捕われて-1-


あいつを初めて見たのは、商店街で行われていたデュエル大会。

2度目は、友達をおぼしき女を背に男とデュエルをしている所。

3度目は・・・

 

サテライト女子短期大学付属高校前---

 

「不動遊星だな?」

下校途中に声を掛けられ不動遊星と呼ばれた少女は、振り返る。

蟹かイワトビペンギンを思わせるイビツな頭。

しかもオレンジのメッシュが入っている。

校則には、煩いと名高いサテライト女子短期大学付属高校でよくそんな頭が許されているなぁ。

と関心させられてしまう。

「何の用なの?」

大きな蒼い瞳の可愛い少女。

しかしその可愛さに心奪われていると痛い目を見る羽目に・・・。

遊星は、この地域では名の通ったデュエリスト。

彼女を手に入れ様と挑んで来た男達は、悉く地面に膝間づく。

そして彼女の持つ『クイーン』の称号を手に入れ様と挑んできた女達も悉く地面に膝間づく。

別に彼等が弱いワケでは、無い。ただ運が無いのだ。

そして遊星自身が強いのだろう。

だが強い相手でも負ける事がある。

それが今日・・・

「俺とデュエルの勝負をしろ」

背の高い金髪の男。

後には、数人のイカツイ男達が控えている。

大方この金髪男の部下みたいなモノだなんだろう。

「断るわ」

「何だと?」

「今 デュエルをしたい気分じゃないの。それじゃ〜。」

遊星は、片手をヒラヒラとさせ踵を返し帰宅しようとする。

「お前それでもデュエリストか?」

「そうよ。これでもデュエリストよ。」

「だったら・・・」

「デュエリストと言えど生身の人間なの体調が良くなかったり気分が乗らなかったりするもの。

何時も万全なんて言ってられない。明日なら勝負してあげる。」

だからこのまま帰して欲しいと言う遊星。

だが金髪の男は、それだけで納得していない。

寧ろ今日、遊星が負ける事が解っていた。

彼女は、月に一度何故か同じ日に負けてしまう。

そしてそれを知っているから遊星は、その日にデュエルをするのを避ける。

遊星が負けるのは、決まって両親の月命日の日。

まるで命日の日は、家族揃って・・・とでも言うかのように。

今日を逃せば来月までお預け。

そこまで待つつもりなんて毛頭に無い。

寧ろ遊星に勝ち彼女を手中に納める為にこの日を選んだ。

「お前が俺とデュエルをしないと言うのなら仕方が無い。」

諦めてくれたのだと安心した様な雰囲気の遊星。

だが諦めたのでは、無い事が直に解った。

 

「きゃ!!嫌!離して!!」

自分の傍に居た親友の声。

「ラリー!!ちょっと何するの?彼女を離して」

金髪の男の部下に捕まってしまった。

「お前が俺とデュエルをすると言うのなら解放してやる。」

「それは・・・」

逡巡してしまう。

本来なら親友を助ける為ここでデュエルを受けるのが当然なのだろう。

しかし相手の本意が解らないデュエル。

このデュエルを受けたからと言って本当に親友を帰してくれるのか解らない。

一先ず相手に彼女を解放させる約束を取りつけないといけない。

彼が本物デュエリストならの話しだが・・・。

「どうした?何を考える。」

「一つ約束して。」

「何だ?」

「貴方とのデュエルを受ける代わりにラリーを・・・友達を解放して。」

「アンティ・・・か。そのアンティは、却下だ。」

「どうして!!」

蒼い瞳を見開き遊星は、金髪の男を睨み付ける。

「元々お前が素直に俺からのデュエルを受け入れていれば人質なんて取るつもりなんて無かったからだ。

それに俺が望むモノは、お前自身だ。俺が勝てばお前自身を俺によこせ。」

「・・・じゃぁ・・・私が勝ったらラリーを・・・」

「それは、却下だと言った筈。他のを言え。」

「クッ・・・だったら私達の前に姿を見せないと言うのは、いいのか・・・。」

「かまわない。」

屈辱的だと思った。

親友をアンティに賭けてしまうなんて・・・まるで自分が下衆の様に思えた。

「付いて来い。」

男の言葉に逆らう事なんて出来ない。

今は、ラリーを救いたい。

数人の男を隔てた先にラリーは、居ると言うのに話しをする事も出来ない。

 

 

連れてこられたのは廃屋。

デュエルをするには、充分な広さがあった。

(パパ・・・ママ・・・ゴメンなさい。今日は、早く帰れそうにも無い。そして私に力を・・・勝利を与えて・・・)

「ラリーを解放して!!」

「いいだろう。」

男が片手を上げるとラリーの両腕を掴んでいた男達は、ラリーをすんなりと解放した。

「遊星!!」

「ラリー大丈夫?」

「私は、平気よ。それより遊星・・・」

「解ってる・・・もしかしたら勝てないかもしれない。」

きっと自分の事を調べた上でこの日を選んだのだろう。

もっと冷静になっていれば・・・。

「もういいか?」

痺れを切らせたのだろう男が声を掛けて来る。

「いいわ。」

カバンから取り出されるデュエルディスク。

それが低音を響かせ起動する。

 

「「デュエル!!」」

 


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