世界で一つだけのモノ -3-
何故 遊戯は俺の気持ちを疑う?
俺には貴様だけなのに・・・
何故・・・
海馬の心の中には遊戯の言動に対する疑問が渦巻いている
そんな心の片隅で
あの方があんな発言をするなんて有り得ない
きっと何か理由がある筈・・・
冷静さを欠いた今の海馬にはそんな心の片隅で聞こえる
声など届く筈も無い
どんな時でも傍居て欲しい相手である遊戯の言葉は
冷静沈着な男の心を乱すには充分だった。
「もうひとりの僕・・・」
「相棒 これで海馬の誕生日パーティに参加しなくて済むぜ」
笑顔で言う遊戯だったが
その表情は悲しく辛そうだ
「君は、計画の為にあんな事言ったんだね
本当は海馬君の事信じているんでしょ?離れたくないぐらいに」
優しく抱きしめてくれる相棒に遊戯の目頭が熱くなる
「大丈夫だぜ・・・」
きっと海馬とまた仲直り出来る
まるで自分にそう言い聞かせる様な遊戯
「絶対仲直りさせてあげるから・・・」
声を押し殺しながらも肩を震わせて泣く遊戯の背中を<遊戯>は優しくさすっていた
-10月23日-
海馬と別れた後 遊戯は何事も無かったかの様に仲間に会い日常を過ごしていた。
だがその姿が余りにも痛々しく見える
一方 海馬は社長室で遊戯の言葉を思い返していた
冷静になって考えれば遊戯が自分を本気で疑う事なんてあっただろうか?
きっと何か理由がある筈・・・
それは遊戯に逢えば解決する事なのだろうか?
海馬が冷静さを取り戻し遊戯と言う男がどう言うヤツなのか思い出せてくれたのは
不覚にも己が毛嫌いするオカルトのお陰なのだ
海馬にはセトの記憶が多少なりとある
それ故に遊戯の過去であるアテムがどう言う人物だったのか解っている筈なのだ
『貴様そんなにこの俺の事が信じられないのか!』
それは遊戯を信じられなかった俺自身事では無いか
本当に冷静になって考えれば・・・
全くもって滑稽な事でしかない
だがそれ程まで遊戯の事を想っている証だと想う
しかし海馬自身素直な性格では無いので自ら遊戯の元に赴き
言葉の真相を確かめ
自分の想い込みで怒った事に対して謝罪が出来ないのだ
もし素直に謝罪出来ていたのならココまで悩む事も無く
遊戯を自分の誕生日パーティに出席させるのだが・・・
遊戯が居ないのなら今年も自分にとってつまらなくくだらないパーティになるだろう
既に海馬の心には遊戯に対しての怒りは無い
今は無償に逢いたいのだ
抱きしめその存在を確認したい
このパーティで自分と遊戯の仲を公表し彼を一生涯自分の傍に置いて置きたい
遊戯の事を想えば仕事に手が着けられない
貴様は今何をしている?
遊戯 貴様に逢いたい・・・