捕われて-11-


数十分前まで時間が遡る。

ジャックが居たのは、シティから少し離れた緑広がる静かな場所。

手入れの行き届いた緑の中に整然と立ち並ぶ墓石群。

捜し求めた墓石の前に立つ。墓石に刻まれているのは『不動家』・・・。

遊星の両親が眠る場所。

「挨拶が遅れて申し訳無い。不動夫妻。」

ジャックは、遊星と過す様になってから不動夫妻の墓を探した。

仲間の力を借りれば直に解るのだが自分の力で何とか探し出したかったのだ。

「俺は、貴方方の愛娘遊星と一緒に住んでいるジャック・アトラス。」

ジャックは、片膝を着き手を合わせ黙祷をした後ゆっくりとした口調で話し出す。

「一緒に住んでいて今更なのだが遊星を俺に譲って欲しい。アイツを必ず幸せにする。」

ぶっきらぼうだが心からの願い。

頼んだとしても答えなんて返って来ないのは重々承知。

それでも報告・・・否 許しを請いに来たのは、ケジメを付けたかったから。

どんな理由であれ自分は、まともな方法で遊星を手に入れたわけでは無いのだ。

「貴方方が生きて居られる内に遊星に出逢い承諾を得に行けば貴方方は、俺に遊星を託してくれただろうか?」

ドラマの様に猛反対されるだろうか?それとも心広く快諾してくれるのだろうか?

そんなやり取りをしてみたかった。

だがよくよく考えてみればそれは、遊星がジャックを受け入れた時の話しであって今のように受け入れてもらえていない

状況では、唯のストーカーでしかないのかもしれない。

寧ろ「娘を返せ!!」と怒鳴り込まれる可能性の方が高いだろう。

そんな事を考え出すと自ずと苦笑せずには、居られなくなった。

それでもどんな状況下でも遊星の両親に会い話しがしたかった。

ジャックは、その後何を話すのでも無く暫くは墓前の前でただただ時間を過していた。

 

 

 

 

どれだけの時間が過ぎたのか解らないが

「時間が在ればまた来させていただこう。その時は、遊星と一緒に・・・」

遊星が自分を受け入れてはれて恋人同士になった時、その報告をする為に・・・

 

ジャックは、墓地の駐車場に止めている自分のD・ホイールに乗りエンジンを吹かし走らせる。

向かう先は、当然の事だが自分の心を占めている相手遊星の元へ。

自分の気持ちを打ち明ける為に。

自分を受け入れてもらうために・・・

 

だがその時、遊星がどんな目に遭っているとも知らずに・・・


戻る | -10- | -12-