07.名前
「うっ・・・ここは・・・」
男は、ICUのベットの上で意識を取り戻し
その事を待合室で聞いた弟は、
急ぎ兄の下へ行き涙いっぱいに兄に抱きついた。

それから1ヶ月-
男は、弟の勧めで自宅で仕事をしていた。
ある日の夜
自室のベランダに出て夜空を眺めていた

あれから1ヶ月が経つがあの出来事は、
夢だったのだろうか?
それにしては何て印象の強い夢だったのだろうか
夢でもいいもう一度会いたい・・・
今度は、抱きしめたい・・・
そして・・・

そこまで空想して思わず

俺は、一体何を考えていたんだ!!

焦っていると
「よう!元気になったか?」
どこからともなく声がして来た。
男は、周りを見渡すと直ぐ傍の手摺りに夢に見た
黒衣の天使が座っていた。
「お前の回復を待ってやったんだぜ
ゲームの相手してくれるんだろ?」
小首をかしげながら笑顔で聞いてくる黒衣の天使に
男は、眼を奪われながら
「夢では、無かったのか?貴様は、実在しているのか?」

何て綺麗な天使なんだ・・・
何とかして傍に置いて置きたい
あの紅い瞳に映っていたい。

そう思っていると
「俺は、実在してるぜ!!お前の目の前にちゃんといるだろ!」
少しムッとした表情・・・
天使は、凛とした姿で優しい表情だとばかり思っていたが
案外、人間に近い感情を持っているみたいだ
「フン・・・そうだな俺の目の前にいるからしっかり
実在しているんだろう」
そう言いながらこの天使を引き止める方法を考えた。
「ここで話しているのも変だから内に入るぞ」
「おう!」
天使は、男の後に続いて室内に入ると
「そう言えば貴様 名前は、何て言うんだ?」
天使は、室内をキョロキョロしながら
「尋ねた方が先に名乗るのが礼儀だぜ」
一向に男の方を見ようとしない
男は、やや不愉快に思いながら
「俺の名は、海馬瀬人だ」
「俺の名は、遊戯だぜ」
海馬が名乗ると直ぐに遊戯も名乗った。
「遊戯・・・」
海馬が呟くように遊戯の名を言うと遊戯は、急に胸苦しさと嬉しさ
が込み上げて来た。
(何かセトに呼ばれた感じがした・・・もうこの世に居ないのに・・・)
「ところで遊戯 その翼は、隠す事は出来ないのか?
それとゲームは、夜明けにしてはイケないのか?」
「えっ・・・隠す事出来るぜ?お前がそう言うのなら
ゲームは別に明日でも構わないぜ?」
「そうか でわ明日朝にゲームをしようでは、ないか」
「お前・・・あの・・・その・・・仕事とかしなくていいのか?」
恐る恐る聞いてくる遊戯に海馬は、笑顔で
「たまに生き抜きをせんと又体調を崩しては敵わん
明日は、休みを取る」
その言葉に遊戯は、満面に笑顔を見せながらしっかり翼を隠す。
「楽しみだぜ!!」
「では、もう寝るぞ」
そう言いながら寝室の方に遊戯を促すが遊戯は、ソファの方に行き
「俺ここで寝るぜ」
言うや否やマントを外しソファに横になる
「そんな所でねな・・・・」
ソファに横たわる遊戯を見て
(もう寝たのか?それにしても何故ソファの上で丸くなって寝てい
るのだ?)
ソファの傍に膝まつき遊戯の髪を撫で上げながら何とも言えない
思いに胸を暖めていた。
己の気持ちに今なお気付く事無く・・・

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