捕われて-20-


「きゃっ!!」

何の準備も無く押し倒され小さな悲鳴をあげてしまう。

「危ないでしょ!! 急にどうしたの?」

少し怒られてしまうがそんな事を気にする事無くジャックは、遊星の唇に自分のを重ねる。

ただ重ねるだけのキス。

「ジャック・・・」

彼らしからぬキス。

もっと吐息まで奪う様な激しいキスをするのに余りにも優しい。

それ以上に今の体勢に遊星は、恥ずかしかった。

まるで事を思い出させる。

顔に熱が篭る。

そんな顔をジャックに見られたく無いので遊星は、目を閉じ横を向く。

「遊星 俺を見ろ。」

恥ずかしいけどゆっくりと顔をジャックの方へ向ける。

だがジャックの顔を見る事が出来ない。

「遊星 お前の蒼い瞳を見せてくれ。そうすればお前が望む言葉を言ってやる。」

ドキッ・・・

ジャックのその言葉に恥ずかしいながらも遊星は、瞼を開けジャックの方を見る。

潤んだ蒼い瞳に魅せられる。

「綺麗な瞳だ・・・」

「ジャック・・・この恰好恥ずかしい・・・」

「恥ずかしいだと?」

そう言いながらジャックは、遊星の足を左右に広げ自分の躰を挟ませる。

ジャックの昂ぶりを感じずには、居れない。

それに今の恰好は、行為を思い出させる。

反らされる視線。

「遊星 言葉を聞きたいのだろう?」

この男は、意地悪だ。

自分が恥ずかしさの余り視線を反らす事を承知の上で恥ずかしい恰好させてたのだ。

「は・・・早く言って・・・」

言われたい・・・言って欲しい。

「遊星 お前を愛している。俺の元に戻って来い。」

耳元で囁かれた言葉。

蒼い瞳を大きく見開き遊星は、ジャックの方を見る。

言われたかった言葉・・・言って欲しかった言葉・・・

「・・・ジャック・・・」

「お前が言われたかった言葉かは、解らんが俺が言いたかった言葉だ。」

照れ臭そうに言うジャックに対し遊星は、胸元を隠していた両手を解き彼の首に抱きつきながら

「その言葉本当に貴方の心からの言葉だと信じて良いの?」

「嘘偽でこんな言葉を言える程俺は、器用な男では無い。それより遊星、今の言葉に対する返事は?」

返事なんて聞かなくても解っている。

彼女の変化した態度が全てを物語っているがやはり言葉として聞きたい。

自分が言った言葉を遊星からも聞きたかった。

だがなかなか遊星の口から返事が返って来ない。

「遊星 返事を聞かせろ。」

ギュッと力強く抱きつきながら。

「・・・言えない・・・だから察して欲しいの・・・」

私が言わないのは、卑怯だと思うの・・・一方的だって解っているから・・・でも恥ずかしくて言えない事だって

あるじゃない?

返事だって言えない事の一つだと思う。

「俺だに言わせてお前は、言わないつもりか?」

目に付いた遊星の耳朶を甘噛みをする。

「あっ・・・だって・・・」

「恥ずかしがるな。お前の返事を聞いているのは、この俺だけなんだぞ。」

解っているけど・・・やっぱり恥ずかしい。

でも返事を言わないとこのままな様な気がする。

このままでも私は、構わないけど・・・ジャックの方が・・・だってココがもし私の精神世界ならジャックは、どう

やって来たの?

非合法的な手段を用いたのなら彼の躰と精神に異常が出るかもしれない。

恥ずかしいながらも遊星は、覚悟を決める。

「今から言うからちゃんと聞いていてね。私も貴方が・・・ジャックが大好きよ。」

一世一台精一杯の返事。

余りにも緊張して躰が震えている。

「ゆうせい・・・遊星・・・」

何度も耳元で名前を呼ばれて恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちになる。

「遊星 現実の世界に戻ったらお前を抱かせろ」

「きゅ・・・急に何を言うの!?」

「お前を現実世界で味わいたいと思っただけだ。」

「思っただけって・・・思いっきり口にだしているじゃない」

一体どんな顔をしてそんな事を口にしているのだろう?

気になるが今の自分の顔を見られるのが恥ずかしいのでジャックの顔を見る事が出来ない。

「遊星 現実世界に戻るぞ。」

「ちょ・・・ちょっと待って」

「何だ?」

「私をこんな姿にしたのは、貴方でしょ?このままにして行くつもりなの?」

「俺は、お前の心を犯すつもりなんてない。」

「そんなに張りつめさせて平気なの?だってそうでしょ、現実世界に戻っても直に私に触れる事出来ない

じゃない?」

「・・・」

ああ・・・私は、何を言っているのだろう?

これじゃまるで私が欲求不満みたいじゃない。

ああ・・・この恰好が・・・この姿が私の思考をおかしくさせているのね。

一糸纏わぬこの姿が・・・

「精神体の私を抱くチャンスじゃない。」

現実世界では、精神を犯すなんて出来ない。

ジャックを精神体である今の自分に刻みつけたい・・・でも彼をこのままココに滞在させて置く訳には、いかない。

早く彼を現実世界に戻さないと。

「まさかお前から大胆に誘われるとは、思わなかったぞ」

確かに遊星が言うように自分のオスは、痛い程に張りつめている。

遊星の中に今すぐにでも入りたい。

だが幾ら彼女と両想いになったとは、言え遊星の精神体を犯してもいいのだろうか?

神聖な存在を汚す気がしてならなかった。

「後悔するなよ。」

何に後悔させるのか?

遊星自身が言った言葉か?それとも遊星に誘われ今から彼女を犯そうとしている事か?

「あっ・・・まって・・・やっぱり現実世界で・・・」

「却下だ。俺は、今お前が欲しい。お前を・・・精神体のお前に俺を刻み込んでやる。もう2度と俺の事を

忘れない様にな。」

「えっ・・・あっ・・・」

「それにお前が俺を誘ったんだ。その責任は、取ってもらおうか」

意地悪そうな笑みを浮かべ遊星に口づける。

最初は、啄む様にしながら角度を変えながら深さを増す。

 

 

 

+++

 

(遅い・・・)

ジャックが遊星の手を握り意識を失って既に2時間が経っていた。

遊星の心に呼びかける筈だったのに遊星の手を握って5分程でジャックの気を感じなくなった。

ジャックの精神がジャックの躰から抜けた様な感じがした。

「アキ他所見は禁物だ。今は、遊星ちゃんの方に意識を集中して。彼を信じてあげるんだ。」

そうジャック・アトラスを信じないと彼に遊星の目覚めを促したのは、自分なのだ。

だが何のシールドも張れないジャックの精神がもし遊星の中にあるとしたら長く留まるのは、危険だ。

最悪の場合戻って来れない可能性だってあるのだ。

もしそうなった場合自分が責任をもってジャックの精神を連れ戻す覚悟をアキは、した。

今は、深く眠る最愛なる妹の治療を最優先に考えて。


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