幻想-4-
「遊戯君 今の生活が楽しい様だね」
「ああ・・・オレには贅沢な程楽しい毎日だぜ」
「検査結果も良い数値を出しているよ」
「少しでも進行が遅くなってくれたらいいのに・・・」
病んでいる自分の躰
死は免れない
「オレって本当に贅沢だな・・・」
遊戯君 君は何一つ贅沢な事やってないんだよ
普通の人が送る当たり前の事を今君はやっているだけなんだから・・・
「・・・でね・・・・なのよ〜」
「えっ!それって武藤さん知ってるの?」
「多分 知らないと思うよ」
「その話しが決まったのって武藤さんが来る前だもんね」
何やらヒソヒソと話しているメイド達
その会話に時折自分の名前が出て来るのが気になる
「オレに関係する話しでもしているのか?」
気になり訊ねるとメイド達は困り顔
どうしようか・・・と悩んだ表情を互いに見せあいながら一人のメイドが
「今度 瀬人様の婚約者が日本に帰国されるの」
婚約者?
初めて知る婚約者の存在
一緒に居て今迄一度も聞いた事が無い
まぁ知らないのも当然かもしれない
自分と海馬の間にあるのは主従関係のみなだから
それ以上でもそれ以下でもない
メイドが言うには海馬が幼い頃に家同士で決めた事らしい
海馬は興味無い態度を取りつつも婚約者を邪険に扱う事は無かった様だ
胸の内に広がるドス黒い何か
何だか不愉快な気持ちになる
そうとは知らない海馬は先日モクバと話しあって決めた事を実行すべく
仕事を詰めに詰め時間を作ろうとしている
モクバと話しあって決めたのは、遊戯と一緒に海馬ランドに行く事
視察でよく訪れる場所だけど遊びとして来た事が無い
モクバは一度で良いから遊びで遊園地に行きたかったようだ
家族で・・・
それが望めないのなら大切な人達と来たかったのだろう
残業が続き帰宅するのも午前様
それでも遊戯は出迎えてくれる
「先に休んでいていいんだぞ」
と気遣えば
「お前を出迎えるのはオレの役目だ」
と言い張る
そんな事を言われれば嬉しさにの余り抱きしめたくなる
今夜用意されている夜食は、おにぎりと緑茶
夜遅く食べるのは躰に悪いと思うのだが遊戯が折角握ってくれたおにぎり
それを食べないワケにはいかない
束の間の時間だが落ちつく
安らげる時間
自分にとって唯一彩有る時間
そんな時間も終え遊戯は食器を片付けると退室をした
このまま遊戯を海馬の家に迎えいれたい
いや 必ず迎えいれる!!
海馬に聞きそびれたな婚約者の事
もし屋敷に来た時どう対応すればいいのだろうか?
婚約者・・・城之内静香・・・
海馬家と並ぶ財閥の令嬢
どんな女性なんだろう?
海馬の家に入る女性なのだからおしとやか女性なのだろう
互いの心は交わる事無く一夜を迎える