- 『キサラよ
- 国は、何で出来ていると思う?』
- 大きな手に導かれ小さな少女はバルコニーに出た。
- 『判らないわ お父様』
- 父と呼ばれた男は、少女を抱き上げ
- 『民が居てこそ国が出来るのだよ
- 民が居なければ国は、出来ないしまた民が居るからこそ
- 国が栄えるものだ
- 父が治めているこのカイバ帝国も民が居るからこそ存在しているのだよ』
- 『民が居ないとどうなるの?』
- 『国とは、言えないんだよ』
- ああ・・・お父様・・・私が幼い頃 慈悲深かったのに・・・
- 目から溢れる涙が頬を伝い落ちる
- 思い出したくない過去・・・
- それは、父 剛三郎が民を思い慈悲深かった時の思い出
- 今の父も自分に対して優しいが民に対しては、残忍極まりない
- 何故 父は、急変したのだろうか?
- キサラは、涙を拭きながら今自分がなすべき事を考えた。
- そしてその思いの行きつく先が今この城に運ばれてくる怪我人達の治療・・・
- 治療と言っても自分は、医師では無いので手伝いになるのだが・・・
- それに先程 モクバが言っていたシャイン・キングダムの忍頭の事が気になるのだ
- 何が気になるのか・・・キサラ自身判ってはいない
- ただ気になる存在
- その頃カイバ帝国城内に忍び込んでいたシャダとその部下達は、目の前の惨劇に
- 眩暈と吐き気に襲われていた。
- 夥しい血痕と腐臭・・・
- 倒しても倒してもキリが無い程のモンスターの数・・・
- 発見される怪我人の数も半端じゃない
- ましてやハーピィズペット竜の居る所まで怪我人の搬送をしなくては、いけないので
- 体力の消耗も激しい・・・
- 既に部下の何人かは、モンスターとの戦いに絶命した者も居るし
- 重傷者も居る
- 自分達の案内をしているハーピィ・レディだって無傷では、無い
- 自分達を護る為に傷ついているのだ
- あまりの状態に自分達のするべき事や何為にココに来たのか目的が判らなくなりだしていた
- それでも逃げ出さないでいるのは、自分達が尊敬をし護りたいと思う存在が
- 今尚この城内で単独で行動しているだろう・・・そう思うと逃げ出せない
- それに頭と言えど女性なのだ
- 男である自分達が逃げたとあっては、後々同じ城内に忍び込んでいるアイシスに何を言われるのか
- 判らない上にアイシスの双子の妹イシズの毒舌に耐えられる訳が無い
- まぁ・・・逃げ出さない理由は、後の方が強いだろうが
- それでも今は、遊戯やアイシス達に負けない様に気を引き締めて任務をこなさないと・・・と思う
- しかしそれは、別行動で城内に居るアイシス達も同じだった。
- よく【女は、血に強い】と言うがそれには、限界がある
- いくら毎月見慣れていてもその血は自分の体内から出るもの
- それも致死量って言うほどのモノでも無いし引き千切られた生肉が散乱しているわけでもないのだ
- 長く居ればきっと気が狂うかもしれない・・・この任務が終わった後自分達は正常な精神状態で
- いられるのだろうか?
- そんな不安が過ぎるがアイシスは、自分自身に(大丈夫よ!)と言い聞かせ生存者の救出と共に
- 生きて遊戯達と国に帰りたいと思っていた。