- 「うん・・・」
- 浮上してくる意識の中
- 微かに聞えてくる声・・・
- 「・・・・もう少し・・・ようね・・・」
- 重い目蓋を開けるとボヤケタ視界
- 自分が今何処に居るのか把握出来ない
- 「気が付いた?」
- 見慣れない顔・・・
-
- この人は、誰?
-
- 躰を起こそうとするとつかさず差し伸べられる腕
- 「もう少し横になっていないと駄目よ」
- 「ここは?」
- 「ここは、シャイン・キングダムよ」
- その言葉に蒼い瞳を見開き怯えだすキサラ
- 「私は、人質になったのですか?」
- どうしてココにいるのか判らないでいるキサラ
- 杏子は、優しい笑みを浮かべて
- 「いいえ・・・貴女は人質では無いわ
- そうね・・・むしろ客人よ
- でも今は怪我人かしら?」
- だから寝てなさい・・・と言う杏子
- そんな言葉が信じられないキサラは、
- 「シャイン・キングダムは、カイバ帝国が進撃している国
- その様な言葉は、信じられません」
- 「信じる信じないは、貴女次第よ
- 私があまり如何こう言う事では、無いもの」
- 信じて貰えない寂しさからか翳る杏子の表情にキサラは、
- 少し罪悪感を感じていた。
- しかし皇族が敵国に連れて来られると言う事は、人質か奴隷か
- それしか無い・・・
- 否 皇女なら敵国に対する献上品としてか・・・
-
- 杏子が水の入った陶器を持って部屋を出て行くのを見計らって
- キサラは、脱出しようとした。
- しかし一度も来た事の無い城・・・
- 城内の配置が全く解らない
- 自国の忍が居たら連れ出してもらえるのに
- そう思えどココは、敵国そう簡単に自国の忍に逢えるワケが無いし
- 自分は、自国の忍の顔を知らないから逢っても敵なのか見方なのか
- 判断しかねない
- 城内を錯綜していると一室から聞えて来る声
- 「イシズ様 薬草が不足してまいりました。
- 城内に残っている忍衆の方々に今必要な薬草を摘んで来ていただきたいのです」
- 「安心しなさい 既に薬草摘みに出てくれていますよ
- それよりまだまだ怪我人が運ばれて来ます
- 医師団に包帯の確保ともし足りないようであれば城内の綺麗なシーツで包帯の代用
- をするように伝えなさい」
- 「城内のシーツをですか?」
- 「シーツの替えは幾等でもありますが命の替えは、無いのですよ」
- 「しかし・・・」
- 言いよどむ女の部下に
- 「御頭がこの場に居たなら私と同じ事を言ったと思いますよ」
- 「御頭・・・解りましたイシズ様」
- 女は、何か吹っ切れた様にイシズと呼ばれていた女の下から離れていった。
- 「凄いね さっきの人
- 御頭の事出したら何か吹っ切れた様な顔になった。」
- 聞き覚えの在る少年の声・・・
- 「御頭は、私達忍衆にとって神聖なお方ですから」
- 「オレあの御頭好きだぜ」
- 「どうしてです?」
- 「だって敵国なのにカイバ帝国の人を助けに行ってくれてるし
- 現に怪我人だって搬送されている」
- ハーピィズ・ペット竜の下にやってく助け出された人々・・・
- ハーピィズ・ペット竜の背に重傷者を乗せシャダやアイシスの部下が連れてくる
- しかしあまりの人数にハーピィズ・ペット竜だけでは対応しきれず砦をまもる翼竜とレッド・アイズ・ブッラクドラゴン
- も手伝いの為に借り出された。
- しかし部下達に遊戯の事を尋ねても誰一人知らない状態
- 心配でならない
- 「そこに居るのは誰です」
- 先程から感じる人の気配・・・
- 何か行動を移すのかどうか見極めようとしたが一向にその気配でさえない
- 何時までもそのままと行かず・・・
- いきなり声を掛けられたキサラは、立ち聞きをした事が悪い事と思ったのかその場を立ち去ろうとしたが
- 「キサラ様!」
- 声をかけられてしまい立ち去る事が出来なかった。
- そして声を掛けて来た少年の方を見ると
- 「モクバ!!如何してここに??」
- 「オレを護ってくれていたモンスターがここに連れて来てくれたんだぜ」
- 鼻の頭を擦りながら言うと
- 「オレもここに来た時凄く怖かったんだけど
- でもいろんな事を話していると全然怖いって思わなくなって・・・むしろ好感が持てるようになったんだ」
- 笑顔のモクバ・・・
- 「貴女は、ブルー・アイズが連れて来た人ですね?
- 丁度良かった。動けるのなら今人手が足りない所だったので手伝ってくださいね」
- そう言いながら手に持っていた布を手渡した。
- 「イシズこの方を知らないのか?」
- 「知っていますよカイバ帝国皇女キサラ様でしょ?」
- 「だったら・・・」
- 「さっきも言ったでしょ?人手が足りないのですよ?
- ユギ様や杏子様だって負傷した人達の手当てに当たっているのですよ
- 隣国の皇女と言えどこの城に居れば関係ありません」
- ハッキリと言い切るイシズだったが
- 「誰も助けて欲しいなんて言ってません
- 貴女方勝手にやっている事でしょ?」
- 俯き加減に言うキサラ
- 「いいでしょう 貴女に手伝ってもらうのは止めましょう」
- キサラに手渡した布を受け取りイシズは、奥の部屋に・・・
- 「キサラ様・・・こんな事言うのは失礼かもしれないけどカイバ帝国の人が助けを求めて来たんだよ
- 敵国なのにここの国王様は、カイバ帝国の人達を助ける為に尽力を惜しんでいないんです
- 現に国王様自身 怪我人の為に薬草探しに奔走されているし王妃様だって不眠不休で怪我人の看病に当たっておられるんです
- それなのに勝手にやっているって・・・相手の方に失礼ですよ!!」
- そう言いながらモクバもキサラの後を追いかけようとした。
- 「モクバ・・・何処に行くのですか?」
- 不安げなキサラ
- そんなキサラを
- 「イシズの手伝いをするんだ!それがオレの尊敬する御頭に対する礼だから!!」
- 「御頭?」
- 「ここの忍頭だぜ!女の人なのにカッコイイ人なんだ。
- オレも何時かは御頭みたいにカッコイイ大人になって兄さまの手助けをしたいんだぜ」
- そう言ってモクバは、イシズの後を追った。
-
- 敵国にそこまで尽くすシャイン・キングダム・・・
- モクバが言っている事が事実なのかこの目で確めたい
-
- そう思うとキサラの足は、自ずとイシズの後を追いかけていた。