約束-5-

約束−5−

何だか見覚えのある背中だな・・・

って言うか海馬の背中をミニチュア版にした感じだぜ

「お前こんな時間にこんな所でなにしてるんだ?」

海馬に怒られたのか?

こんな子供を怒るなんて後で海馬に文句言ってやるぜ

 

遊戯にいきなり声を掛けられ子供の背中がビクつく

そんな子供に

「あっゴメン脅かせたか?別に脅かせるつもり無かったんだが・・・

オレは遊戯って言うんだ

お前名前は何て言うんだ?」

遊戯は、子供に近づき肩に触れ様とした時

バッシ・・・

叩き落とされる手

「使用人風情が俺に気安く触れるな!!」

泣き腫らした青い目

子供を見た瞬間 海馬の姿が重なる

遊戯は、叩かれた手を撫でながら

「誰が使用人なんだ?オレは、ここの使用人じゃないぜ」

まさか海馬のヤツ・・・オレに内緒で子供を作ったのか?

だが・・・海馬の年齢を考えるとつり合いが取れないぜ

クローンってヤツなのか?

「だったら何者だ!!」

「し〜声のトーンを落とせよ

その泣き腫らした目を他のヤツに見られたいのか?

それにオレは、ちゃんと名乗ったのにお前は名乗ってくれないのか?」

泣き腫らした目を他の人に見られたくないのか子供は声のトーンを下げながら

「俺の名前は海馬瀬人だ・・・」

不承不承と言った感じで答える

 

かっ・・・海馬瀬人・・・

うっ嘘だ!!

 

「海馬瀬人・・・って本当にその名前なのか?

今西暦何年なんだ?」

訝しい様な表情をしながら

「お前そんな事も知らないのか?今は2XXX年だ」

2XXX年・・・うっ嘘だ・・・

確かオレが居た時は2xoo年だった筈・・・

何故過去の世界に?

 

頭の中が混乱する

自分が本当に居た世界から7年もの過去の世界

しかも7年前って言えば自分は千年パズルの住民だった時

否 まだパズルが組み立てられる前の話だ!!

 

そんな遊戯を見て瀬人は

「お前何処から来たんだ?」

聞いてもどうしようも無いのに聞いてみたいと思った。

「お前に言って信じて貰えるかどうか解らないけど・・・

7年後の未来から来たみたいだな」

お前 非ィ現実嫌いだモンな・・・

7年後の海馬は、オカルトを信じない

寧ろ自分の目の前に起きた非ィ現実的な事でさえ信じない男・・・

そんな彼の子供時代だ自分の言っている事なんて信じないだろう

「俺が子供だからって馬鹿にしてるのか?」

ムス〜とする瀬人

そんな瀬人を見て≪やっぱり≫と苦笑するしかない遊戯

「・・・もし・・・お前が言うのが本当なら・・・未来の・・・その俺ってどんな・・・

あっ否・・・お前の言ってる事なんか信じて無いから」

興味が在るのに無い振り

自分が子供なのにそれを認めたく無い

瀬人の心境を察した遊戯は

「未来のお前は自分の信念を曲げずに貫き通す凄いヤツだぜ」

まぁ性格的には問題大だが・・・

 

未来の世界に居る海馬の姿を思い浮かべる

きっと彼はオレが過去の世界に居るなんて知らないから今頃仕事に勤しんでいる

筈・・・

 

ズキ・・・胸元が痛い・・・

本当は、少しだけでもいいから話がしたかった。

それだけでも自分は、彼と逢えない時間をまた我慢出来ると思ったから

彼に呼び出され向かった先で自分を見てくれない自分に話し掛けてくれない

仕事ばかりに没頭する海馬を見てどんなに悲しかった事か・・・

そして次第に芽生える疑問

海馬瀬人って言う男にとっての自分の価値・・・

もしかしたら自分達が恋人同士だって思っていたのは自分だけで海馬にとって

自分とはただのゲーム相手

ただの都合のいい相手

ライバル会社に取られたくない相手

自分一個人なんてどうでもいい・・・利用さえ出来れば・・・

そう思われると思うと悲しくて寂しくて

どうして海馬瀬人なんかを好きになったんだ?って思わずには居られない

「・・・どうしたんだ?」

心配そうに自分を見つめる青い瞳

「何でも無いぜ・・・」

「何でも無いのに何故泣く?何かあるから泣くんじゃないのか?」

泣く・・・?そう言われ目許に触れると濡れた感触

知らず知らずの内に流された涙

「・・・お前も何か辛い事・・・あったんだろ?

その・・・未来って所から逃げたくなるような・・・俺で良かったら・・・その話・・・

ぐらい聞いてやる」

暗くてよく解らなかったが照れている様に見える

自分の知らない海馬の一面

未来の彼が時折見せる不器用な優しさは、この頃には既に存在していた様だ

そんな些細な事が解って嬉しくなって思わず瀬人を抱きしめると

「うわっ〜!!ちょっちょっとどうしたんだ!!くっ苦しい」

何時もなら自分を抱きしめてくれる存在なのに今は自分が抱きしめる存在

「心配してくれてありがとうな」

「べっ別に心配なんてしてない」

海馬邸に来てから嫌な事や辛い事が多かった。

自分を抱きしめてくれる存在なんて無かった。

自分は弟モクバを安心させる為に抱きしめる事があっても・・・

今 遊戯に抱きしめられ瀬人の心に何か暖かいものが込み上げてくる

「なぁ・・・お前の事 遊戯って呼んでいいか?代わりに俺の事 瀬人って呼んでいいから」

「いいぜ」

お前には名前で呼んで貰いたいからな





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