Recollection(追憶)-2-
オギャ〜オギャ〜
宮中の一角から聞こえて来る元気な産声
「ファラオ・アクナムカノン元気な御子が誕生されました」
宰相シモンが別室でオロオロしている国王の元に急ぎ報告に来る
「おお!!誕生したのは皇子か皇女か?」
嬉しそうな顔のファラオにシモンは
「皇女様です」
嬉しそうな顔が一瞬だが強張ったのをシモンは見逃さなかった
そしてシモンを続け様に
「王妃様が御隠れになられました」
嬉しさの後に来る悲しき報せ
元々王妃は躰が弱く子を生めるだけの体力が無かったのだ
それでも自分が愛した王の子を生みたいが為にその命を掛け散らしたのだ
「シモン・・・子供に逢わせてくれぬか」
心の中で揺れ動く想い
「かしこまりました」
シモンの案内の元
アクナムカノンは生まれたばかりの赤ん坊を見つめる
赤ん坊は一度も母の温もりも知らず乳母の乳を吸っている
「そなたは、この子の性別を知っているな?」
ファラオ・アクナムカノンの言葉に乳母は
「はい 御可愛らしい皇女様です」
優しい眼差しで自分の乳を吸う赤ん坊を見つめると
「女 この子の性別は一切口外しては為らぬ
もし口外しようものならその命無いと思え」
予想外の言葉に乳母は驚き目を見開くが
「はっはい・・・」
うわずった声のまま肯く
乳母だけでは無いその場に居たシモンでさえ驚きの表情を現している
「ファラオ・アクナムカノンそれは一体どう言うおつもりで・・・」
アクナムカノンに問いただすも返答は返って来ない
アクナムカノンは踵を返すとそのまま室外へ
それを追う様にシモンも出て行く
暫くしてアクナムカノンの私室に着くとアクナムカノンは溜息を吐きながら
重い表情で
「そなたにも協力して貰らうぞ」
「協力?」
「このエジプトにおいてファラオになる為には王位継承権を持った女性と
婚姻関係を結ばないといけない・・・婚姻関係を結ばないまでも婚約をすれば
王位継承権を得る事が可能となる」
婚姻関係を結ばないまでもと言うのは継承権を持つ女性が幼い場合の事である
「私が居る限りは、あの子を守ってやる事が出来るがもし何等かの形で私が
この世を去ってしまえば権力欲しさに近寄る者達に道具としてしか扱われない
かもしれない
あの子にそんな辛い思いをさせたくない」
自分の妃も幼い頃に自分と婚約をさせられた
自分達は、それこそ互いを想い合っていたが彼女の持つ王位継承権欲しさに
アクナムカノンの従兄弟が彼女を横取りしようと試みたのだ
だがそれは失敗に終わったものの歴史の紐を解けばそんな事例は幾つもあるのだ
もとより躰の弱い彼女は心労で体調を一時期崩すも回復次第自分の元に嫁いで
来てくれた
そして誕生したのが皇女なのだ
今は未だ名を着けられていない皇女
そんな皇女に歴代の妃の様な王位継承権目的の男と一緒になってもらいたくない
この子には自分で相手を見つけ互いに想いあう相手と結婚して貰いのだ
「しかしファラオ・アクナムカノンそれでは民を欺く事になるのでは?」
御子の誕生は国民に報せる事も王族としての義務の様なもの
それが第一子ならなおさらの事
これが第二子以降なら報告する事も無いのだが・・・
「私はファラオで有る前にあの子の父親なのだ
父親が我が子を守る事した行いが罪だと言うのならその罪は私は喜んで受け
入れよう」
アクナムカノンの意志の強さは長年仕えている自分がよく知っている
国を統治する者として我儘を言う事は難しい
そしてその立場も解る
一人の父親としての立場も・・・
シモンは溜息を吐くと
「ワシも孫のように可愛い皇女の為なら一肌脱ぎましょうぞ」
「!」
シモンの言葉にアクナムカノンは胸を撫で下ろす思いをした
皇女は『アテム』と名付けられ
翌日エジプト全土に皇子アテムとしてその誕生が報告され民は御子誕生に喜び方々で
誕生際が行われた