廻り逢い-3-
車が家の近所まで来た時 遊戯には見慣れた車が・・・
「海馬ココで降ろしてくれないか?」
急に強張る遊戯の表情
「外は、今尚雨が降っているが?」
「それでも・・・」
「このままコイツの家前まで行け」
そう運転手に指示を出す海馬
「海馬!!」
遊戯の顔色が変ったのは、目の前のシルバーの車を見てから
何かしら理由持ちの様だが・・・
まぁ遊戯を手に入れる口実低度になれば・・・
車は遊戯の家の前に横付けされると出入り口付近には、ガラの悪い男が数人
扉を叩きながら何かしら罵声を吐いている
海馬は無表情のまま車を降り後部座席に居る遊戯を抱き抱えると男達の傍に行き
「邪魔だ失せろ」
相手を見下す
ガラの悪い男達が海馬に詰め寄りながら
「あぁ〜?兄ちゃん今なんて言うた?邪魔??俺達は、貸したものを返してもらう為に
わざわざココまで来てやってんだよ?」
「それを邪魔とは、だったら兄ちゃんがココん家の借金払ってくれんのか?」
「いいだろ 借用書を見せてもらおうか」
「か・・・かい・・・」
「貴様は黙っていろ」
「兄ちゃんココん家の借金って兄ちゃんの小遣いで返せる程安くないよ」
そう言いながら借用書のコピーを海馬に見せると
「金利は幾らだ?まぁ貴様等の様な下等な生き物の事だ大方法廷外金利なのだろうが」
鼻で笑う海馬に男達は
「はぁ?俺達の場合は金利40%って言う親切設定なんだぜ?
第一この金利でお金を貸してくれって泣き付いて来たのは、ココん家の爺さんなんだぜ」
闇金で借りた金は、大方遊戯の治療費に宛がわられたのか・・・
海馬の脳裏には、遊戯を獲得する為の幾種の道が今一本に絞られた
名実と供に遊戯をこの俺の手中に・・・
「磯野」
「はい」
「今すぐ金を用意しろ そのさい法廷金利で計算し過不足を確認の上で払え
払い過ぎているようなら取り立てろ ただし容赦するな」
海馬は遊戯の方を見ると
「貴様の爺さんがこいつ等の所で金を借りた後変なダイレクトメールみたいなのが来なかったか?」
「変な?多重債務の人に金を貸すとか弁護士を紹介するとか?そう言った感じのか?
それなら来たぜ 爺ちゃんそのこに書かれていた弁護士に相談してたみたいだけど・・・
ってまさか・・・」
「そのまさかだろうな 裏で下衆共と繋がっている可能性は在るな」
「おいおい 俺達がんなのと絡んでるワケね〜だろ?」
急に焦りだす男達に海馬は確信する
「そんなのは調べれば簡単に解る事 取り急ぎ調べる必要性は無いだろうが・・・」
後ろに控えている運転手が軽く肯く
瀬人に直接仕える者達の仕事は一つでは無い何かしら兼任しているのだ
かく言う運転手も・・・
「芋づる式に貴様の家を鴨にしている奴等が一気に捕まるか海のモクズとなって消えるか」
「おやおや?穏やかじゃない発言ですね」
シルバーの車の後部座席から降りてくる一人の男
目の前に居る男達とは違い知的で紳士的な感じがする
「ここは取引といこうじゃないですか?」
「取引?」
「そう 私達がこの家に2度と手は出さない その代わり貴方達も我々の事に関わりあいにならない
それなら別にいいでしょ?」
「そうだな だが貴様等が手を出さないだけであって貴様等の組織が手を出さないワケでは無い
いっそうの事貴様等の組織もそれに順ずる組織もこの家や家族には手を出さないと約束しろ」
海馬の余りの言い様に紳士的な男の表情が一瞬凍る
「出来ないと言うのか?取引の話しを持ちかけて来たのは貴様等の方だぞ?」
明らかに海馬の方が場慣れしている
コイツの人生は、一体・・・
遊戯は自分を抱き抱える男の顔をマジマジと見る
遊戯の紅い瞳が自分に向けられ気持ちが昂揚してくるのが解る
その紅い瞳にもっと自分を写して欲しいと思ってしまう
「我々の様な末端にそんな権限が在ると思うのですか?」
「権限なんぞ貴様等如き雑魚に与えられるワケが無かろう」
「それを承知で・・・貴方は、とんでもない人だ」
「兄貴に対して何て言う口の聞き方してんだ?」
「お前等は、手を出すな コイツに手を出せば間違い無く俺達は消される」
男の目は海馬の心内を読み取ろうとしているが海馬の表情からは何も読み取れない
寧ろ冷気を感じるのだ
そして直感する「この男は危険」だと・・・
「君は、恐ろしい男に魅入られた様だね 彼は我々より幾多の修羅場を潜りぬけた者の目をしている
カタギのままでいたいのなら彼とは縁を切る事を勧めるよ」
そう言いながら立ち去る
ガラの悪い男達もイソイソと立ち去る
「兄貴 本当に良いんですか?」
「あの男と関わりあいになるな 俺達程度のチンピラ如き消し去るのは朝飯前だろうからな」
背筋が凍る思いがした
きっと自分達より多くの屍を乗り越えてきた様に思えたのだ
だが上の方に何と言い訳をしようか考えてしまう
「海馬・・・ありがとう・・・」
自分の腕の中安堵した様な
それでいて今尚不安を入り混ぜた様な複雑な表情を見せる遊戯に
胸の鼓動が鳴り止まない
遊戯にも伝わってくる海馬の胸の鼓動
それは恐怖からくるものだと思ったのだろう
「怖い思いさせて済まなかったぜ・・・」
申しワケなさそうな顔に更に胸が高鳴る
「このままでは貴様の躰が冷えてしまう 早く中に入るぞ」
外は今尚雨降り状態
確かに躰が冷たい・・・
外の喧騒が無くなった事に気が付いた遊戯の祖父が恐る恐る扉を開けると
孫の姿が・・・
しかも見なれない男に抱き抱えられているでは、ないか
急ぎ扉を開けると
「遊戯 お帰り!!何処も怪我をしてないか?」
「爺ちゃん ただいま」
心配そに出て来る祖父に遊戯は明るく応える
「怪我なんてしてないぜ」
祖父は自分を抱き抱えている存在を見ている事に気が付いた遊戯は
「こいつ この前転校してきた海馬瀬人って言うんだ
杏子達用事があって先に帰ったんでコイツが送ってくれたんだ」
「おお!!そうでしたかワシは、この子祖父武藤双六と申します
孫が世話になり有難う御座います」
頭を下げて礼を言う双六に
「ココでは、コイツの躰が冷えるので中に入らせてもらう
磯野この老人に遊戯の車椅子を預けろ」
そう言うと海馬は勝手に靴を脱ぎ遊戯の家に上がって行く
「貴様の部屋は、何処だ?」
「えっ・・・あっ・・・2階だぜ」
そのまま階段を上がろうとしたが
「その前に礼を言わせてくれよ」
「礼?」
「今回の事家族にも説明したいし・・・その・・・リビングまで運んでほしい」
今回の事・・・玄関先での出来事・・・
海馬が自分達の借金を肩代わりしてくれた事を家族に報告したい
「いいだろ・・・」
家族の前で名実と供に遊戯を手中に納める
遊戯に案内されてリビングに向うがその前に
「貴様の家は確か店舗兼居住になっていたな」
「ああ そうだぜ」
「リビングに行く前に店の方を見せてもらおう」
「殆どやってないぜ・・・」
債権者の脅し故に店を簡単にあけられないでいるのだ
それ故に家計は火の車
生活の為に更なる借金を増やしてしまうと言う悪循環
それでも海馬は、構わないと言う
店舗の方を案内すると
海馬でも見た事の無いゲームが並べられている
商品の陳列も何を見せたいのかハッキリしていて見易い
営業妨害さえなければ売上も相当あっただろう
「あの海馬・・・」
何時まで経っても動く気配の無い海馬に声をかける遊戯
その声に我に返る海馬
「そうだったな」
遊戯を抱き抱えリビングへ