一筋の光 -7-
アテムの首を締め付ける手が緩んだその時
うっすらと開いた瞳の先に見えたのは
アッシリア王の悲しそうな瞳
そして悲痛な表情
何故?そんな瞳をする?
何故?そんな顔をする?
心の中に芽生える疑問
だがそんな疑問も次の瞬間には消え失せる
景色が傾く・・・
バタ・・・
「げほ!!ゴホ・・・」
急に気道が自由になり
大量の空気が肺に流れ込む
咽返る苦しさに涙が出てくる
「大丈夫ですか?ファラオ・アテム!」
母の様に姉の様に自分を抱きしめてくれる
くれる存在に安堵する
少し前に遡る
アテムがアッシリア王に首を締めつけられている最中・・・
広間には続々と親衛隊とおぼしき兵が駆け付けて来る
このままでは自分達の命も危ないと思いつつも
最優先して助けたい人物が目の前に居るのだ
彼を助けずにして敵地に乗り込んだ意味が無い
それに彼を助ける事こそが亡き同胞への餞
「クリボー!!己が主を助ける為にその身を犠牲に
戦ってみせろ!」
セトの無謀な発言
だがその言葉の裏には何かある筈と思うアイシス
これが生真面目なシャダやマハードなら「ファラオが
寵愛するカーに何て事を!」と激怒するかもしれない
しかし目の前のクリボーはセトの言葉に気を良くしているのか
戦う気満々である
「行け!クリボー!」
その掛け声に飛び出すクリボー
そしてアイシスの目の端には・・・
「クリボー増殖!」
低級なモンスターにのみ使用可能な力・・・
それによって1体しか居なかったクリボーが複数体へと
増殖していく
力の強いモンスターと言えど増殖したモンスターを倒すのは
至難の技
倒しても倒しても減る事無く増えるのだから
ましてやクリボーには敵に触れれば爆発を起こし更に
その爆発に誘発され更なる爆発を起こす能力が備わっている
カーに見なれないアッシリア人は畏怖の念を抱きただただ
戦意を失うだけ
アイシスは、目の端に捕らえたモノを確認するとアテムの方に走り
出す
見なれないカーに目を奪われ神官の一人が行動に移した事に
誰一人気付かないで居る
ましてやアテムの首を締めている当事者でさえ
ドカッ!!
「くっ!!」
何かがアッシリア王に体当たりを食らわす
それによりアテムの首にかかっていた両手は外され床に転倒して
しまう
いったい何が・・・
身体を起こし見たものはアテムを抱き抱える様に寄り添う女と
2人を守るかの様に立ちすくむ人型のモンスター
マハードの下に行っていたスピリアがアイシスの下に戻って来たのだ
マハードも何とかアッシリア城に到着しシャダ達と合流した様だ
咽返るアテムの背をさするアイシス
アテムの胸元が少し肌蹴肌理細かい肌が少し見える
所々に見える所有印にアイシスは眩暈がして来そうになる
略奪された国の王ならこの様な仕打ちを受ける事ぐらいアイシスに
だって知っている
祖国エジプトの表立って出ていない歴史にだって略奪した国の王族
を辱める事ぐらいして来ただろうし
されもしただろう
しかし今のエジプトは略奪され他国の支配下にあるワケでは無い
一国として存在しているのだ
アテムへの仕打ちはエジプトへの仕打ち
冷静なアイシスの胸内に広がる憎悪
アテムの肩を抱きしめる手に力が篭る
肩に篭る力に痛みを感じ顔を顰めるアテム
アイシスに違和感を感じながら・・・
それに呼応するかの様にセトの身体に異変が・・・