捕われて-4-
室内に連れ込まれた遊星は、部屋の数に驚きながらも室内の広さに驚いていた。
10畳近くあるキッチンにリビングを含め部屋数は、6部屋程あるかもしれない。
こんな広い場所をもしかしてこの男1人で使っているのか?それともサティスファクョンの幹部も一緒に使って
いるのか?疑問を抱いてしまう。
否もしかしたら同棲している人が居るのかもしれない。
自分は、彼の愛人みたいな存在なのかもしれない。
主と本命と2号の3人での共同生活・・・。
次第に膨らむ妄想に遊星は、パニックに陥りそうになる。
「何をボっさて居る?」
「あっいや・・・何でも無いの。ただ余りの広さに呆気に取られていて・・・」
まさか三角関係を想像しただなんて口が裂けても言えない。
「お前 料理が出来るのか?」
「えっ?」
「料理が出来るのか?と聞いたんだ。」
「出来るけど・・・」
「だったら何か作ってもらおうか」
「何か・・・って何・・・」
「コッチに来い。」
ジャックに言われるがまま遊星は、彼の後を着いて行った。
キッチンで
「ココに在る食材や調味料を使って何か作ってもらおうか」
大きな冷蔵庫に大容量の収納棚。
きっと主婦の人なら喜びそうなシステムキッチン。
遊星は、一先ず冷蔵庫を開け食材の確認を行う。
冷蔵庫内にびっちり入った食材に飲み物。
(こんなに買い込んで・・・この人の食欲って・・・)
って思ってみたものの良く見ればどの食材も真新しい。
どれも未開封なのだ。
収納棚に入っている調味料も未開封な上に調理器具も使われていた形跡が無い。
まるで1人暮らしを初めてする人の様に。
疑問が湧いて来るが今は、そんな事に構ってられない一先ず先に夕飯の準備なのだ。
だがいきなり連れて来られて何か作れと言われても難しいモノがある。
少し考えて野菜庫から人参とジャガイモと玉葱を取り出しチルド室から牛肉を取り出す。
調味料が置かれている棚の所には、いろんなメーカーのカレールーが置かれていたのでその中から1種類を選ぶ。
パッケージには、『中辛』と書かれている。
彼の好みの味なのだろうか?
そんな事より早く調理しないと・・・。
手際良く野菜を捌きながら鍋の中へと入れて行く。
遊星は、炒めるより煮込む方を選び鍋に水を張りグツグツと煮込みだす。
その間にもお米を砥ぎ炊飯器にセットし野菜庫から数種類の野菜を取り出し刻み野菜サラダを作り出す。
その光景をキッチンの入り口付近で立ちながらジャックは見ていた。
ジャックの視線が気になるのか
「そこで見て居ないで向こうで何か別の事してたらどうなの?」
思わず声をかけてしまう。
「女がキッチンで作業する姿は、見ていて気持ちが良いものだ。」
そう言うと遊星に言われるがままジャックは、リビングへと移動した。
今迄そんな事を言われた事が無いので思わずドキッとしてしまう遊星。
(な・・・何よ・・・男だってキッチンで作業する姿は、いいものよ。)
料理人には、男が多いのだ。
カレーを煮込んでいる間にテーブルの上にサラダや食器を並べる。
炊飯器からピーと音が鳴り炊き上がりを知らせる。
皿を用意し御飯をよそいカレーをかけてテーブルへ。
「夕飯の用意が出来たんだけど・・・」
とソファの上で寛ぐジャックに声をかける。
まるで夫婦の会話をしている気分になってしまう。
ジャックは、ソファから立ちあがるとテーブルに向う。
その頃を見計らって飲み物を用意するとジャックの向いに座る。
黙々とカレーを食べるジャック。
美味しいのか不手のか何も言って来ない上に無表情。
作った手前味が気になって仕方が無い。
「・・・あの・・・味どう?」
恐る恐る聞いてしまう。
「どう?とは?」
「美味しいのか美味しくないのか・・・」
「旨いが。」
「良かったぁ〜。」
思わず胸を撫で下ろす。
「そんなに味なんか気になるのか?」
不思議そうに訊ねて来るジャックに
「勿論よ。だって人に手料理を食べて貰うなんて両親や従姉妹以外では、初めてだから。」
だがその両親は、既に他界しており従姉妹も何時会うのか解らない。
自分で作ったモノは、自分で食べるしかないのだ。
「ほ〜。他人で初めてお前の料理を口にしたのが俺なのか。」
血縁者は、仕方が無いとして他人では・・・そう解ると気分が良い。
ジャック自身今迄料理なんてした事が無い。
食事は、行き付けのバーで出して貰うかチームの者と食べに出るかだった。
たまにチームの追っかけをしている女性から差し入れを貰うぐらい。
特定の誰かに作ってもらう事が無かった。
遊星を初めて見て気になり己が手中に治めると決めた時、食材や調味料に調理器具と揃え出した。
これで遊星を手中に治められなかったら只のゴミでしかない。
食べ進めて行く内に皿の上は、綺麗になってしまい何故だかもう一度食べたくて遊星に皿を突き出した。
その皿を驚いた表情で遊星は、受け取りよそいに行く。
正直ジャック自身も驚いて居た。
今迄『おかわり』なんて酒以外でした事が無かったからだ。
遊星のカレーが格段に美味しいと言う訳では無い。
味で言えばプロが作ったモノの方が美味しい。
だがもう1皿食べ様とは、思わない。
なのに遊星の作ったカレーは、どういうワケかもう1皿食べたいと思った。
「これぐらいでいい?」
おかわりの分量が解らない遊星は、1皿目より少なめにカレーを盛り付けて出して来た。
「ああ・・・構わない。」
・・・ほんの少し前・・・
ジャックに『おかわり』を意味する皿を突き出され遊星は、驚いていた。
まさかお代わりをされるとは、思っても見なかったのだ。
ジャックから皿を受け取りキッチンへ向うとジャックから見えない場所で思わず笑みを浮かべてしまった。
嬉しかったのだ。自分が作った料理を誰かに食べて貰える嬉しさと無言だったとは言えお代わりをされる嬉しさ。
自分がアンティでココに居る事を忘れさせられそうになる。
2皿目もジャックは、黙々と食べていた。
言葉数が少ないのは、少し寂しいけど慣れればきっと会話は増える筈。
そう信じながら後片付けをする。
遊星が後片付けをしている間にジャックは、シャワーを浴びる。
片付けを終え遊星もシャワーを浴びたいと思ったが急にココに連れて来られたので着替えが無い事を思い出す。
どうしたものか・・・と思いながらも遊星はジャックに
「シャワーを浴びたいのだけど・・・私着替えとか持って来てないの・・・明日着替えを取りに自宅に戻っていいか
な?」
きっと「ダメだ」と否定されるだろうと思いながら声を掛けるとソファの上で寛いでいるジャックが遊星に手招きを
する。
招かれるままジャックの傍に行くと腕を掴まれ抱き寄せられる。
「俺がそんな事を許すとでも思っているのか?着替えなら明日俺が用意してやる。」
案の定否定されてしまう。
ジャックの隣に座りながら下着の替えをどうしようかと考えていると
「男が傍に居ると言うのに考え事か?余裕が有るんだな。」
ソファの上に押し倒され吐息まで奪われる様なキスをされる。
上手く呼吸が出来ない遊星は、直に息が上がってしまいジャックの躰の下で藻掻き苦しんでしまう。
何とか彼の躰を押しやろうと試みるも酸欠状態では、腕に力が入らない。
解放された時は、荒い息を吐きながら全身から力が抜けきりだらしなく肢体を投げ出していた。
ジャックの唇は、遊星の耳で悪戯を開始していた。
耳の中を舌で舐めたり耳朶を甘噛みしたり。
擽ったいのか遊星は、首を竦めたり首を左右に振り抵抗をするが、それが楽しいのか止めて貰えな
い。
唇が頬を伝い顎の所まで来ると軽くだが数回噛まれてしまう。
顎に悪戯をすると首筋へと移動し強弱を付けて吸い出す。
遊星の健康的な肌理細やかな肌に付く紅い花弁。
それを見ていると彼女が自分のモノだと言う満足感に支配される。
このまま行為を続けたいが如何せんココは、ソファの上。遊星を味わうには、狭すぎる。
もっと広い場所で遊星を味わいたい。
ジャックは、身を起こし遊星を横抱きに抱き上げる。
「あっ・・・」
「場所を移動するだけだ。」
遊星に悪戯をしている最中に肥大しだした己が雄。
その雄の欲求を無視して寝室へと向う。
まだ悪戯の段階でこの状態なら遊星の中に入らずして達してしまうかもしれない。
そんな恐ろしい事なんてゴメン被りたい。