で甘く囁く。

その間も不動に施す愛撫の手を休める事無く。

「アトラス・・・」

弱々しい声で名を呼ばれるがアトラスは、聞えないフリでするかの様に

「ココでは、充分に貴方の全てを愛せない。貴方の全てを愛し貴方に俺の想いを受け止めてもらうのに

充分な場所へ移動しましょう。」

甘く丁寧な言葉使いで囁きかける。

 

シャワーのコックを締め片手で扉を開けると濡れた躰のまま不動を横抱きに抱えシャワールームを後にする。

今この部屋は、密室状態。

不動の許可無くこの部屋への入室は、出来ない。

アトラスは、寝室の小さなベッドの上に不動を寝かせ自分の躰を重ね合わせる。

何度も唇を重ね舌を絡める。

耳朶を甘噛みし息を吹きかける。

首筋に唇を押し当てるが痕は、着けない。

人の目に着く場所には、着けない。

「アトラス・・・」

「・・・ん・・・どうしたのです?」

不動の胸元に唇を押し当て痕を着けていたアトラスは、不動の方へと見上げる。

「・・・オレ・・・どうすればいい・・・」

「さっきも言いましたが貴方は、今迄通りで良いのですよ。但し俺以外の人間の前でのみ。

俺に対しては、全てを曝け出せば良い。俺は、貴方の全てを受け止めるから。」

「いいのか・・・」

「勿論ですよ。」

優しく笑みを浮かべ不安そうな表情で見上げる不動の顔を撫でる。

(可愛い人だ。ああ・・・これで貴方は、俺の手の中に堕て来た。

どれだけ手を伸ばしても掴み堕て来ないのでは?と思っていたのに・・・。)

自分を曝け出す事なんてした事が無い。

どうやってさらけ出したらいいのかなんて解らない。

だが自分の気持ちを抑えなくていいのか?

アトラスを傷つけてしまうかもしれない・・・。

「・・・お前を傷つけるかもしれない・・・」

「それは、お互い様だと思いますよ。」

「アトラス・・・」

「はい。」

「・・・いや・・・何でも無い・・・」

きっと何を言ってもこの男は、答えを出すかもしれない。

この男に全てを預けてもいいのだろうか?

いや・・・考えても無駄かもしれない。

彼を助手にした時点で自分は、彼に全てを預けたも同然だろうから。

 

不動は、アトラスの背に腕を回ししがみ付く。

それをこの行為の承諾と思ったアトラスは、中断していた行為を再開した。

 

 

+++

 

全てを預ける事にしたとは、言え男同士でのこの行為は初めてなので何をどうされるのかよく解らなかった。

ただアトラスから施される愛撫に感じ声を上げ身を捩る事しか出来ない。

 

自分の愛撫に背を仰け反らせ声を上げ感覚を砥ぎすます不動にアトラスは、酩酊していく。

殊更ゆっくりと解した場所は、ヒクヒクとしている。

「不動・・・貴方と一つに繋がりたい・・・俺をココに受け入れて欲しい・・・」

その場所に固くなった男根を押し当てるが無理に入ろうとしない。

不動の承諾を得てからじゃないと・・・。

 

生理的な涙を流し見上げて来る不動が愛おしい・・・

 

「・・・躰が・・・熱い・・・この熱を冷まして・・・くれるのなら・・・」

熱が篭った躯をどうしたらいいのか解らない。

もし冷ます事が出来るのなら・・・途切れ途切れの意識と言葉。

「ええ・・・貴方の躰に篭っている熱を解放して差し上げましょう。」

そう言うとアトラスは、不動の額に口付けを落しヒクツク場所に自分のモノを挿入させて行った。

 

 

初めて異物を受け入れる。

幾ら解されて傷つかないとは、言え躰を襲う痛みは半端なモノじゃない。

苦痛に顔を歪めは、したものの拒絶はしなかった。

ゆっくりと確実に奥迄入ってくるモノ。

アトラスの男根が全て入ったのだろう強く・・・強く躰を抱きしめられる。

労を労うかの様に顔中キスされる。

痛いのだけど擽ったい気持ちになる。

「動くぞ・・・」

「えっ?・・・あぁぁあああ・・・」

言葉と同時に動くアトラス。

受け入れた時とは、異なる強さで中を擦られる。

痛くて痛くて仕方が無い筈なのに何故か気持ち良く感じてくる。

(アトラスが相手だから気持ちがいいのか?彼だからオレは、こんな行為を受け入れているのだろうか?)

妻と子の在る身。

快楽の中に居ると言うのに心の片隅で冷静な自分が居る。

 

それでも今は、この快楽の波に飲み込まれて居たい。


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