約束−4− |
ここは・・・? 見なれた大きな建物 つい先程まで自分が居た場所-海馬邸- オレは家に帰った筈・・・何時の間に戻って来たのだ? しかも遊戯が自宅に戻ったのは夕方 空を見上げれば星が見える きっと時刻にして夜中に近い時間・・・ (何度も夜中に出歩いているのでだいたいの時間が解る) 時間のズレ・・・ それに見渡した限り自分の見知った海馬邸の中庭なのに知らないと感じる違和感 何故そう感じるのだろ? ひとまずこの中庭を散策する事にした。 ただ注意しないとイケないのは、この屋敷のセキュリティだ それだけを注意すれば問題無い 遊戯は、回りの気配に気を付けながら中庭を歩いていると ・・・うっ・・・うっ・・・ 何処からか微かに聞こえる泣き声 声のトーンからにして大人では無い子供の押し殺した様な泣き声 海馬邸にモクバ以外の子供って居たのか? 微かに聞こえる泣き声を注意深く聞きながら声の主を探す 暫く探していると遊戯の背丈程の木が立ち並ぶ場所に着いた 泣き声は遊戯の立ち位置から反対側から聞こえて来る そこに居たのは子供・・・ 背中を小刻みに震わせ押し殺した泣き声 モクバから聞かされた遊戯の様態 海馬の頭の中は遊戯の事で埋め尽くされいる そして何か大事な事を忘れている事に気付かされる ただそれが何なのか思い出せない とっても大事な事なのに・・・それが遊戯に関連している様に思える 何なのか・・・ -童実野病院- 事前にモクバから遊戯の病室の番号を聞かされていていたので海馬は そのまま病室へ・・・ 「僕 花瓶の水を交換して来るね」 <遊戯>は花が生けてある花瓶を抱き抱えながら病室の外へ そこで 「貴様 こんな所で何をしている」 聞きなれた回りの人を不愉快にさせる命令口調 「どうして君がここに?モクバ君から聞いたの?」 肯定も否定もしない海馬 「何しに来たの?」 「貴様には関係無い」 「もう一人の僕の事なら僕達が世話をするから君は仕事でもしてればいいよ」 海馬にとって耳が痛い一言 「もし君にもう一人の僕の気持ちが理解出来たらこんな事には、ならなかったのに」 それは今回の出来事で重々承知している 病室の外が騒がしい 「何だか外が騒がしいな ちょっと見て来るな」 ガタ・・・ 「おい<遊戯>どうしたんだ?・・・!!海馬・・・」 「凡骨・・・」 何故この男が遊戯の病室に? だがそれは愚問<遊戯>が居るのだからこの男が居てもおかしくない・・・ 「海馬 遊戯の見舞に来たんだろ?だったら中に入れよ」 「城之内君!!!」 城之内の予想外の行動に<遊戯>は驚きを隠せない そして海馬を室内に迎え入れた替わりに自分が室外に出た 「城之内君何故!!」 「シ〜静かに・・・俺には、海馬の気持ちが何とく無く解るんだ・・・ まぁ立場 アイツは会社の社長さんで俺は汗水ながして働く勤労者だけどよ でも大事なモンを犠牲にしているのは一緒だから」 「・・・でも城之内君は時間を作って毎日僕に逢ってくれてるじゃない・・・ でも海馬君は、もう一人の僕の為に時間を作ってもくれない それどころか・・・折角逢えたのにまともな会話も無いなんて・・・」 どれだけ遊戯が寂しい想いをしていたか・・・ それを想うと辛くて仕方が無い 「海馬のやり方は、間違えてるかもしれないけど・・・もし俺の立場が海馬と 一緒だったら俺は海馬と同じ事したかもしれない・・・」 背負うモノが同じでもその大きさが違う 「お前の気持ちだって解らないワケでもないぜ」 城之内が今言える言葉・・・ 病室に入った海馬が目にしたのは、点滴を受けながら心電図を取っている遊戯 の痛々しい姿 遊戯は、自分で呼吸をしているので酸素マスクは着けていない 病院に運び込まれた遊戯をモクバが目にした時は、集中治療室に居る時 もしかしたら何かしらのショックが原因で目覚めるかもしれない・・・と言う想いから 個室に移れてた。 ただ個室と言っても一般の人が入る様な個室では無い セレブが入る様な個室 それ故にセキュリティ面でも安心だ でもそれはモクバが居てこそ入れる個室 <遊戯>だけの力では、到底入れる所では無い 「遊戯 俺が貴様の心を追い詰めた結果なのか? 貴様は、俺の事を理解してくれていると思っていた。実際貴様は理解してくれて のだろう・・・それなのに俺は、そんな貴様の事を何も理解していなかったのだな」 海馬はベッド脇に寄るとそのまま床に両膝を着け遊戯の金糸の様な髪を撫で 今貴様の心は、何処に居るのだ? 今一度 俺にその紅い瞳を見せてくれ 俺に笑いかけてくれ・・・ 眉一つ動かさない遊戯 海馬の心には、後悔の念が・・・ |