約束−9− |
ここは? 一面が暗闇の見馴れない空間 否 いろんな色の球体が浮遊している ただ球体が浮遊しているだけで自分が立っている 場所には床が在るのかどうかでさえ解らない 寧ろ床でさえ存在してないのかもしれない 一応足場確保の為に球体に近づく事にした 「ようこそ 俺のテリトリーに」 海馬の目の前に自分と同じ栗色の髪と碧眼の少年 が姿を現す 目の前の少年は、まるで自分を幼くした様な感じがする 「貴様は、何ヤツ 一体何が目的だ!」 不快感を露わにする海馬に対し少年は 「そうカッカッするなよ 高血圧になってしまうよ」 余裕の笑み 「俺が君をここに呼んだ理由は、只一つ 君が昔交わした大切な約束を思い出してもらう為 まぁついでに自分自身に対して立てた誓いも思い出してもらいたいのだが・・・ それは、無理っぽいから約束だけでも思い出してもらうよ」 約束?何の事だ・・・ ここ最近思い出したくても思い出せない何か・・・ それが自分と遊戯の間に交わされたモノの様に感じられていた しかしそれが何だったのか解らない 「俺の心にもたらされる不愉快な感情は貴様の所為か!」 ムキになりだす海馬だったが目の前の少年は碧眼を細めながら 「君の心に与えられた不愉快な感覚は、きっと俺が目覚めた所為 君が過去を忘れ捨て去った その中から俺が目覚めたから・・・ 俺とて目覚めたくて目覚めたんじゃないのだけど君の行動が余りにも 目に余るから仕方が無いと言うか・・・大切な人の心を守る為と言うか」 ハッキリ言わない少年に苛立ちを覚える 「目覚めただと?まるで俺の心の中に居た様な言い草だな」 「居たさ 俺は君自身なんだから まぁ君の過去だけど・・・オカルト嫌いな君には俺の存在は無き者に したいのだろうけど」 俺の中に居た・・・?こいつは・・・俺の過去・・・物怖じしない不遜な態度 「貴様が言う大切な人と言うのは遊戯の事か?」 「君の兄弟以外に大切な人と言ったら彼しか居ないだろ?」 俺と遊戯が出逢った・・・俺が・・・子供の頃 目の前の自分 その姿は小学高学年あたり 思い出さなくては そんな海馬を後目に少年は傍にあった一際美しく赤く輝く球体に触れながら 「ここにある球体は、君が忘れ捨て去った過去 思い出すのは無理っぽそうだね」 その球体を海馬に投げ付ける 球体に海馬が触れた途端球体から流れ込む過去の出来事 しかもそれは、7年前に遊戯に出逢い短い間一緒に過ごした時間 「その紅い球体に遊戯との思い出が詰め込まれているんだ 短い時間だったけど俺にとっては剛三郎から与えられ地獄の中で見つけた 至福の一時だったよ」 そう・・・剛三郎の厳しい教育 あの時は寝る間でさえ惜しんで帝王学を学んだ 何度逃げ出したかった事か でもモクバの事を考えるとそれは出来ず 何度も中庭の一角で声を押し殺し泣いた事か その日も夜 自分の部屋を抜けだして中庭で泣いている所を遊戯に話しかけら 人に泣き顔を見られるなんて恥ずかしかった しかしそれ以上にそんなシーンを剛三郎に告げ口でもされたら そう思うとどうすればいいのか戸惑った しかし目の前に居る遊戯の様子がおかしい事に気付き警戒しつつも色々と話しを していると遊戯が剛三郎と関係無い事が解り そして彼の話し一つ一つが楽しく自分の心を安らかにさせてくれる事に気が付いた そんな彼に次第に魅かれて行ったのだ そしてそんな遊戯の心には既に誰かが居る事も気が付いてた 遊戯が未来に帰る時俺は遊戯に約束した 否 正確に言えば俺が約束させたのだが・・・ 「・・・約束してくれるか?未来で俺の傍に居てくれる事を・・・ 遊戯の一生を俺の傍ですごすって」 今にして見ればませた台詞だと思う だがあの時は、精一杯の言葉だった。 それに裏を返せば自分も遊戯の傍に一生居ると言っているのだ それなのに今の自分は、その時の気持ちも言葉も忘れ遊戯に対して 何と酷い態度を取っていた事だろう 「遊戯は、あの時未来に帰った未来の俺の下へ すなわち今この時間を生きている俺の下へ」 心の不安とは、裏腹の強気な発言 「彼がどうして未来に帰ったと言えるの? 確かにあの時 遊戯は俺の目の前から消えたよ だけど未来に到着した遊戯を俺達は見ていない 寧ろ彼の心の不安が彼を古代に導いたのかもしれない 彼がどちらに行ったのか確認してないし確認のしようも無いからね」 目の前の自分の言う通りだ 俺は遊戯が光に包まれて消えたのを見ただけだ もしかしたら遊戯は、俺を見放したのかもしれない 古代に戻れば俺と同じ姿をした神官セトが居るのだ・・・ これが・・・俺が遊戯に対してとった行動の仕打ちなのか? 俺が俺自身に対して・・・ 打ちひしがれて行く海馬を前に子瀬人は 「そろそろ彼が通る時間かな? まぁ君が大いに反省しているのなら2度と遊戯に対して酷い態度を 取らないでくれよ」 目の前の子供は、何を言っているのだ? 海馬は、子瀬人を見つめていると子瀬人の両手から淡い小さな光の球が 現れ次第に大きさを増して行く 光は球体から少しずつだが形を変えだす その光景に海馬は見入るしかなかった。
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