恋慕-7-
海馬の姿を見なくなって1週間・・・
その間に用意されていたゲームは全てクリアーしてしまい退屈な日々
そんな遊戯に大門とメイド達はジグソーパズルを渡した
最初は1000ピースのジグソーパズルから始めゲームより苦戦した事により
時間が掛かった
でもパズルをしている間無心になれた
次に取り掛かったのはノイシュバンシュタイン城
ノイシュバンシュタイン城は5000ピースも有り遣り甲斐があるが肩も腰も痛い
夕食は何時も通りモクバと一緒に摂る
忙しいのに自分に気を使ってくれるモクバ
でも決して仕事の話しはしない
自分が海馬と逢ってない事そして全く連絡を取ってない事を知っているから
「遊戯 たまに外に出たらどうだ?屋敷の中ばかりだと退屈だろう?」
「そうしたいのは山々だけど 海馬の許可なく外に出たら周りの人に迷惑が
掛かるだろ?」
苦笑する遊戯
迷惑が掛かるのは海馬の側近だけではない自分が会った人達にも迷惑が掛かる
可能性がある
仕事の話しにならない様に気遣ってくれるモクバに申し訳ないが
「後2日もすればモニターの方終るんだろ?」
仕事の話しに変える
海馬が何時帰ってくるのか知りたいから
「ん〜・・・でもその後色々手直しとかあるから・・・それにアノ兄さまの性格だぜ・・・」
まぁ・・・簡単には帰ってこないって事だ
モクバは屋敷に篭りっきりの遊戯の身を案じつつも時間だけが過ぎる
しかし良い案が思いつかないまま更に1週間が過ぎる
良い案が出ない原因・・・それは遊戯が兄と同様頑固な面があるからだ
そんなモクバに磯野が
「このフロッピーを遊戯様に持ってきて頂くと言うのは如何ですか?」
忘れ物もしくは言伝なら遊戯も出ざる得ない
磯野も最近海馬の機嫌が悪いのが気になっていたのだ
原因は遊戯に逢えない事・・・
遊戯に逢いたくて仕方が無いのだ
でもそれを口外にする事無く仕事をする海馬
だがそれが回りに居る者に与える恐怖とは何とも言い難い
磯野の提案にモクバは乗る事にした。
卓上に置かれたデジタルカレンダー
既に遊戯に逢わなくなって2週間・・・
その間一度も遊戯に逢ってないし連絡もしていない
遊戯が現状も知らない・・・
ただ大門から何も連絡無い所を見ると遊戯は元気なのだろう
時折 遊戯から連絡が来ないだろうか・・・と想う事は有る
「兄さま 今日も帰らないの?」
兄が帰宅する事を祈りつつ訪ねると
「今夜も無理だ」
モクバが企画したゲームだが所々海馬の手を借りないといけない
何か後ろめたい気持ちになる
そんなモクバの気持ちに気が付いたのか
「お前が気に病む事は無い それに一段落着いたら帰るから」
モクバ企画したゲーム・・・
早く完成させて遊戯にやらせたいのだ
その為にする無理無茶なら何とも思わない
ただ遊戯の喜ぶ顔が見たいから・・・
帰宅するモクバのカバンには磯野から預かったフロッピーが・・・
絶対兄さまと遊戯を逢わせるぜ
意気込むモクバ
だがその意気込みが後々厄介な事に・・・
翌朝
早速モクバは行動に移す為に遊戯に近づく
「遊戯 オレ今日朝から学校なんだ
だからオレの代わりにこのフロッピーを会社に届けてくれないか?」
モクバから手渡されるフロッピー
遊戯は、それを受け取ろうとしない
モクバの意図が読めたからだ
「磯野さんか河豚田さんにでも頼めば・・・」
「遊戯様社を往復する時間が有りましたら
その分彼等の仕事をする時間に替えさせてあげる方が宜しいかと思われます」
自分が行けば片道の時間で済む
自分が以前海馬に言った言葉・・・
何か上手く言い包められた気持ちだが
「解ったぜ」
渋々承諾
モクバが学校に行くのを見送った遊戯は大門が用意した車に乗り込む
バスで行きたいのは山々なのだが
以前バスの中で変な奴等に声を掛けられた事も有り車にしたのだ
それに車の方が早い
車窓を流れる景色
フロッピーを海馬に渡したら暫くドライブにでも行きたい心境になった
会社の入り口付近で見慣れた車を発見
遊戯の心臓が早く脈打つ
その車は遊戯にとって最愛の人の車だからだ
早く逢いたい気持ちに駆られるが何かしら心が警笛を鳴らす
「ココで止まってくれないか?」
遊戯は運転手に指示を出す
「?」
の運転手だが遊戯の指示なので従う事にした。
海馬の車から出てきたのは、その所有者である海馬だけの筈なのに
後ろから金髪のウェーブ掛かったロングのヘアーの女性
「!」
遊戯には、その女性に見覚えが有った
自分と同じデュエリストの孔雀舞
今回モクバが企画したゲームのモニターを務めた女性でもある
でもモニターの仕事は1週間前に終っている筈
それなのに何故?
しかも朝から2人して同じ車から出て来るなんて・・・
遊戯の脳裏に海馬と舞の有らぬ光景が掠める
それを否定したく頭を左右に振る遊戯
どうやら海馬は、此方の事には気付いてない様子
運転手も何と声をかけてイイのか解らない
「ココで待っていてくれ」
それだけを言い残し遊戯は会社の中へ入って行く
遊戯は社長室に向う事無く受付けへ
「遊戯さま!」
久しぶりに会う受付嬢
未だ自分が二心同体だった事よく会った女性だ
「お久しぶりです」
綺麗な御辞儀で遊戯を出迎える彼女に遊戯は
「海馬に渡したいモノが有るんだが・・・」
「それでしたら社長室に連絡を入れますね」
「あっ・・・違うんだ・・・その秘書の人に渡して・・・」
「今の時間でしたらたぶん社長に御逢いできますよ」
「いや・・・いいんだ・・・」
あくまでも海馬に逢う事を否定する遊戯に受付嬢は秘書課に電話を入れる
「磯野さんですか?遊戯様が社長に渡して欲しいモノがあるそうなんですが受け取りに
来てもらえますでしょうか?」
気が気でない・・・磯野では無く海馬が来たらどうしよう・・・何て顔をすればいいんだ?
先程見た光景と自分の脳裏に過ぎった光景
どうすればイイのか解らない
「あっ!!遊戯様!!」
受付嬢が電話をしている最中に遊戯は、社を飛び出し待たせている車に飛び乗った
受話器越しに慌てる受付嬢
磯野は急いで受付に向うが既にそこには遊戯の姿が無く
遊戯が置いて行ったフロッピー入りの封筒が在るだけ
その封筒を手に磯野は海馬の元に行った
「何!遊戯が!」
社長室に入れば書類に目を通す海馬の姿とソファで雑誌を読む舞の姿
何故こんな朝から彼女の姿が?
それにモニターの仕事は既に・・・もしかしたら最終チェックにも携わる気なのか?
「それで遊戯は?」
「はっ・・・そのフロッピーを届けに来られた後帰宅された様です」
その言葉に意気消沈してしまう海馬
遊戯が来た事で自分に逢っていくのだろうと期待したから
もしかしたら忙しい自分に気遣って逢わないのだろうか?
それなら気を使わないで逢って行けばいいのに・・・
急に遊戯に逢いたくなる気持ち
「社長 まだ遊戯に言ってないの?」
「貴様には関係無い」
「ふ〜ん」