残想-3-

残想-3-


<闘いの儀>を終え冥界に旅立った遊戯

彼のそんな後ろ姿を海馬は忌々しい気持ちで見送った。

気持ちの中では、このまま遊戯を抱き締め連れ去りたい

だがそれは、遊戯の来世を奪う行為でしかない

 

もし叶うなら今世で添い遂げられなかった想いを来世に

 

神の存在なんて信じない海馬でも

そう願わずには居れなかった。

それに自分には遊戯を約束した計画を実行に移さないと

いけないのだ

 

 

数年の歳月の中どれだけ実験に失敗しただろう

遊戯の細胞から造りだした卵子の模造に自分の核を埋め

込み細胞分裂を促す

上手く組み合わさる事無く死滅する核

分裂まで行く事が出来てもその後破裂してしまう事も

何度諦めそうになった事か

だがその都度海馬の脳裏には色あせる事の無い学ラン姿の

遊戯が浮かび上がり

「ここでつまずくのか?」

自信に満ちた不敵な笑みを浮かべながら海馬に手を挿しだす

だがその笑みは、何処か慈愛に満ちている気がして

その手を何度取りそうになった事か・・・

そして彼が居た時自分が彼に語った夢物語を想い出す

 

遊戯との間に子供を・・・

 

「遊戯 俺は諦めない

必ず俺は貴様との子を作り出してみせる!!」

「ああ・・・海馬お前なら叶えられる

お前の成功を傍で見てやれる事は出来ないがオレは楽しみに

してるぜ」

遊戯の優しい笑み

「何か有ったらオレを呼んでくれ

オレは冥界からでも必ず駆けつけてやる」

まぁ〜霊の存在を否定するお前はオレを頼ったりしなだろうがな・・・

そう言って苦笑する様

 

「遊戯 俺は諦めない必ず夢を現実にし貴様に見せてやる」

その時既に海馬も20歳を半ばに差しかかろうと言う年

遊戯の親友だった城之内は舞と結婚をし子をなし

器だった<武藤遊戯>も長年片思いだった杏子にプロポーズをし

結納を交わしたらしい

本田と御伽は相変わらずの静香狙い

モクバも副社長として貫禄がつき他社の重役共と対等に亙りあっている

モクバに関して言えば子供の時から副社長業をこなしているので他社の

副社長より貫禄はあるものの子供扱いされ馬鹿にされる事も多かったが

今はそれが無いらしい

 

「兄さま 研究も大事だろうけど少し休んだ方がいいよ」

「だがこの研究は・・・」

「今の兄さまの姿を見たら遊戯が悲しむと想うよ

それに適度に脳を休めてあげた方が良い案も良い結果も出ると想うよ」

相変わらずの兄想いのモクバ

兄のデスクの飾られた遊戯の写真・・・

兄がどれほど遊戯を想っているのか

その愛情の深さに昔はどれだけ嫉妬した事か

だが今の自分になら解る気がする

出来る事なら自分だって兄をサポートしたいのだ

 

遊戯 お前は凄いよな

兄さまをあそこまで突き動かすなんて・・・

たった一人で研究してるんだぜ

オレなんて蚊帳の外

少しぐらいはオレにも手伝わせて欲しいぜ

あっでも仕事の面では手伝ってるんだぜ

 

遊戯が冥界に帰った日からオレの身長も伸びたんだぜ

今では兄さまより1〜2センチ低いだけ

もう遊戯を見上げて話すオレじゃないんだぜ

遊戯・・・今世では転生ってのは無理なのか?

それとも来世まで待ってるのか?

オレの声届いてるかなぁ?

 

モクバは自分の引きだしに隠している遊戯の写真に向って

心で話しかける

その写真は、遊戯と自分だけが写ったモノ

杏子が撮ってくれた写真

モクバの宝物の一つ

兄には内緒だけどね


予定では無かった内容を書いてしまった(汗)



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