Recollection(追憶)-6-
それから十年の歳月が流れアテムは15歳になり
セトも17歳に・・・
カンカン・・・カキン!!
カラン・・・ズザザザ・・・
石畳を滑る剣
アテムは、己が右手首をさすりながら
「流石はセトだぜ 文武に全般において全然適わない」
「フン・・・俺は貴様を守る神官の1人だ
しかも他国において己が仕えし主が恥じぬ様に文武に秀でて当然」
何時もながらの態度にアテムは苦笑するが
「魔術・・・カーの操作についてだけ貴様に勝てぬのが不服だがな」
「オイオイ それぐらいオレに勝たせてくれよ」
ただでさえ体格や腕力等で自分は劣っているのだから
「しかし・・・」
セトはアテムの腕を掴むと
「貴様には筋肉が何故こうも付かぬ?何時までたっても華奢なままだし」
柔らかいアテムの腕を掴みながら言うと
「オレだって鍛錬を怠ってるワケじゃないんだぜ 身長もなかなか伸びない
セト並に身長が欲しいぜ」
確かにアテムの身長は小さいまま
だがそれが可愛いのだ自分並にあってみろ可愛さが半減してしまう
「アテム様 もうそろそろ御時間ですよ」
病の床に伏した父王の代わりに政務を行なう様になったアテム
昔から自由が許されていなかったのに更に奪われる時間
城下町に居るアテムの同年代の者達は色恋に現をぬかしてる輩が多い
のに生まれた場所によって生じる弊害
セトは、幼い頃アテムに出逢いその時感じた気持ちが何なのか大人に
なって解った
自分は、あの小さな存在に一目惚れをしたのだ
幼い頃自分の言葉に傷つき泣かしてしまったあの時
自分は誓った。
もう彼の涙を見たくない
彼の悲しむ姿を見たくない・・・と
自分に背を向けアイシスと共に王宮に戻るアテム
その躰を抱きしめたいと想う
許されぬ事だが彼の唇に触れたいと想う
友と言えど自分達の間には同性であり主従関係があるのだ
セトは今もアテムが皇女で在る事を知らない
アテムとの関係が崩れるのを恐れアテムの肌を見た事が無いのだ
例えアテムが衣服を脱いだとしても上半身には包帯が捲かれている
自分達が幼い頃
セトはシモンの用事で暫く神殿に行き王宮を不在にした事があり
その時王宮に居たアテムが何処かの間者に襲われ背に大きな傷を負ったらしい
間者は衛兵に取り押さえられたが自害をし主犯者が解らなくなってしっまった
今もアテムの上半身には傷を隠す為に包帯が捲かれている
アテムを傍にて守ってやれなかった後悔と
今も胸に抱く甘い恋心
そして嫉妬心
彼が成長するにつれ湧き起こる醜い感情
彼がファラオになるために王位継承権を持った女性と結婚するのでは・・・
ファラオになるためには仕方が無いのだが彼に想いを寄せている自分に
それを祝福出来るのだろうか?
きっと出来ないと想う
彼を自分だけのモノに出来たら・・・
そうすれば何時いかなる時でも彼を自分の傍に置き守れるのに
セトは、そんな考えを振り払うかの様に頭を左右に振り
自分は神官・・・
何時いかなる時でも彼を守ると決め誓ったのだ
彼が幸せであればそれでいい・・・