- その頃 剛三郎の私室には異様な呻き声が漏れ響いていた。
- 「ぐぁ〜!」
- 荒い呼吸
- 充血した瞳
- 全身を取り巻く障気
- その為なのかその姿は既に人としての原形を留めておらず異形の姿に
- 「おいおい 何時まで耐えてる気なんだ?」
- まるで楽しんでいるかの様な声
- いや 楽しんでいるのだろうこの異形が苦しむ様を
- 「テメは既に死んでいるんだよ テメが娘の命を助けた時によ」
- <コノ男ハ何ヲ言ッテイルノダ?
- 自分ハ死ンデイナイ死ンデイルノナラ今迄娘ト過ゴシタ日々ハ何ダト言ウノダ?
- 今全身ヲ襲ウ痛ミト苦シミハ何ダト言ウノダ?
- 死ンデイタノデハ感ジ得無イモノバカリデハ無イカ!>
- 「ああ その事か? テメの魂があまりにも丈夫だったんで
- ゆっくりと喰らっていたんだがもうそろそろそんな事するのも飽きて来たんだよ
- それにテメの魂ももう残ってねぇし」
- 男は、まるでこの異形の生き物の考えが解るかの様に・・・
- 否 解っているのだろうだからこそ会話が出来るのだ
- <ナラバワシノ命ハ費エテイナインダナ? >
- 「まぁ魂が少しでも残っているからな
- しかしこの状況でどうする事も出来まい」
- 男の周りを飛び交う無数の光
- 「コイツらはテメが殺してきたヤツ等の魂
- テメに復讐する為に地獄の底から復活して来たんだってよ」
- <貴様ハ一体何者ナンダ?>
- 「あ?オレ様かぁ まぁ死に行くテメに言ってもどうしようも無いとは思うけどよ
- 冥土の土産に教えてやるよオレ様はバクラって言うんだ」
その言葉と同時に無数の光が異形に襲いかかる
- しかしその異形は、今自分の身に起きている痛みに比べればたいした痛みでは無い
- のかその口元を歪めながら
- <貴様等ソレデ攻撃シテイル積モリナノカ?痛クモ痒クモ無イゾ>
- 片手を軽く振れば光は、右往左往し逃げ惑う
- 苦しいはずなのに異形は、光が逃げ惑う様を愉しげに片手を振る
- 数個の光は、その片手に当り粉々に砕け散る
- その様をバクラは、つまらなさそうに見ていたが
- 「チッ使えね連中だな このオレ様が手を貸してやらね〜とそいつに復讐できねぇのか?」
- ダルそうにしながら指を鳴らすとどこからとも無く連れて来られた少女・・・
- その髪は、白みかかった綺麗なロング
- 少女の姿を見た異形は、驚いた
- <キサラ!!>
- 自分の愛娘キサラ・・・羅刹によって何処かに連れて行かれた筈・・・
- キサラは、異形の姿を見ると顔面蒼白になり
- 「きゃ!!!!!イヤ!!!来ないで〜!!!」
- 拒絶の言葉・・・
- 「オイオイそりゃないぜテメェの父親だろうが」
- 愉快そうな顔を見せ嫌がるキサラを剛三郎の前に連れ出した
- 「イヤ!!!放して!!!あんなのがお父様なワケが無い!嘘を言わないで!」
- 脅える愛娘の姿に剛三郎は、戸惑うが《脅えないで欲しい》と思う気持ちからかキサラに
- 触れようとしか瞬間
- 目の前で崩れる様にして倒れるキサラ・・・
- その背には、バクラが持っていた短刀が深深と突き刺さりバクラ自身の手を赤く染めていた
- 更にその傷口から無数の光が入り込み傷口を裂き露わになる背骨
- 内臓まで引きずり出す輩まで居た。
- 白い肌を真っ赤に染め
- 閉じられる事の無い無機質な蒼い瞳
- 剛三郎には、信じられなかった。
- 護りたい存在なのにそれを意図も簡単に目の前に居る男にその命を奪われてしまった。
- 何が何だか解らなくなって来た。
- 何かが自分の中で壊れ失われていく思いがした。
- 「やっと魂を死に追いやったか」
- 急速にその姿を変える
- もう人の言葉を話す事が出来ないのか・・・
- バクラの言葉に何の返事も返ってこなかった。