捕われて-24-


昼食を終えリビングに置かれているテレビを見ていた。

だがその場に遊星は、居ない。

食後の片付けに荷物の片付けと風呂場の掃除をしているのだ。

ジャ〜・・・。

浴槽を洗い終えシャワーの水で洗い流す。

「これでO・K。後は、夕方お湯を溜めれば温かいお風呂に入れる。」

満足気に風呂場から出て来る。

浴室の換気扇を回す事も忘れない。

「遊星」

「きゃっ!!も〜吃驚させないでよ〜」

浴室から出て来た遊星に声を掛けると油断していたのか遊星が驚きの声を上げる。

少し頬を膨らませジャックを見上げる遊星が余りにも可愛い。

思わずジャックの顔が緩んでしまうが小さく頭を振って自分の目的を果たす事にした。

「どうしたの・・・って・・・なっ何!!」

急に腕を掴まれ抱き寄せられる遊星。

「はっ離して・・・」

身を捩りジャックの腕から逃れ様と試みるが逃れ様とすればする程ジャックの腕が強く遊星が抵抗しない様に

強く抱きしめる。

遊星が抵抗を諦めジャックの背に腕を回すまで強く抱きしめられた。

「お前、俺の元から離れるつもりなのか?」

「!!」

「図星か・・・。何度同じ事を言わせる?俺がお前を手放す筈も無かろう。お前は、俺の女だ。俺の許可無く

俺の傍を離れる事なんて許される筈が無い。」

「でも・・・私が貴方の傍に居たら又、危険な事に巻き込まれるかもしれない。私は、強くなりたい・・・。

誰も危険に晒さないだけの力を身に着けたい・・・」

「俺の傍に居てもそれは、可能な筈だ。」

「貴方に甘えてしまうかもしれない。私は、守られるだけなのは嫌なの」

「誰がお前を守ってやると言った?お前は、俺の傍に居ればいい。如いて言うなら俺の隣に立ち俺の見ている

モノをお前も見ていればいい。俺達は、対等だ。お前がピンチなる俺は、助けるが俺がピンチならお前が助け

ろ。」

「私は、デュエルで貴方に負けたのよ。それに鬼柳の様なデュエルなんて出来ない。」

「お前のスタイルでデュエルをすればいい。誰かの真似なんてする必要は、無い。それにあの時の俺とのデュエル

まともな方法でやれば俺は、負けていた。お前が勝てない日を選んだんだ。」

「そうね・・・確かにあの日私にとって勝てる日じゃない・・・でもその日を選ばれたとしても負けた言い訳には、なら

ない。私は、自分自身を甘やかしていただけに過ぎない。貴方とのデュエルで気付かされた。」

両親の月命日は、遊星から勝利を奪う日だった。

彼女は、月命日に勝った事が無かった。それ故に月命日にデュエルをする事は、しなかった。

「俺の傍でもっともっといろんな事に気付けばいい。俺は、お前を手放す気なんて毛頭に無いのだからな。」

そう言うとジャックは、遊星の顎に手をかけ上向かせると口付けをする。

抵抗する事無くジャックからの口付けを受け入れる遊星。

「カレーの味がする。」

「さっきカレー食べたから・・・」

甘くて気持ち良くて酔いしてれしまう。

キスに遊星が酔っている間にジャックは、遊星の顔半分を覆っていた包帯を取り除く。

その事に気が付いた遊星は、ジャックのキスから逃れ彼を見上げる。

「やはりお前の碧眼は、綺麗だ。」

そう言って瞼の上に落される啄む様なキス。

鬼柳によって着けられた傷は、綺麗に癒えていたが目許から顎にかけて太いラインみたいなのが残っていた。

どうしても消す事が出来なかった鉄の痕。

それでも醜い傷では、無くファッションメイクだと言えばそれで通用するかもしれない。

クロウ辺りが喜んで自分のファッションに取り入れる可能性が有るだろう。

「こんな醜い私が貴方の傍に居たら貴方やチームのイメージがダウンしてしまうかもしれないね。」

何処か寂しそうな顔。

「イメージダウンだと?そんな事有りえんな。寧ろ仲間内で流行るかもしれんがな。」

「こんな顔が?」

「お前は、自分の顔を見たのか?」

「昨日見たわ。左の目許から顎にかけて太いオレンジのラインが入っている・・・」

遊星は、それが『醜い』と言う。

「俺にしてみればお前が俺のモノだと言う証にしか見えん。それにそんな事気にする事も無くなるだろう。」

「?」

何故気にしなくて良いと言うのだろう?

女の子にとって顔の傷は、耐えがたい苦痛だと言うのに。

遊星は、ジャックの言っている意味が解らなかった。

「それより、もう俺の傍を離れ様とするな。そもそも離れる理由なんてないのだからな。」

「ジャック・・・」

「お前があの時言った言葉を忘れていまい。」

「あの時の言葉・・・」

「お前が俺の事を『好き』だと言った言葉だ。」

忘れる筈が無い。

自分にとって一世一大の告白なのだから。

今思えば恥ずかしい事を言ったと思う。

「忘れてない・・・」

「だったら離れて居る必要が無い。俺の傍に居ろ。」

本当にこの男は、自分から離れるつもりなんて毛頭に無いのだろう。

尊大な物言いだが何故か不愉快には、感じない。

寧ろ心地良い。

彼になら自分を・・・自分自身を捧げても構わないと思える。

離れる事が出来ないのなら彼の傍に居て自分も強くなろう。

「・・・迷わない・・・」

「ん?何か言ったか?」

余りにも小さく呟いた決意。

「ううん。何も・・・」

 

 

たった一人の人に捕われた気持ち。

彼になら捕われても構わない。

だって彼自身も私に捕われているのだから・・・


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