恋慕-3-

 


童実野公園噴水前

既に杏子と静香が2人で待っていた

「まさか遊戯さんから連絡が来るなんて吃驚しました」

「アタシも・・・しかも<遊戯>や城之内に内緒にしてくれって

どうしたのかしら?」

「お〜い!!杏子!静香ちゃん!」

2人を見つけた遊戯が大きな声で2人の名前を呼びながら走ってくる

「あっ!ゆう・・・ぎさん?」

「ゆ・・・うぎ?」

遊戯を見た2人

当初は笑顔だったのに・・・それなのに今の表情・・・

何だか戸惑っている様な

「きゃ〜遊戯久しぶり!!杏子に静香ちゃんも元気だった?」

遊戯の背後からこちらも走って来たのか少し髪が乱れている

「も〜遊戯ったら急に連絡・・・????」

ギュ〜と遊戯を背後から抱きしめるものの違和感を感じたのか微妙な

表情

「!!!!」

しかも遊戯を抱きしめている手が遊戯の胸元をまさぐるかの様な動きを

すると驚いたのか遊戯の顔が羞恥に紅く染まりだす

「まっ舞!!何してるんだ!!」

「ゆ〜ぎ!!む・・・胸・・・どっどうしたのよ!!性転換でもしたの!」

「舞さん やっぱり遊戯さんに胸が!」

舞の両手がワキワキと空を掴むかの様に動いている

胸を揉まれた遊戯は身を捩り両手で胸元を抑えながら

「オレは、元々女なんだぜ!胸があって当然だろ?」

「遊戯!あんた本当に本物の遊戯なの?」

「オレに偽者なんてあってたまるか〜」

「元々ってあんた男じゃなかったの?」

まぁ・・・遊戯が女だと知らないのも仕方が無い

記憶の世界での遊戯は、男だった(男装をしていただけです)ワケだし

器の<遊戯>も男なワケで当然遊戯自身も男と思われていたのだ

 

別にオレは一度もオレ自身を男だと言った覚えは無いぜ

 

遊戯は、何とか手短にワケを話し3人に納得して貰う

杏子は、腑に落ちない様な表情をし

舞は、人生いろんな事が起きるものと片付け

静香は、受け入れているのかどうか解らない様な感じがした

 

「まぁ立ち話も何だしウィンドーショッピングとでも行きましょうか」

歩き出した先にあるのは、童実野参道

いろんな流行の店舗が軒を連ねる

寒いけどオープンカフェでお茶を飲みながら

「そう言えば遊戯は、今何処に住んでるの?」

モンブランを口に運びながら杏子に訊ねられて

「海馬の屋敷・・・」

「ははは 社長らしいねぇ〜

もしかしてこっちに戻って来てから外出禁止でも食らってたとか?」

「おう・・・でも流石に屋敷の中だけでの生活は飽きたぜ」

「あの〜もしかしてお兄ちゃん達に逢ってはイケナイとか言われたんですか」

「静香ちゃん 相手は海馬社長だよ そんなの当然じゃない」

「あっだからお兄ちゃん達に連絡しないで欲しいって・・・」

コクンと首を縦に振る遊戯

この外出だって本当は、許して貰ってるワケじゃない

「そ〜いや 遊戯 社長と何処まで行ってるの?」

人の恋話・・・ノロケ話は、ちょっと辛いけど海馬と遊戯の話しは

面白そうなのでついつい聞いてしまう

「別に何も無いぜ・・・ただ手を繋いで抱きしめて貰ってるだけ

舞が想像しているような内容は、全く無し・・・

キスでさえ無いから・・・」

最後は語尾が消え入りそうなシュンとしてしまう

「男だったり女だったりしているオレは海馬してみれば気持ち

悪いのかもしれないぜ・・・しかもファラオ時代にオレはセトと結婚してた

ワケだし・・・」

ああ・・・そんな話し聞きたく無かった

自分の初恋の相手が女だって事にショックな杏子

しかもその相手が既婚者だっただなんて・・・

「男だったり女だったりってあの社長がそんな事にこだわるのかね?

アタシから見れば 女にどう接していいのか解らないと言う感じにしか

思えないんだけど」

「幾ら遊戯さんが昔結婚していたからって今は独身なんです

もし海馬さんがそんな事にこだわっているのでしたら心が狭すぎます!」

力説静香だが杏子達は

 

心の広い海馬君って見た事が無い様な気がするんだけど・・・

「静香ちゃん 嬉しいんだけど心の広い海馬なんて海馬じゃない気がするぜ」

「そうなんですか?」

遊戯アンタがそこで海馬君を落としてどうするの?

少しはフォローしてあげないさいよ

 

「でも社長と何処かに出かけたりしないの?」

「う〜ん 今度何処かの御偉いさんが主催するパーティに

一緒に行く事になってる」

「じゃ〜綺麗なドレスとか着るのね」

「着させてくれるかどうか・・・」

街中をウィンドーショッピングで楽しんでいる

いろんな人の目が有るがそれが何故か心地良い

オープンカフェでケーキを食べながらお茶をしたりアクセサリー

ショップでシルバーの装飾品を見たり気に入った物が有ったら

購入したり

舞や杏子から値切りのテクを見せて貰ったり

楽しい1日だった

「そうそう今度海馬Co.から新作がでるじゃない?」

「ああ・・・モクバが企画等を担当しているゲームの事だろ?」

「それってどんなゲームなの?

アタシアレのモニターするんだけど内容を聞いて無くてさ」

「オレも知らないんだ・・・ただモニターをする人は海馬Co.に集まる事

ぐらいしか・・・」

本当はオレもやりたかったが海馬からNGを出されていてやる事が出来ない

「へ〜それって海馬ランドに置く予定なの?」

「一応 ゲーセンにも置く予定らしいぜ」

「うわ〜どんなゲームなのか楽しみです!」

きっとお兄ちゃん達も喜ぶと思います!!

 

「あっもう5時・・・時間的にまだ早いけどアノ社長さん遊戯が屋敷に居ない

からって早く帰宅するかもしれないわね

アタシが屋敷まで送ってあげるね」

そう言うと遊戯達を連れて街外れに有る駐車場へ車を取りに行く

 

すぐに海馬邸に送られるのかと思いきや4人でドライブへ・・・

オープンカーの風を満喫した後 海馬邸の門前まで送ってもらい

遊戯は、舞の車が見えなくなるまで見送り屋敷内に入った

 

「お帰りなさいませ遊戯様」

「ただいま 御風呂に入れる?」

「何時でも御使い出来る様に用意しております」

恭しく頭を下げる大門の前を通りすぎながら

「海馬の帰宅予定って聞いてる?」

「いえ 何の連絡も御座いません」

「そう・・・」

 

 

 

シャ〜

やや熱いめのお湯を頭からかぶり傍にあったシャンプーで

頭をゴシゴシと洗い出す

 

パーティか・・・まぁオレにはドレスなんて似あわないし海馬も着せる気無いだろう

 

 

「瀬人様御帰りなさい」

「大門 遊戯は帰ってきているのか?」

「はい 遊戯様でしたら御部屋に居られる筈です」

「そうか」

急ぎ足で部屋に向う海馬

正直 遊戯が帰宅しているのか不安なのだ

自分の承諾無く遊びに出かけた遊戯

もしかしたらそのまま泊まって来る可能性だってあるのだ

それに女どもと逢うと言いつつ<遊戯>や城之内と逢っている可能性だって有るのだ

室内に入れば遊戯の姿が無い

ソファに置かれているコートを見つけ遊戯が帰宅している事が解るが姿が見えなければ

意味が無い

コートだけ着替えセキュリティーをかい潜り外に出た可能性だって有りうる

遊戯にしてみれば海馬邸のセキュリティーはゲームの一種でしかないのだ

その所為で海馬邸のセキュリティーは日々進化を遂げている

カタ・・・

タオルを頭を拭きながらバスローブを身に纏った姿で現れた遊戯

その姿に海馬の心臓は高鳴り血圧が上がるのが解る

 

タオルの隙間から見えるスーツ

遊戯は頭から被っていたタオルを首にかけると

「海馬お帰り 今日は早いんだな」

本当に舞が言う通り早く帰宅してくるなんてオレってそんなに信用が無いのか?

「今日は仕事が早く片付いたからな

貴様何時までそんな格好で居る気だ?早く服を着ろ」

目のやり場に困るのだ

自分から目を反らす海馬に何だか違和感を感じつつも遊戯はクローゼットから服を取り出し

着替える

ラフな服を身に纏い部屋を出ようとしる遊戯を海馬は

「何処に行くつもりだ?」

「夕飯食べに食堂に行くんだぜ?」

「それなら部屋に運ぶ様に言っておく」

「モクバだって居るんだ 一人だけ食堂で食べるなんて寂しいぜ」

普通の家庭より広い部屋で食べる食事・・・

どんなに美味しくたって一人だと味気ない

それを知っているから遊戯はモクバと出きる限り食事を供に取る様にしている

「海馬も来いよ たまには3人で食べようぜ」

腕を掴まれ促されるまま食堂へ

既にモクバは席に着いている

遊戯に連れられ姿を現した兄に驚きながらもその顔は嬉しそうだ

食事中 モクバは一日あった事を嬉しそうに報告すると遊戯は相槌を打つ

余り見る事の無い光景

普段からこの2人は、こんな感じなんだろう・・・

フト思い起こせば遊戯がニ心同体だった頃時折屋敷に泊まりに来ていた時も3人で食事を

取ればこんな風だった様に思える

食事を終えモクバは宿題が有るからと部屋へ急いで戻って行く

モクバなりに気を使っているのだ

 

 

食事中に遊戯の口から今日の事が聞けなかった

「遊戯 俺の承諾無く何処に行ったのだ?」

「童実野参道でウィンドーショッピングにオープンカフェでお茶をしてその後舞の車でドライブ」

簡単にまとめて言う遊戯

「凡骨供とは一緒じゃないんだな」

「しつこいぜ海馬 そんなにオレの事信用出来ないのか?」

幾分不機嫌になって行く遊戯の表情

「オレだってたまに屋敷の外に出たいぜ」

これじゃ古代での生活と何等変りが無いぜ・・・

 

遊戯の言いたい事も解る

この世界に蘇ってから自分達は何処にも行ってないのだから

「今度のパーティまで待つ気はなかったのか?」

「パーティって・・・それをデートの代わりにするつもりなのか?」

そんなつもりは無いけど2人で出掛ける事には代わりは無い

それに屋敷の外と言うのならこのパーティも屋敷の外なのだ

ソファから立ち上がると遊戯は寝室に向う

「ゆう・・・」

「オレ疲れたから寝る・・・」

それだけを言い残し遊戯は寝室に入って行ったのだった

 

 





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