拾いモノ-1-


雨降る中、犬を一匹拾った。

 

 

「こら!!こんな所で躰を震わせるな!!」

連れて来られた犬。

濡れているのが否なのか犬は、来ていきなり身を震わせ毛に付いていた滴を振り飛ばす。

「一先ずその汚い身なりを綺麗にする為にシャワーを浴びてもらうからな。」

そう言うと嫌がるのかと思いきや犬は、鼻をクンクンさせて自分から風呂場へと向かった。

どうやら水は、苦手では無い様だ。

 

犬用のボディーソープなんて無いから人間用ので洗う。

洗われるのが気持ちいいのか犬は、大人しく泡まみれになっている。

泡を温い温度で流すと脱衣所に出てバスタオルで拭く。

さっき注意された事を覚えているのか大人しく拭かれている。

綺麗なった犬は、見事なまでの金色の毛並みを見せる。

「やっぱりお前ってカッコイイ犬だったんだな。」

この犬の種類は『狼』。

金色の狼なんて珍しい。

だが遊星にしてみれば狼も只の犬でしかない。

「そうだ。お前に餌をあげないとな。でも・・・犬用の餌なんて置いてないし・・・」

元々ペットそのものを飼っていない。

冷蔵庫を開けるとパックに入ったササミがあった。

遊星は、そのササミを簡単に湯通しして細かく裂いてから皿に盛り狼の前に差し出す。

別に生でも問題ないのだが今まで犬を含めペットを飼った事が無いので飼育方法が解らないのだ。

味付けは、一切していない。

ササミを少しの間眺めていた狼は、それをゆっくりと食べだした。

「明日ドッグフード買って来るから今日は、それで我慢してくれ。」

そう言うと自分は、戸棚から乾麺と鍋を1個取り出しラーメンを作りだした。

 

 

 

 

シャワーを浴び終え濡れた髪をタオルで拭いながら狼の居るリビングに来た遊星。

狼は、ソファーの上でその身を優雅に横たえている。

狼の傍に座ると

「そう言えばお前にオレの名前言ってなかったな。オレは、遊星って言うんだよろしくな。」

狼に自己紹介してどうするんだ?って聞こえて来そうだ。

「お前の名前・・・そうだジャック!!ジャックって言うのは、どうだ?恰好良い名前だと思うんだけど。」

狼は、大きな口を開けアクビをするだけ。

「気に入らないのか?結構恰好良い名前だと思ったんだけど・・・仕方が無い明日考えるとしよう。

そうだジャック好きなだけココに居て良いからな。この家に居るのは、オレと父さんだけだし、その父さんも暫く帰って

来ないからな」

そう言うと遊星は、立ち上がり何処かへ行こうとしている。

ジャックと一応名付けられた狼は、遊星の後を付いて行く。

遊星の行動が気になるのだろうか?

向かった先は、遊星の部屋。

遊星は、何の違和感も無く極当たり前の様にジャックを迎え入れる。

ジャックは、何の戸惑いも無くベッドに乗るとそのまま寝そべる。

「ジャック そこは、オレのベッドだぞ。」

その場から退こうとしないジャックに遊星は、呆れてしまう。

「もう少し端の方に行ってくれないか?これでは、オレが寝れない。」

その声に反応しジャックは、少し端により遊星が寝るだけのスペースを空ける。

(こいつ言葉を理解しているんじゃ・・・まさか・・・気の所為だよな。)

ジャックが空けてくれたスペースのシーツを捲り身を横たえ眠りにつく。

 

スースーと聞こえて来る寝息。

ジャックは、遊星の寝顔を覗き込みながら柔らかい頬を舐める。

(コイツの臭いあの男に似ている。寧ろこの歪な髪型・・・。暫く様子をみるか?それとも・・・しかしコイツは、良い味

をしている。)

ジャックは、誰と遊星を重ねているのか・・・。

(父子家庭か・・・曰く有りの様だな。)

ジャック自身今日1日いろんな事が有ったのでそれ以上考える事が出来ず遊星の隣で眠りについた。


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