一筋の光 -4-
湯浴みを終え出て来たアテム
身体は、スッキリ綺麗になっているのに気持ちは全くスッキリしていない
アテムが今身にまとっているのは、アッシリア製の織物で作られた衣装・・・
アテムが当初身に着けていたエジプト製の衣装がアッシリア王に
陵辱される時に無残にも引き裂かれ身に着ける事が出来ない様にされた。
部屋に戻ったアテム・・・
部屋と言ってもアッシリア王の寝所
アテムは、この部屋から出る事を許されて無いのだ
もし勝手に出て行ったらマナ達の命が無い
今は、この部屋に居て得られる最低限の情報で脱出の機を伺うしか無い
外には満天の星
この星をセトと一緒に見られたら・・・
胸をギュ〜と締めつけられる想いがする
今この時だけセトを想ってもいいよな
逢うのは怖いけど逢いたいと想ってもいいよな
胸元に手を当て切なげに天空を見上げる
そんなアテムの背後から
「ファラオよ 如何された?まるで憂いを帯びた乙女の様だぞ」
揶揄される様な発言
「あんたの思い違いだろう?」
悲しげだった瞳は力を取り戻し背後に居る男に振り向き不敵な笑みを見せる
ドキッと心音が高鳴るのを感じる
どんな状況下であってもこの男は、きっと跪く事はしないだろう
否 跪かせる事は出来ないだろう
苦痛に歪み跪く彼を想像しただけで興奮してくる
特にそれが難しい相手ならなおさらの事
アッシリア王はアテムの元に歩み寄り彼の細い腕を掴んだ時
「王!!大変です!!」
アッシリア王の寝所に血相を変えてやってくる親衛隊長
「騒々しい!何事だ」
眉間に皺を寄せて不機嫌丸だしのアッシリア王
「もっ・・・申しワケ有りません!!何者かが城内に侵入した様です」
アッシリア王が今何をしようとしていたのか察したのだろ
だがそんな事を気にしていられない
親衛隊長はアッシリア王に敬礼をしながら報告する
「何だと!!貴様等警備の者が何をしている!!」
怒りだすアッシリア王
その傍でアテムは誰が来たのかが解った
そして心が嬉しさと安堵に包まれるのが解った
だがそれを顔に出さず冷静さを保つ
「直ちに不審者を捕らえ我が前に連れて来い」
「はっ!」
そう言うと親衛隊長は寝所を後にする
残された2人・・・
「貴様に私の偉大さを見せてやろう!」
アテムの腕を掴み寝所を出様とするがアテムは、その行為に抵抗する
否抵抗するフリをしたのだ
捕まってから今迄アッシリア王に対して抵抗し続けたのだ
ここで無抵抗だと怪しまれる可能性があるのだ
「何時までも抵抗するのは利口とは言えんぞ」
そしてアッシリア王は、何時もの抵抗だと思ったのだろう
そんな事お構い無しにグイグイとアテムを引っ張り連れて行く
広間に着くと大臣達が右往左往して居る
何と見苦しい光景か・・・
「ええい!!!貴様等何をオロオロしている!!それでも大国アッシリアの
重臣か!!!恥を痴れ」
激怒するアッシリア王
彼が激怒するのも肯ける
きっとこれが自分だったら激怒するか呆れかえるかのどちらかだろう