願い(遊戯) |
幾千幾万の星星に願いを・・・ どうかあの人に逢えます様に・・・ あの人の願いが叶いますように・・・ オレが現世に居た頃 相棒が教えてくれた。 7月7日は、七夕と言って離れ離れになっている恋人 同士が逢える日だと・・・ そして願い事を短冊って言う細長い紙に書いて笹に付け るのだと・・・ 冥界には、短冊や笹なんて無い もちろん七夕なんて習慣は、無い 海馬に逢いたい・・・ 逢っていろんな話しがしたい デュエルがしたい 相棒や城之内君達にだって逢いたい しかしそんな行事に興味が無い海馬が今日7月7日が 七夕だなんて覚えているのだろうか? 覚えていたとしてもどうする事も出来ない 彼は、生者であり自分は、死者・・・ 住む世界が違うのだ・・・ 3階建ての王宮のバルコニーから物思いに耽ったまま 外を見ていると 「アテム様如何なされました?」 「あっセト・・・いや何でも無いぜ」 眼を伏せるアテムにセトは、 貴方は、嘘を吐けないお方だ きっと現世に居る海馬瀬人の事を想っていたのだろう・・・ 胸に突き刺さる痛み・・・ 今のアテムは、以前のアテムでは無い 自分を慕い想ってくれていた者では無い 同じ姿形なのに 同じ魂なのに その心は、別の男に向けられている・・・ 「アテム様私に隠し事は、なさらないで下さい 私は、貴方様のお力になりたいのです」 優しいセト・・・ オレは、お前に残酷な事をしてしまいそうだ・・・ オレの我侭をお前に言ってしまいそうだ・・・ 「隠し事なんて無いぜ」 「いいえ貴方様は、隠し事をしています 私には、わかりますよ」 優しい笑顔・・・ オレの心がセトに無い事をセト自身気が付いている だからセトは、オレに対し敬語を使う 「現世では、7月7日は七夕だそうですね? 何でも離れ離れの恋人が逢う事が出来る日・・・ そうですね?」 何故セトは、その事を知っているのだ!? 自分は、何も言ってないのに・・・ 「我々の同胞が現世に居るのをお忘れか?」 同胞?アイシスの魂の一部が転生したイシズの事か? と思ったが 「マハードの事ですよ。 彼の者の魂の欠片は、カーになり現世で貴方様が器と してその魂を宿していた者の傍にあります。」 以心伝心・・・ブラック・マジシャンが相棒の傍で見聞きし た事は、マハードには筒抜けなのだ。 まさかそこから七夕の事がバレ様とは思いもしなかった。 「現世での貴方様の御活躍によりホルアクティ様から アテム様に褒美が出ています。」 「褒美?」 「はい。少々手荒な事をさせていただきますが許して下 さい」 そう言ってセトは、アテムを抱き抱えるとそのままバル コニーから落としたのだ。 遠ざかるセト・・・ このまま地面にぶつかれば相当痛い筈・・・ しかしセトが遠ざかって行くだけで何時まで経っても地面 に到着しない まるで異次元に落ちたかの様に・・・ 落ちた・・・? 否正確に言うと落とされた。 この時 気が付いたオレに出された「褒美」が何なのか きっとセトがホルアクティや父上や他の神官達を説得して くれたのだろう・・・ 「セト・・・少し手荒いのでわ?」 「折角 貴殿がアテム様の名を騙って海馬と言う男に書 状を出したと言うのに」 「フン・・・これでいいのだ。アテム様が幸せになられるの なら」 アテムよ幸せになれ 貴様があの男に泣かされる様な事になれば俺は迷わず 今度こそ貴様を俺の者にする・・・ |