捕われて-15-
「!!」
一瞬何かしら大きな力が弾けるのを感じた。
力と言うより意識だと思う。
見知った者の様な・・・
アキは、何か・・・否確実に知っている自分の意識を感じた。
「ゆ・・・」
「遊星の身に何か起きた様だ!!」
アキの言葉を遮りジャックが告げる。
(えっ・・・どうして・・・)
ジャックに遊星の危機を察する事が出来たのだろう?
ジャック自身は、超能力者じゃないのに・・・
(幾ら互い強く想いあっていてもそこまで解るなんて有りえない・・・彼は、まだ覚醒していなのと言う事なの?)
疑問を抱いてしまう。
「アキ何を考えているんだい?今は、余計な事を考えている場合じゃない。遊星ちゃんの事だけを考えるんだ。」
ディヴァインにそう促されアキは、一瞬自分がココに来た目的を忘れかけていた事に気付く。
「ありがとうディヴァイン。」
きっと自分の気持ちが逸れた事に気が付いて教えてくれたのだろう。
全くもって優秀な相棒だ。
「ジャック作戦を考えたのだが聞いてくれるかい?」
「何だ?」
声をかけなければ勝手な事をされるかもしれない。
そう判断したのだろうジャックに声をかけ呼び止める。
ディヴァインは、考えた作戦を話し再確認を取った。
地面に這い蹲る男共から聞き出した遊星の居所。
倉庫の正面入り口から入るのは、ジャックとアキの2人。
裏口から入るのは、ディヴァインとカーリーとアンジェラの3人。
「正面入り口から入るなんて無謀な策だと思うんですが・・・」
小声でディヴァインに尋ねると
「彼の性格を考えるとコソコソとした事は、嫌うだろうし何せあの身長。コソコソしても目立つ。
まぁ遊星ちゃんを手に入れる時だけ姑息な手を使ったんだろけどね。」
今日初めて会ったばかりの人に簡単に分析されるなんてよっぽどジャックの性格は、単純なんだろうか・・・と
思ってしまうカーリーだった。
目的の倉庫裏。
思っていた通り数人の人相の悪い男達がウロウロしている。
ただ男達の表情が一様に青褪めて何かに耐えている様に見えた。
「流石にあんな光景を目の当たりにしたら気持ち悪いぜ。」
「女の顔にあんな醜い傷を着けるなんて正気の沙汰じゃねぇ・・・」
「失禁したり立ったまま気絶しているヤツも居たモンな」
「オレだって思いだしたら吐きそうになる・・・」
「それに簡単に仲間を切り捨てる・・・あの人にとっちゃオレ達は、ただの捨て駒にしかすぎないんだろうな。」
「でもよ。仲間から抜けるなんて言ったらどんな目に遭わされるか解ったモンじゃねぇ。
オレ達は、あの人が飽きるまで扱き使われ捨てられるしかねぇんだよ。」
自分の人生を悲観している男達の言葉にアンジェラは、切れそうになるが男達が言っていた『女の顔にあんな
醜い傷を着ける』と言う内容が気になる。
「・・・にしても鬼柳さんあの女の事すげ〜入れ込んでねぇか?クィーンって言ってもよ、既にヨソの男の手に落ち
た女だろう?何でそんなに入れ込むんだ?」
「知らねぇのか?あの女本気出すとどんな猛者でも勝てねぇって言う噂があるのをよ。」
「じゃ〜よ。男の手に落ちたって言うのは、本気出して無かったって事か?」
男達は、別に裏口の見張りと言うわけでも無いようで只中で起きた出来事に胸悪くなり外に出て来ただけの
様だった。
「ディヴァインさん・・・」
「シ〜静かに」
そう言うとディヴァインは、男達に集中した。
一人の男を媒介に回りに居る男達を眠らせて行く。
戦わずして地面に倒れ込む男達。
「凄いですね。」
「余り力を使うワケには、行かないからね。」
既にココまで来るのに力を使い過ぎたのだ。
ココでまた無駄な力を使えば脱出する際に力が出なくなる可能性が有るのだ。
出来るだけ温存する方法を取らないといけない。
裏口から無事に潜入する事に成功した3人。
回りに気を使いながら目的の場所までゆっくりと確実に進んで行く。
余り気にする事無かった異臭が進むに連れ少しずつ強くなっていく。
何かを焦がした様な臭い。
「「「!!!」」」
ジャックは、アキと一緒にディヴァインが言うように表口に居た。
「貴方って喧嘩に強いのね。」
「フン。これしきたいした事では、無い」
地面には、叩きのめされた男達が寝ている。
「たした事ないね・・・」
ボソッと口ずさみながら男達とジャックを見比べる。
男達は、ボロボロなのにジャックは衣服をそれほど乱す事無く無傷なのだ。
先程アンジェラを助けた時と言いこの男は、余ほど腕が立つのだと思った。
足早にその場を立ち去ろうとするジャックにアキは、急いで着いて行く。
ジャックの心の中を読もうと試みるが全く読む事が出来ない。
まるで何か大きな壁でも在るかの様に・・・。
正面入り口から程無くして鬼柳と思われる男の姿を見つける事が出来た。
そしてその足元には、拘束され身動き一つしない遊星の横たわる姿。
顔が反対側に向けられていて見る事が出来ないがその付近には、つい先程流されたであろう血溜まりに飛沫。
ココでどんな事が在ったのか解らないが遊星が傷つけられた事に間違い無い。
第一遊星の頭の所に在る血溜まりがそう言っているのだ。
「貴様!!遊星を返して貰うぞ!!」
声高等かに宣言するジャック。
「はぁ〜?テメェは、確かサティスファクションのリーダー ジャック・アトラスじゃねぇか。
女追い掛けてノコノコと来たのか?狂気の沙汰だなぁ。」
「遊星を返せ。」
「バッカじゃねぇの?コイツは、もうオレ様の女なんだよ。テメェの所なんざぁ帰りたくないとよ。
そう言う訳でそこに居る女と一緒に帰れよ。」
「遊星を連れて帰る。」
黙って見ていたアキだったが冷ややかな目つきで鬼柳を見ながら
「お前の様な低俗なモノの言い方しか出来ない輩の元に遊星を置いて置くワケには、いかない。
遊星は、連れて帰る。」
「コイツは、帰らねぇって言ってるんだよ。第一テメェ等が来てるのに何の反応も見せてねぇだろうがよ。」
「見せてないんじゃなく『気を失っているから見せられない』と言った方が正しいと思うのだけど。」
アキの言葉に鬼柳は、チッと舌打ちした後
「そんなに返して欲しけりゃこのオレとデュエルして勝てたら連れて帰んな。」
(ココには、オレのテリトリーだ。万が一コイツ等が勝ったとしても遊星を連れて行く事なんて出来るわけねぇ)
回りに居る部下達にアイコンタクトを送ると部下達は、無言のまま肯く。