秘め始め-2-
チッチッ・・・
アナログな音を経てて時計の秒針が動く。
アナログ式とは、言えこの時計は電波時計。
時計が刻む音は、シティの時計と何等変りは無い。
ジャックによって深められたキスに思わず酔っていると急に離され
「HAPPY NEW YEAR!!」
嬉しそうに言われる。
間近で言われると恥かしいが
「HAPPY NEW YEAR!!」
と言い返してやる。
(多分 今のオレの顔は、真っ赤だろう・・・)
そう思う程に恥かしく嬉しい。
それに部屋の中は、薄暗いので顔の色までは解らないと思う。
だが恥かしい事には、変りは無い。
その恥かしさを隠すかの様に遊星は、軽くジャックの鼻先を噛んでみた。
何時もならそんな甘い事なんてしない遊星から仕掛けられ内心ドキドキしているジャック。
だからする予定じゃなかったのに・・・
「!!ジャック」
「お前が悪い。この俺を挑発したのだ。しっかり相手をして貰うぞ。」
遊星を抱きしめていた手は、下の方にズレて行き先程までジャックを受け入れていた蕾を嬲り出す。
「アノ後と言う事であってすんなりと口を開くな。このままだと難無く入る事が出来る。」
そう言うとジャックは、己が勃起したモノの先端を蕾に擦る。
「ああぁ・・・」
未だ挿入されたワケでも無いのに擦られるモノに感じてしまう。
(ああ・・・欲しい・・・)
遊星は、上半身をゆっくりと起こすとジワジワとジャックのモノを受け入れる。
中を擦る大きいモノに眩暈を感じてしまう。
このままイってしまいたい。
(このままイクなんて出来ない・・・もっとジャックを感じたい・・・)
そう思い自ら腰を上下に動かし始めるとそれを合図にジャックが下から突き上げて来る。
身を揺らし艶めかしい声を上げる遊星にジャックの理性の糸が切れてしまう。
+++
どれだけ行為に及んだ事か。
遊星が気が失う事で終わらせる事が出来た。
腕に愛しい者を抱きしめジャックも眠りに身を委ねる。
どれだけ眠ったのか・・・寝る前に腕に掛かっていた重みが消えている。
ハッキリとしない意識の中でジャックは、隣で寝ている筈の相手を探すがシーツを掠る音しか聞えてこない。
しかもシーツが冷えている。
まるで誰も居なかったかの様に・・・
慌てて目覚めるが居た筈の相手が本当に居ない。
室内を見渡しても見当たらない。
居た事が夢かの様に思えたがシーツの乱れからにして居た事には、変り無いし遊星の快楽によって上げる声が
陶酔した表情が心に耳にこびリ着いている。
それに躰が覚えているのだ。
心ココに在らず状態で居ると微かに匂って来る。
耳を澄ませば聞えて来る。
気配を探れば誰かが居る事が感じ取れる。
ジャックは、急いでズボンを穿くとリビングの方へと行く。
そこには、自分と同じ様に上半身裸でズボン姿の遊星が食事の用意をしていた。
(遊星・・・居たのか・・・)
遊星の姿を見止め安堵の表情を浮かべるとジャックの姿に気が付いたのか遊星が
「何て顔をしているんだ?それより早く座ったらどうだ?」
何て顔・・・?遊星が言ってる言葉の意味が理解出来ない。
だが遊星が言う様にソファに腰掛ける。
テーブルの上には、昨日遊星が持って来た重箱が置かれている。
蓋を開けて見てみたいがそれでは、まるで子供の様だから見たい気持ちを押える。
雑煮の椀を2個持って入って来る遊星。
「そんなに見たいなら見ればイイのに」
「フン・・・俺は、子供では無い。」
ソッポを向くジャックが何故か可愛く感じてしまう。
(プライドの高いこの男の拗ねた態度を見れるのは、オレだけなんだろうな)
何処か得した様な気持ちになる。
「ジャックの所にジュースでも有るのか?」
「ジュース?」
「ああ、御屠蘇の変りにでも飲もうと思ってな」
「御屠蘇にジュースだと!!」
「オレは、未成年だし酒には、弱いからな」
「俺は、お前と飲みたい・・・」
「ダメ。二日酔いは、ゴメンだからな」
「ぐ・・・」
「それより食事にしよう」
そう言って2段重の蓋を開けて上下に別けてテーブルに置く。
1段目に入っている料理にジャックの顔は、驚きそして不機嫌に変わって行く。
そこに入っていたのは、決してサテライトで入手出来ないであろう食材で作られた御節・・・。
「ゆう・・・」
「シティって何でも揃うんだな」
「ゆうせ・・・」
「お前の秘書だったけ?狭霧って人・・・彼女が食材と調味料とレシピを送ってくれたんだ。」
ジャックが何か言いかけるがそれを遊星は、遮った。彼が何を言いたいのかが解ったから。
しかし言いたい事を遮られて苛々してしまっているジャックに
「狭霧は、一切作ってない!さっきも言ったが彼女は、食材と調味料とレシピを送ってくれただけだ。
それを元にオレが作ったんだ。何か文句でも有るのか?」
遊星に凄まれてジャックは、グッと息を飲んでしまう。
幾ら食材等がシティから来ていても料理を作ったのが遊星なのだから文句が言えない。
それよりも自分の為に料理をしている遊星の姿を思い浮かべると嬉しさが込み上げて来る。
「・・・仕方がない・・・」
憮然とした態度で居ると遊星がジャクの隣に座り
「機嫌を直せ。ほら口を開けろ」
「・・・」
口元にあてがわれる料理。
遊星が食べさせてくれる様なので思わず口を開けた。
口に入れられたのは、甘い栗金団。
思わず綻んでしまう。
「旨いか?」
「ああ・・・旨い」
食べさせて欲しく口を開け遊星に催促をすると
「仕方がないな」
と苦笑されながらも食べさせてもらう。
レシピ通りに作ったのだろうがシティで食べてた御節とは、味が異なる。
2段目の御節は、重箱に入ったサンドイッチだった。
しかも柔らかい食パンでは無く堅いロングタイプのフランスパンで作ったサンドイッチ。
このパンならサテライトでも簡単に手に入る食材だ。
「サテライトならでは、でいいだろう?」
「ああ・・・サテライトらしいな」
サンドイッチに手を伸ばし一口食べる。
サテライトに戻って来た実感が湧いて来る。
サテライトに戻って来たと言うのに何時も心の何処かで戻って来た実感を得られる事が無かった。
どうしてサンドイッチで?と思われるかもしれないがジャック自身にだって解らない。
遊星が作った御節や御雑煮に舌鼓を打ちながら全てを堪能した。
まぁ全部食べ切ったワケでは、無いのだが・・・
この後は、テーブルデュエルを何試合か行い寝室に移動した後も簡単なゲームで遊んだ。
昨晩遊星が言っていた微睡の中で過ごす1日になったのかジャックには、解らない。
だが何も言って来ないと言う事は、彼の望んだ新年を迎えられたのかもしれない。
ジャックは、遊星を自分の躰の上に乗せながら
「・・・」
耳元で囁くと顔を真っ赤にしながら
「ジャック・・・それは・・・シグナーとしてこれから先の事もあるんだ・・・お前の期待に応えられない・・・」
「今すぐにとは、言わない。全ての出来事が片付いてからで構わない。」
「いいのか?シティに戻れなくなるかもしれないんだぞ?」
「お前が居る場所が俺の居場所だ。」
そう言いながらジャックは、遊星の鼻を摘まむ。
耳元で囁かれたのは「一緒に住もう」だった。
遊星にしてみれば嬉しい言葉だったのだが自分達に架せられた試練にどう対応していいのか解らない。
ジャックや仲間に迷惑を掛けるかもしれない・・・そう思うとジャックからの申し出を素直に喜べない。
自分と一緒に居たら彼の経歴にキズが付くかもしれない。
彼の経歴には、サテライト出身だと言う事が記載されていない。
彼は、シティ生まれのシティ育ちとされているのだ。
それに遊星の顔には、マーカーが施されている以上シティに住む事が出来ない。
それなのにジャックは、自分と一緒に居る事を望んでくれた。
彼の気持ちに応えたいが年内に応えられるかなんて解らないだから・・・
「年内に・・・とは、言えないけどオレもお前と一緒に居たい。」
とだけ言う。
「一緒に居たい・・・では、無い一緒に住むんだ。それが何年先になろうと構わない。俺は、お前と一緒に住める
日を待つから」
「ああ・・・そうだな・・・一緒に・・・何時かは・・・」
このプライドの高い男にそんな事を言われて嬉しくないなんて言えないし思えない。
遊星は、ジャックにしがみ付きそして彼にキスをする。
遊星からのキスは、ジャックによって深められる。
その後は、互いに求め合うままに行為に没頭する。
遊星が望んでいた2日に行う筈だった秘め始め・・・。
それが予定より早くなっても構わない。
今は、求めるがまま求められるまま行為に没頭したい。
それに年が明けてから行った全てが『ひめ始め』なのだから・・・。
どんな事が起きてもこの温もりを与えてくれる相手を失わない様に・・・
強く有り続けたい・・・