紅玉-至高の宝-3


瀬人が乗る馬に一緒に乗せられた。

恥かしいから別の馬に乗ると言ったのに聞いて貰えなかった。

瀬人と言う男がどういう男なのか解らない。

何故記憶の無い自分をこんなに大切にしてくれるのか・・・自分は、彼に仕える従者の1人でしか

ないはずなのに・・・

背中に感じる瀬人の温もりに何故かドキドキしてしまう。

 

今日の視察は、今建設中の神殿の着工具合を確認する為のモノ。

別に遊戯が同行しなければならないと言うワケでもない。

建設中の神殿の規模に遊戯は、驚いた。

普通の神殿より2倍程の大きさがある。まるで宮殿の様に見えてしまう。

瀬人に寄り添う遊戯。

皇帝が建設中の神殿の視察に来ると言う事で市民が野次馬の如く集まって来ている。

その野次馬の中でフードを被った一人が遊戯の姿を見止めて慄く。

「おい!!貴様それ以上・・・」

兵が荒げる声に瀬人は、遊戯を自分の背に隠し剣を抜く。

「遊戯様!!遊戯様!!」

深々と被っていたフードが後ろに捲れた。現れたのは、小柄な老人。

老人は、兵によって地面に倒されながらも遊戯へと手を伸ばす。

「貴様それ以上 皇帝陛下に近付くな」

老人めがけて切りかかろうとした兵に対し

「待って下さい。その方は、皇帝陛下に用があって来たのでは、無い。オレに用があって来たのだ。

剣を納めてください」

瀬人の後ろから姿を現した遊戯は、そのまま老人の元へと行こうとする。

瀬人は、その老人がウィザース国の間者だと気付き遊戯を近付けまいとするが遊戯は、身をかわし

老人に近付くと

「大丈夫か?怪我は、無いか?」

遊戯は、老人に近付き起こしてやると老人は、遊戯の手を掴み

「ワシの事を御忘れですか遊戯様」

大粒の涙を零す老人。

逢った事が有るのだろうが思い出せない。

「すまない。オレには、記憶が無いんだ」

寂しそうな遊戯の顔。

「あんたは、オレの失われた記憶を知っているのか?」

「知っていますとも・・・貴方様は・・・」

老人が遊戯に真実を告げ様とした時 瀬人は、遊戯を老人から離し遠ざけた。

「瀬人様!あの老人は、オレの失われた記憶を知っているのにどうして・・・」

瀬人の腕の中、遊戯は、抗議の声を上げるが瀬人は、その声を無視しながら

「貴様は、俺の傍に居ればいい。貴様に過去なんて必要無い」

もし何等かの形で遊戯にかけた呪文が解けたら・・・

遊戯は、ウィザース国に帰ってしまう。自分から離れてしまう。

初めて自分から求めた相手。遊戯が居ない生活なんて信じられない。

もし彼が居なければ自分の世界が崩れてしまう。

今日、遊戯を連れて来た事を瀬人は、後悔した。

瀬人の心中を知らない遊戯は、瀬人の横暴な態度に怒っていた。

建設中の神殿内に設けられた休憩所で瀬人は、遊戯の拘束を解くと

「俺以外の者と口をきくな。貴様は、俺のモノだ。俺だけを見ていろ。俺の傍に居ろ」

恐ろしいまでに自分を見つける瀬人に遊戯の怒りは、冷めて行く・・・寧ろ恐怖が躰中を駆け廻って来た。

恐怖?本当にそれが恐怖なのか遊戯は、戸惑った。

何故なら瀬人の蒼い瞳が自分を写し出す。自分の為に紡がれる言葉。

それに反応している様に感じたから・・・嬉しさと恐怖が同居でもしている様な感じがした。

「せ・・・と・・・さま・・・」

「誓え!俺の傍から離れないと 貴様の全ては、俺のモノだと誓え!誓わねば先程の老人の命が無い

と思え」

「そっそんなアノ老人は、関係ないだろ?瀬人様の傍に居るか居ないかは、オレの問題だろ?」

何故・・・瀬人様は、御怒りになっているのだ?

オレは、ただ自分が誰なのか知りたいだけなのに・・・

「遊戯 貴様は、俺のモノだと誓え。今すぐ誓うんだ!!」

気圧され遊戯の背から冷たい汗が流れる。

もし誓わなかったらアノ老人は、本当に命を奪われかねない。

「解った・・・誓う・・・誓うからアノ老人を助けてくれ」

こんな方法で遊戯に誓わせたくなかった。

自分は、無神論者だ。だが遊戯との廻り合わせにどれだけ神に感謝した事か。

今建設中の神殿も遊戯を廻り合わせてくれた神に感謝する捧げモノ。

もし遊戯が自分から離れたらこの神殿の意味が無い。

「イソノ!宮殿に戻る準備をしろ」

「はい」

 

 

+++++

 

古びた小屋に先程の老人と数名の男達が居た。

「シモン様 如何いたしましょう」

「折角 遊戯様が見つかったと言うのに・・・」

「まさかカイバ帝国皇帝の傍に居られ様とは」

口々に上がる落胆の声。

 

遊戯様が見つかった。この事をユギ様に御報告しなければ。

 

遊戯に近寄ったのは、ウィザース国の宰相シモンだった。

彼は、ユギに遊戯捜索の旅に出る事を自ら進言し国を出た。何年かかってでも探すつもりだった。

そんな覚悟のもと手始めに訪れたカイバ帝国。

まさかカイバ帝国で皇帝の傍近くに遊戯が居ると言う事は、驚いたが更に驚いたのは、遊戯が記憶喪失

になっていた事。

しかしどう報告をしたものか・・・今の事で皇帝は、自分に監視を付けた事は、容易に想像出来る。

どうしたモノかと考えあぐねていると小さな光。

現れたのは、ユギと遊戯が可愛がっていたクリボーだった。

シモンは、クリボーを見てある事を思いついた。

小さな紙切れをクリボーに託すとクリボーを隠す為にマントを被せた。

マントに隠されたクリボーは、その中で淡い光を発し消えた。

クリボーの行き先は、ウィザース国王子ユギの元。

 

 

 

+++++++++

 

不機嫌な瀬人に連れられ遊戯は、宮殿に戻って来た。

そしてそのまま瀬人の部屋に連れて行かれると閉じ込められてしまう。

幾重にもかけられた魔法。

瀬人は、カイバ帝国では、数少ない魔法剣士。

しかし記憶があれば幾ら瀬人が強力な魔法をかけようとも遊戯には、簡単に解いてしまうだろう。

魔法に関して言えば遊戯の方が上なのだ。

それなのに何故遊戯が瀬人の魔法にかかったのか・・・相手の動きに気を奪われ詠唱する間が無かった。

その上意識を失った遊戯に幾重にも強力な魔法をかけてある。

記憶が無いのでそう簡単に解く事が出来ない。

ドンドン!!

「瀬人様〜!!」

遊戯の叫び声は、瀬人に聞こえていた。しかしそれを無視したのだ。

何度も扉を叩くが瀬人は、遊戯を閉じ込めたまま後宮へと向う。

自分の内に溜まった怒りを発散させる為に・・・

あのまま遊戯と一緒に居たら彼を犯したかもしれない。

遊戯が来てから瀬人は、身の内に溜まったどうしようもない性欲を後宮で発散させる事が多くなった。

それは、後宮に居る女達にとっては、好都合な事。

早く皇帝である瀬人の子を身籠れば正妃となりこの後宮から出る事が出来、公の場に出る事も出来る。

我こそは、と言わんばかりに瀬人に奉仕をする女達。

そんな女達の浅ましい姿を冷ややかに見下す。

瀬人の手を自分の恥部にあてがい弄ってもらおうとする女や瀬人の顔付近に豊満な胸を持って行き

吸いついて貰おうとする女。男根にしゃぶりつく女。

瀬人にとって後宮の女は、性欲の処理の為だけの道具でしかない。

瀬人の心は、今自分の部屋に居る遊戯だけに向けられている。

(遊戯・・・どうすれば貴様は、俺から離れない?その身に俺を刻みつけたら俺の傍を離れなくなるのだ

ろうか?)

その頃遊戯は、瀬人の部屋の扉に靠れかかっていた。

どんなに叩いても誰もこの扉を開けてくれない。

「瀬人様・・・貴方には、記憶が無い者の苦しさなんて解らない・・・」

オレは、一体何処の誰なんだ?アノ老人は、誰?アノ老人にもう一度逢いたい。

逢ってオレが何処の誰なのか教えて貰いたい。それさえ知る事が出来たら・・・知る事が出来たらオレは、

どうなるんだ?瀬人様の傍を離れるのか・・・それともこのままココに居るのだろうか?

 

 

暫くして瀬人が自分の部屋に戻ると遊戯は、部屋の隅で蹲って眠っていた。

眠る遊戯をソ〜と抱き抱えるとそのまま寝室に向う。

(俺のベッドを使えばいいのに・・・)

ベッドを使う事に抵抗があるのならソファの上でも寝る事が出来ただろうに。

まがりなりにも遊戯は、ウィザース国の王子なのだ。愚民共の様に床の上で寝る必要なんてないのだ。

ベッドの上に遊戯を寝かせると頬にかかる金糸の様な髪を避け柔らかい頬に触れる。

そのまま手を横に滑る様に移動させると小さな淡いピンク色をした唇に触れる。

指先を少し口の中に入れれば温かい湿った感触が・・・

瀬人は、遊戯を城に連れて来てから一度も彼に唇に触れた事が無い。

彼の唇に自分の唇が触れた時、自分は、そこで我慢出来るとは、思ってないから・・・その先を求めて

しまうかもしれない。彼を汚したくないのだ。

それに彼に触れる事によって嫌われたら・・・もしそれが原因で城を飛び出したら?そう思うと出来ない。

何時の間にか自分は、彼に対し臆病になっていた。

臆病な自分を苦々しく想いながらも何処かその感情を楽しんでいる自分が居る事に呆れてしまう。

彼の柔らかい頬に触れただけなのに自分のオスが反応してしまう。

 

遊戯 貴様に触れただけで俺のモノが立ってきたぞ・・・

 

遊戯を汚さない為後宮で性欲処理をしてきたと言うのに。

瀬人は、眠る遊戯の手を自分の股間にあてがい

「遊戯 解るか?俺がどれだけ貴様を求めているか・・・」

呟く。

(全くこの性欲処理をしたと言うのに・・・これでは、意味が無いだろう?)

寝る前にもう一度抜いておかないと性欲に負けて彼を犯しかねない。

(貴様と言うヤツは、罪深いヤツだな)

そう思いながら瀬人は、室内に設けられた浴室に姿を消した。


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