Selfishness-3- |
暫く車を走らせると一軒の大きな家の前に着いた モクバに訊ねるとその家に海馬とモクバが住んでいる家らしい 河豚田が海馬を呼びに家に向って行く 遊戯は今の姿を海馬に見られたくないので 「磯野さん・・・何か羽織るモノは無いか?」 と訊ねると 「何でそんなモノ居るんだ?」 「僕達の今の姿 恥かしくて海馬君に見られたくないからだよ」 <遊戯>だってこの格好は恥かしいのだ 何を言われるか解ったものじゃないし遊戯に居至っては車内で何を されるのか解ったものじゃない 「ふ〜ん 似あっているのに」 「そうだろうと思い用意させて貰ってます」 そう言いながら手渡されるフード着きのハーフコート 2人は、コートを受け取るとそそくさと着だし頭からスッポリと口元だけを 出しフードを被る そんなに隠す必要も無いだろう・・・ と心で呟くモクバだが遊戯達にしてみれば海馬にバレタラ何を言われるの 「瀬人様御迎えにあがりました」 河豚田が恭しく海馬に頭を下げていると 「磯野は、どうした?」 何時もは磯野と河豚田が2人で来るのだが 「磯野は、今夜のパーティに同席される方の御相手をなさっておられます」 同席だと?そんな話しは聞いてない 「フン・・・人の車に便乗してパーティに参加しようとは図々しい輩も 嫌味を零す海馬だったが河豚田は磯野との約束で同乗する相手の名を まぁ海馬がそこまで深く追求するタイプでは無いので聞かれる事も無いが もありえる 海馬は執事からコートを受け取り車の方へやって来る その事を車窓から見ていたモクバから知らされる 心臓がドキドキしてくる喉が乾く 車外から聞こえて来る微かな声にビクビクと反応してしまう カチャと開けられた扉からヒンヤリとした空気が入り込む 「! モクバ 日本に帰国したんじゃなかったのか?」 「えっ? ああ・・・忘れ物したから取りに戻って来たんだぜ 出席しようと思って兄さまの車に便乗させてもらったんだぜ 懇願するような顔に 「かまわん」 車内には、モクバ以外にフードを深く被った少女とおぼしき存在が2人 磯野が相手をしていたという人物だろう 人の車に勝手に便乗してパーティに参加しようとは図々しいにも程がある 否なオーラを身に纏い忌々しい表情で遊戯達を見据える だがどう言う訳か心が浮かれている まるで遊戯と一緒に居る時の様な・・・ しかし遊戯は今ここには居ない 遊戯は日本に居るのだから 遊戯達にしてみれば気が気でない ましてや今夜パーティがあるなんて知らなかったのだ そんな物が有るのなら空港で言って貰いたかった 否 日本に居る時に教えて欲しかった そうすれば御伽の所に連絡して一晩泊めて貰うのに・・・ 「車内ではフードは被らないものだが?」 そんな海馬の言葉にも2人は、俯いたまま何の反応も見せない 自分達の正体がバレルのが嫌なのだから仕方が無い 「兄さま2人にだって外せない理由ってもんがあるんだぜ」 女の子にだって事情があると海馬を咎めるモクバ 「勝手にしろ」 ここに居るのが遊戯だったらどんなに嬉しい事か・・・ 遠く離れた所に居る存在に心奪われている海馬だがまさかその相手が 居るとは気付いていない 遊戯にしてみてもこのまま気付かないで欲しいと願っている 何処かの宮廷を思わせる造りのホテル ボーイが車の扉を開けると海馬とモクバが降り その後を続いて遊戯達も 大理石で出来た階段を上がり自動ドアを潜ると2人はコートを脱がないと 覚悟を決めた遊戯はコートを脱ぎ磯野に渡す 後を続いて<遊戯>も脱ぎ出し遊戯同様 磯野にコートを託す 2人の後ろ姿を見て海馬は驚いた 長い髪をしているとは言えその後ろ姿を自分は見間違える筈が無い 恋焦がれている相手 遊戯の後姿を そして彼の保護者的存在である<遊戯>の姿も 「ゆう・・・」 そこまで言いかけたが微かに振り向く遊戯の吊り上がった紅い瞳が 今自分の名を言うな!! とでも言っているかの様に見えた。 否 心の中では、紛れも無くそう言っていたのだ 凛とした姿勢で海馬に近づく遊戯達 その姿は、周りに居る者達を魅了する 「海馬さま 先程は車に同乗する事を許して頂き有難う御座います」 まるで何処かの令嬢の様な遊戯の立ち振る舞い 太古の時代とは言え遊戯自身元々はエジプトの国王なのだ 王としての立ち振る舞いは骨の髄にまで染み込んでいる 「挨拶が遅れて申し訳御座いません こちらは我が姉ユウ そして私が妹のユキです 以後お見知りおき下さい」 何時の間に僕の名前が決まったの???? その場しのぎで遊戯が即興で考えた名前 「ユウにユキ・・・素敵な御名前だな」 先程の車内とは、打って変わって笑顔を浮かべる海馬 まさか遊戯がN.Yに来ているとは思わなかったのだ しかも退屈だと思われたパーティに自分と一緒に出席をしている これ程までに嬉しい事は無い だが残念なのは、この場で彼を抱き締める事が出来ない その柔らかな唇を堪能する事が出来ないのだ 「やぁ〜海馬君!!」 聞き覚えの有る明るい声が遊戯達の背後から聞こえてくる 「君が女性と同伴してくるなんて」 「貴様にどうこう言われる筋合いは無い」 御伽は2人の女性の方に向き直ると悪戯っぽく片目を閉じる 「君達名前は何て言うの?」 「私はユウでこっちは妹のユキ」 御伽には2人の正体が解っているのだ 「ユウさん 宜しかったら僕のパートナーとしてパーティに参加して 自分は1人で来た事をアピールすると 「私でよければ」 差し出される片手 御伽は、差し出された片手を恭しく取ると 「では、会場の方に行きましょう」 そそくさとその場を離れた。 流石に海馬の邪魔をすれば後が怖いから 「では、海馬さまモクバさま私達も会場に移動しましょうか」 「オレ ユウさんの所に行って来るぜ」 御伽達の後を追いかけるモクバ モクバなりの気遣いないのだ 海馬はユキの隣に立ち軽く背に手を当てながら促す そして遊戯にしか聞こえないぐらいの小声で [まさか貴様が女の格好をして来るとは思っても居なかったぞ] [女の格好は磯野さんにさせられたんだ オレの意思じゃないぜ] 不本意だと言いたげな遊戯だったがどんな理由であれ遊戯が自分の 会場内に入れば<遊戯>同様人々の視線が集中してくる それは羨望の眼差しであったり嫉妬の眼差しだったり そんな中でも臆する事無く背筋を伸ばし海馬の横に立つ 小さくて華奢な身体・・・ 本来なら気付かれない存在であろうにその身に纏いしオーラが 「ハ〜イ 海馬ボーイ こんな素敵なレディをエスコートしてくるとは、 失礼ながら貴女の御名前をお聞かせ願いまセ〜ンか 私の名前はペガサス・J・クロフォードと申しマ〜ス」 「私の名前はユキです。」 軽く笑みを浮かべ挨拶をする遊戯 千年アイが無いとは言えペガサスにだって目の前に居るのが遊戯だって 「海馬ボーイ そんな怖い顔をしているとユキに逃げられマ〜ス」 「この顔は生まれつきだ」 不機嫌極まりない顔 自分以外の者に向けられる笑みが許せないのだ 「私は、まだ馬に蹴られたくアリマセ〜ン」 おちゃらけた態度を見せるペガサスに苦笑する遊戯 また機会があったらと言う事でペガサスは人ごみの中に消えて行った。 全く・・・普通顔見知りに嫉妬するか? 海馬の独占欲には呆れてしまう だがその原因が自分だと思うと何故か嬉しく思ってしまう 「海馬さま 機嫌を直して下さい」 少し困った様な表情を浮かべ小首を傾げる遊戯に海馬の息が 顔に熱が篭るのが自分でも解る 「・・・ああ・・・」 くそ〜!!このまま遊戯を押倒したい 自分の雄が反応するのが解る 「ユキ この後何か予定でもあるのか?」 「これと言って何も予定は有りません 姉も御伽さん達と出かける 私は1人ですよ」 少し離れた所に居る<遊戯>と御伽とモクバの方を見る遊戯 N.Yに来る時<遊戯>が御伽の所に泊めて貰う様な事を言っていたから (ただ御伽には連絡していなかったのだが・・・) その言葉に更に笑みを浮かべながら 「では、俺と一緒に居てもらえませんか?」 「喜んで」 くそ〜海馬のヤツ 何てスケベそうな顔してるんだよ 恥ずかしいヤツだぜ 「くそ〜あんな可愛い子を独り占めして俺だってあの子と話がしたい」 「無理無理 あの子の話相手をしているのは海馬瀬人だからな」 「敵に回すと厄介なヤツがナイト様だからな」 「あ〜ん あの子ったらさっきから海馬様を独り占めだなんてズルイ!!」 「そうそう私達だって海馬様とお話がしたいのに」 「彼女って何処の令嬢なのかしら?」 「何処のだっていいわよ 寧ろ瀬人様との関係の方が気になるわ」 「美男美女の組み合わせとは目の保養になりますわね」 「あちらの女性とは姉妹の様ですよ」 「どちらとも美しい」 方々から聞こえる声 だがその言葉は全て異国の言葉なので遊戯には、全く解らない ただ自分が話しの対象にされている事だけが唯一解る 目の前に居る遊戯の色香 肩から少し下にずれるストールを直す仕草 淡い紅い口紅を注し艶を出す為に塗られたリップグロス 時折髪を弄る姿さえドキドキしてしまう 海馬は何とか雄が反応しない様に気をつけていても遊戯の仕草一つ一つが 刺激される このままでは我慢し続けたら帰宅するのも困難になるだろう [遊戯 貴様の口で俺の熱を吸い取ってくれないか?] その言葉に?マークをと掲げあげると遊戯の手を掴み微かに反応している その場所に触れさせる ただ傍からは見えない様に気をつけながら 慌ててその場所から手を離す遊戯 [海馬!!何を触らせるんだよ] その顔は朱に染まる [貴様の所為でココは、こうなったんだ何とかして貰いたいものだ] [そんなのオレの所為じゃないだろ〜] [遊戯・・・] [帰宅するまで待てないのかよ] 紅くなる顔を逸らしながら言うと [遊戯・・・] 耳元で囁かれる甘い声 情事の時にしか聞く事が出来ない音色 少し溜息を吐きながら [解ったぜ 何処かに移動しよう] 遊戯は海馬の甘い吐息混じりの声が好きなのだ それを知っているからこそ海馬はワザと耳元で囁いたのだ |