- 自分の後から着いて来たキサラに
- 「キサラ様?」
- 不思議そうな眼差しを向けると
- 「この城には、私の国の人達が運び込まれているのでしょ?
- だったら私も手伝います
- 私は、何をしたらいいのですか?」
- キサラは、先程自分に対し無礼とも取れる態度を取ったイシズに尋ねると
- 「そこの清水を持って来てくれますか?」
- そう指示するとキサラは、傍にあった清水の入った水差しを抱え上げイシズの傍に
- 駆け寄った。
- 真剣な眼差しのキサラにイシズは
-
- 遊戯様と違う心の強さを感じる
- この娘ならこの先何があろうと乗り越えられるのでわ
-
- 荒廃と化した国の復興・・・
- きっと皇帝剛三郎は、この戦いで絶命は免れない
- そうなると生き残った王族が復興の鍵になる
- 心が弱い者では、民は着いて来ない
- また、自分達の国の代表としても認めてもらえない
- 全ては、この小さな肩にのしかかる事には間違いない
- それなら今出来る事は・・・
-
- イシズは、キサラとモクバを連れて別室へ向った。
- その途中
- 「イシズこれを何処に置いたらいいの?」
- 泥まみれの青年がイシズに近寄って来る
- 背負っていた籠を置きイシズと何やら話しをしている
- その光景にキサラは、汚い者でも見るような眼差しをした。
- それに気が付いた青年が
- 「気が付いたんだね
- こんな状況でなければちゃんと御持て成しをしてあげたかったんだけど御免ね」
- 屈託の無い笑顔
- こんな時に見せる笑顔に
- 「何故 笑顔で居るのです?」
- キョトンとする青年に
- 「多くの人が苦しんでいるのに・・・
- どうして笑顔なんか・・・」
- 「そうだね
- こんな状況に笑顔で居るのは変だよね
- だからこそなんだよ
- 僕が疲れた顔とか気難しい顔とかしてたら看護や護衛をしている者達に失礼だと
- 思ったんだよ
- 彼等の心が少しでも和んでくれたら少しでも疲れが癒せたらと思って
- 出来るだけ笑顔で居るんだ」
- 「ユギ様御話の所申し訳在りませんがこの薬草を薬剤師達の所に持って行って頂けますか」
- 「薬草は、後どれだけ必要なの?」
- 「まだまだ不足しています。」
- 首を振るイシズにユギは
- 「じゃこれを置いて来たらまた採取に行って来るね」
- 笑顔で籠を担ぎ上げようとすると
- 「これは、俺が持って行ってやるぜ
- 王様は、少し休んでな」
- 大きな籠を担いだ背の高い青年がユギの籠を担ぎ上げた
- 「克也・・・その大きな籠は?」
- 「ああ・・・これか副頭に言われて摘んできた薬草と・・・」
- そう言って後ろを振り向くと
- 同じ様に籠を背負った者達が数人居た。
- 「彼等は?」
- 見慣れない者達にユギが尋ねると
- 「何時もおにいちゃんが御世話になっています。
- 妹の静香です。」
- 髪を後ろで束ねた少女が頭を下げた。
- 「俺の生まれ育った村には、薬草が沢山生えてる山があるんで
- そこまで取りに行ってたらこいつ等に出会って
- そんで薬草が不足してるって言ったら村総出で薬草を採取してくれたんだ」
- キサラは、目の前に居る泥まみれの青年がこの国の国王だと知り驚きを隠せないで居た。
- それに城内に簡単に民が入り込むなんて更に信じられないでいると
- 「そ〜いや村周辺に居た他所の忍達も手伝ってくれたんだぜ
- 俺達に何かあってはイケないから護衛として一緒に城まで来て貰った」
- 村人の後ろに控えていた忍達が恐る恐る前進してくる
- ユギは、恐れる事なく彼等の前に立つと
- 「手伝ってくれてありがとう」
- 予想外な言葉に忍達は、驚いた。
- 自国の忍でない以上自分達は、どんな理由であれ囚われて拷問にあってもおかしくは、無いの
- だから・・・
- それなのに礼を言われるとは・・・
- 「貴方様は、我等を捕らえないのですか?」
- 強張った声にユギは、不思議そうに
- 「如何して捕らえないとイケないの?
- 君達は、何か悪い事でもしたの?」
- 「だから気にするなって言っただろう?
- お前達が俺達に敵意を向けなければこっちは、手を出す気なんてないんだぜ」
- 克也は、リーダー格の忍の背を叩くと
- 「それより薬草を早く薬剤師の所に持って行こうぜ」
- 先を促し忍達と村人達を連れて薬剤師の所に連れて行った。
- 「一国の国王が何故 泥まみれになってまで薬草摘みに?」
- 「国は、民が居てこそ成り立つんだよ
- それに民は、国の宝だからね
- 僕達王族や兵達は、国の宝である民を護るのが仕事だから
- その為に泥まみれになるなんて何て事ないよ」
- その時キサラの頭の中に懐かしい思い出が・・・