- 瀬人が意識を取り戻して数日が経ち何とか動けるようになった頃
- 自分の身の回りの世話をしてくれていたユキに今迄疑問に思った事を尋ねた。
- 「ユキ 貴様には、親兄弟は居らぬのか?」
- 何故そんな事が疑問だったのか・・・
- それは、動けないとは言え瀬人の身の回りの世話の為にユキは山小屋に泊まり込んでいたから
- もし親兄弟が居たのなら泊まり込みでの世話は反対するだろう
- 通いでも娘1人では、なかなか行かせないだろうし
- その質問に対しユキは、身体を強張らせながら
- 「オレ 幼い頃に山の中で捨てられて居た所を姉さんに拾われたんだ・・・
- でもその姉さんも数年前に殺されてオレ1人になったんだ・・・」
- 小さく擦れて行く声に瀬人は、ユキが泣くのでは・・・と思ったが
- 「こんな時代だ・・・力の無い者は力の有る者に殺されても仕方が無いとは言えば仕方が無い・・・
- それが道楽によるモノだとしてもオレ達には、抵抗する事は許されない」
- ユキの言葉に瀬人は、胸を締め付けられる思いがした。
- 何故・・・ユキの言葉にこんな思いをする?
- ユキの言うように弱者は、強者の餌食になって当然だろう
- そうなればユキは、どうなる・・・
- ユキは強者によって嬲り者にされ飽きたら殺される運命なのか?
- そんな瀬人を他所にユキは
- 「オレ少し村に戻ってくるぜ。昼頃に戻ってくるから」
- そう言い残し山小屋を後にした。
- 「お〜いユキ」
- 村に戻ってきたユキに
- 「今川で魚を釣ったんだ。よかったらユキにやるぜ」
- 「克也・・・いいのか?」
- 「いいって・・・山小屋に居るヤツにも食わせてやれよ」
- 「ありがとう お言葉に甘えて頂いておくぜ」
- 頬を染めながら礼を言うユキに克也は
- 「別にいいてことよ」
- 照れながら鼻の頭をかきユキに魚を手渡していると
- 「ユキ ここが貴様が住んでいる村なのか?」
- ユキの背後から聞き慣れた声が
- 「あ〜?てめぇ誰だ?ユキの名前を気安く呼ぶなよ」
- 「瀬人どうしてココに?昼頃に戻るって言っただろ?」
- ユキの言葉に克也は
- 「えっ!こいつがこの前ユキが獣道で見つけたってヤツなのか?」
- 「ああそうだぜ」
- 克也は、瀬人の方を向くと
- 「俺は克也って言うんだ宜しくな」
- 名乗ったが瀬人は、克也が甲斐甲斐しくユキの肩を抱き寄せる行動が不愉快に思ったらしく
- 「ユキ山小屋に戻るぞ」
- と言うや否やユキを克也から引き離し自分の腕の中に・・・
- 「瀬人!克也が名乗ったのに何故自分の名を名乗らない?」
- 「名乗る名乗らないは、俺の勝手だ」
- そう言うと歩き出しユキは克也に振り向くと
- 「克也すまない!」
- とだけ言い残し瀬人と山小屋に戻って行った。
-
- 山小屋に戻ると
- 「あの男は貴様と恋仲なのか?」
- 「なっ何急に変なこと言ってるんだ!!」
- 頬を染めながら否定するユキ・・・
- しかしながらその行動は、瀬人を苛立たせ
- 「貴様とあの男はどういう関係なんだ?」
- 声を荒げ詰め寄る
- 「オレと克也は、幼馴染だ!」
- 詰め寄られる事に恐怖を感じ後退り壁に背が着いてしまい
- どうしようもなくなって
- 「何でそんな事 聞くんだ?」
- と弱気になって聞くと
- 「あの男は、貴様に好意を抱いている様だったからな・・・」
- それに貴様も・・・
- 「瀬人・・・」
- 確かに克也が自分に好意を抱いている事は、知っている
- 何度か思いを打ち明けられていたから
- しかしその都度「すまない」って断って来た。
- 「ユキ・・・」
- 瀬人は、ユキの名前を囁きながら優しく顔を撫でると
- 「俺の元に来い」
- 急な告白・・・心音が煩い程高鳴る・・・体温が上がる・・・
-
- ユキは、目を見開きながら頬を染めている
- 瀬人は、自分の言葉に驚いてはいたが自分の中にある何かが言わせている事に気が付き
- それが言葉になって出て来たのだと実感した。
- 「オレの事何も知らないのに何で『俺の元に来い』なんて言えるんだ?」
- 「俺は、貴様に魅かれているからだ・・・それにどんな理由があれ男と一緒に暮らすって言う事は貴様が
- 相手に好意を抱いていると思われても仕方がないんだぞ」
- ユキの顔の横に瀬人の両手が置かれ近づいてくる瀬人の顔・・・
- オレが瀬人に好意を抱いてる?
- そんな筈は、無い・・・
- だってオレ達御互いの事何も知らない
- だったら何故瀬人の告白を嬉しいと感じたのか
- 幼馴染の克也からの告白も嬉しかったがそれ以上に瀬人からの
- 告白は、もっと嬉しかった。
- 「ユキ何故逃げない?何故抵抗しない?本当にキスをするぞ」
- 瀬人の言葉にユキは、
- 「何故逃げないのか何故抵抗しないのかオレには、判らない・・・」
- とだけ言うと近づいてくる瀬人の唇を受け止めていた。
何か既に荒筋から離れて行っている様な気がする・・・
この後どうなるのか考え直さないと(・_・;)