恋慕-4-

 


全く海馬はオレの気持ちなんておかましなしなんだな

相棒とニ心同体だった頃の方が御互い早々に逢えない分2人でよく出掛けたと思う

この時代に復活して自分は何をしたかったのだろう?

そう想うと胸の辺りが苦しくなる

 

暫くして寝室に来た海馬

スヤスヤ眠る遊戯の髪を梳きながら

「俺は、どうすればいい?」

どうすれば貴様を・・・

 

 

 

 

数日経ちパーティ当日

メイドが持って来た衣装に遊戯は愕然とする

その手に有るのは紺のタキシード・・・

今の自分を否定された気分だ

あくまでも自分を男だと信じたい海馬の気持ちだと感じた遊戯

溜息を吐きつつも袖に腕を通す

 

きっと否定してタキシードに手を通さないかもしれないと思っていた海馬

遊戯のタキシード姿を見て受け入れた事に安堵する

車に乗り込みパーティ会場に向う最中遊戯は海馬の方を見る事無く車窓を流れる

景色ばかりを見ていた

しかも2人とも距離を持ったまま

海馬としては遊戯の体温が感じる距離に居て貰いたい

その細い腰に腕を伸ばし引き寄せ様とした時

「そ〜言えば明後日だったな モクバが企画したゲーム・・・舞がどんなゲームなのか

聞いていたぜ」

自分の方を見る事無く話しかける遊戯

その声は幾分不機嫌そうに聞こえる

「貴様も知りたいのか?」

「興味は有るけど知るつもりは無い 発売されるのを待つだけだ」

「買わずとも貴様が望めば用意してやるぞ」

「それは結構だぜ 欲しいものは自分で買うから」

遊戯のその言葉に不愉快な気持ちになる

それに遊戯が日本に来てからデュエル大会に出たワケでも無く

また仕事をしたワケでもないのにどうやって自分で買い物が出来ると言うのだ?

「オレがお金持ってたら不思議なのか?」

「フン 収入の無い貴様がどうやって物を購入するのか・・・収入源があるのなら知りたいね」

「オレがニ心同体だった頃に貯めた貯金をイシズに預けていただけだぜ」

相棒が何か有った時の為に貯蓄する事を勧めてくれた

 

君は必ず僕達が居るこの世界に戻って来る

そうしたらいろいろと出費があるからね

備え有れば憂い無し

 

笑顔で自分の復活を信じてくれる相棒

その相棒の言われるがままお金を貯めそれをイシズに預けていたのだ

 

予想外な出来事に眩暈を覚える海馬

あの女ならそこに利息を着けているかもしれない

それに遊戯程名の有るデュエリストなら招待されただけでも収入になった筈・・・

自分の知らない所で知らない事が起きていたとは迂闊だった

 

パーティ会場に着くと海馬は遊戯に手を差し出し車から出るように促すが遊戯は

その手に触れる事無く車から降りる

男が男の手を取って降りるなんて変だ・・・とでも言うかのように

 

先々と歩く遊戯

会場に着けば綺麗に着飾った女性達が自分を売り込む為に海馬を取り囲む

そんな海馬に一瞥もくれず遊戯辺りを見渡し壁際の椅子に腰掛けた

この会場に遊戯が知っている人は居ない

もし居れば話し掛けて来るだろうから

颯爽と現れたコンパニオンは遊戯にドリンクを勧める

コンパニオンから受け取ったドリンクに口を着けながら

何度か海馬の方を見る

海馬の腕に自分の腕を絡め躰を密着させる女

それを振り解く事無く彼女達と雑談する海馬

そのな光景に苛立ちを覚える

 

海馬を無視したのは自分・・・

そして目の前の光景に嫉妬している自分

いっそうの事自分が男だったらどんなに良かったか

自分と海馬じゃつり合いが取れない

自分にはこれと言って魅力なんて無い

ゲーム以外の取り得も無い

権力も無い

与えて貰う事は有っても与える事は無い

無い々づくしの自分

それに比べて目の前の女性達は魅力的だし資産家の令嬢

教養だってあるだろう

何だか惨めな気持ちになる

そして彼女達が群がっている相手・・・海馬は若いのに大企業の社長で大金持ち

頭脳明晰で眉目秀麗

モデル並のスタイルの良さ

タキシードが似合うほど・・・それに引き換え自分は相棒が以前写真で見せてくれた七五三

海馬と自分では雲泥の差

 

一人で傷心に浸っていると

「あの 御一人ですか?もし迷惑じゃなかったら僕の話し相手になってくれませんか?」

声を掛けて来たのは、日焼けした青年

頭を掻きながら照れ臭そうに話しかけて来る仕草が何だか可愛いと思えて来る

「連れは居るけど・・・少しぐらいならいいぜ」

きっと一人で居る自分に気を使って話し掛けて来たのだろう

2人でベランダに出ての会話

 

遊戯が立ち上がり他の男と2人でベランダに行く姿を海馬は忌々しい気持ちで見ていた

この女達が居なければ今すぐにでも遊戯の傍に行くのに

他の男と話しなんてさせないのに・・・

 

「僕 こういう場所が苦手なんです 出来れば研究室に居たいんですよね」

「オレもこういう場は苦手だぜ」

青年の夢は、考古学の教授になる事

時の流れに埋もれた先人の知恵を知る事

そう言った自分の気持ち遊戯に打ち明けた

遊戯にしてみればその青年がニ心同体だった頃に見た海馬に重なる

青年の話しを聞いていて楽しい気持ちになる

暫くすると年配の男性が誰かを呼ぶ声が聞こえて来る

どうやら青年を呼んでいるらしく青年は、遊戯に話しを聞いてくれた礼を言うと男性の元へ行った

青年の通う大学の教授の様だ

 

また一人になった遊戯は、先程まで座っていた椅子に腰かける

海馬は相変わらず女性に囲まれたまま

恰幅のある男性と何やら話していたりする

胸の中に溜まるモヤモヤした感じ

退屈で息が詰りそうだ

パーティが終わるまで時間が有る

 

暫く静かな場所で気持ちを落ち着かせよう・・・

一言海馬に言った方がいいよな

 

そう思い海馬の方を見れば笑みを浮かべて談笑している

彼の腕には綺麗な女性が抱きついている

邪魔なんて出来る雰囲気では無い

 

目の端に写る遊戯の姿

その姿が動き出す

また誰かと?と思い少し振り返れば一人でフロアを出て行く

てっきり御手洗いに行くものだと思っていたが遊戯の足は御手洗いとは反対方向に向っている

その足が向っているのは玄関方向・・・

後を追いかけ様とするものの女性達が離してくれない

鬱陶しい貴様等に用は無い

と思いながらも邪険に扱えず

「すみません 少し用事を思い出しましたので」

営業スマイルで逃げる事にした

玄関に向えば既に遊戯の姿は、無く傍に居たボーイに聞けば駐車場に向ったとの事

海馬は急いで駐車場に向った





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