捕われて-21-
「はぁ〜んん・・・ん」
チュッ・・・チュッ・・・と何度も首筋を吸われてしまう。
きっと痕が残っているかもしれない。
そんな事を頭の片隅で思いながらも最愛の人から施される愛撫に身を委ねてしまう。
(肉体を使ってこの行為をするより感じてしまう・・・)
精神体を犯されている所為?
熱い・・・感じてしまう・・・
肉体を通して行う時よりも感じ過ぎておかしくなってしまいそうになる。
それは、ジャックも同じで自分の感情を抑える事が出来ないと感じていた。
唇と押しつける度に上がる声。
触れるたびに跳ねる躰。
愛撫に乱れる遊星をジャックは、今迄見た事が無かった。
「遊星 中に入るぞ。」
熱くドロドロに蕩けた場所に最大までに勃起している肉棒を押し当てるとそのまま一気に最奥めがけて突き
進んだ。
「はぁう・・・あぁぁ・・・」
一瞬苦痛に歪んだ遊星の顔。
多分無理に入れた事で痛みを感じたのだろうしかし今は、快楽が勝っているのだろう恍惚の表情を浮かべて
いる。
「くっ・・・」
自分のモノを締めつける遊星の中の良さ。
動かずにしてイってしまいそうになる。
「動くぞ」
短く宣言するとジャックは、遊星の両膝を自分の肩に乗せ動き出す。
ズチュ・・・グチュ・・・
水音と肉のぶつかり合い。
荒い息に互いを呼ぶ声。
そして熱い躰。
今迄以上に感じる。
「ああぁぁぁ・・・もう・・・もう・・・ダメ・・・イキそ・・・イキタイ・・・」
軽い痙攣を起すと遊星は、達してしまう。
それによって起こる吸引力にジャックは、軽く眩暈を起し遊星の中に放った。
全ての熱を放ち終えるとジャックは、遊星の上に躰を重ね意識無く眠る遊星の顔を撫でた。
(この俺が流されるままイってしまうとは・・・)
だがそれは、不愉快な事では無い。寧ろ心地良い。
ジャックは、遊星が苦しく無い様に躰をずらし抱きしめ汗で貼りついている髪を退け汗ばんでいる顔を撫でる。
これ程までに愛おしい気持ちになるなんて。
手放したく無い気持ちが抑えられない。
意識の無い遊星の精神体を強く抱きしめる。
そしてどうすればこの気持ちを遊星に知らす事が出来るのか悩んだ。
どれだけ眠っていたのか・・・。
数分なのか数時間なんか解らない。
ただ温かい何かに抱きしめられている事に遊星の気持ちは、安堵していた。
この温かい何かがこのまま傍に有って欲しいと思った。
だからなのか目を開けるのが怖かった。
もし目を開けてそれが思い違いだったらと怖かった・・・だが顔中に落される柔らかい感触が瞼を開けさせる
勇気へと繋がった。
「・・・ジャッ・・・ク・・・」
ゆっくりと見開けばそこには、ぼんやりとだが優しい笑みを浮かべたジャックの顔が見えた。
「やっと起きたな」
そう言うと額にキスをされる。
それが何だか嬉しいような擽ったいような気がする。
「遊星 現実世界に戻って来い。俺は、現実世界でお前に逢いたい。現実世界でお前を抱きしめたいし
お前の熱を感じたい。」
あからさまな言い様に恥ずかしい気持ちになるが
「解った・・・戻る。でも私の顔の傷が癒えるまで私に逢いに来ないで。」
鬼柳によって着けられた傷。
どれほど酷いモノなのか遊星は、知らないしその傷をジャックが見ている事も知らない。
「どうしてだ?」
「どんな傷であれ顔に付いている傷は、女の子にとって見られたく無いモノなのよ。」
それが親兄弟以外で初めて好きになった相手なら尚更見られたく無いのだ。
「俺は、お前の顔にどんな傷が着いてい様と構わないと言うのに。」
遊星は、ジャックの上半身に自分の躰を乗せ。
「女の子なら誰しも自分の顔に着いた傷を大切な人には、見られたく無いモノなの。だからもし私に逢いたく
なったら私が眠っている時にして。」
遊星の言葉の裏に隠された想いに気が付いたが
「俺は、お前の蒼い瞳が見たい。お前の声が聞きたい。」
指先で遊星の目許をなぞり唇を親指の腹で触れる。
遊星は、その指を軽く舌先で舐め。
「私だって貴方の綺麗な紫の瞳を見たいし貴方の声を聞きたい。でも私は、この傷のまま貴方に逢いたく
無い。貴方には、昔の私に逢って欲しい。」
完全に顔の傷は、癒えない事ぐらい想像出来るが今の様に酷い顔じゃない筈だから。
遊星は、出来るだけの笑みを浮かべてジャックに告げる。
ただその更なる裏に込められた気持ちに気付く事無く。
暫く2人で甘い時間を過した後、
「俺は、現実世界でお前を待っている。必ず戻って来い遊星。」
「解っている。必ず戻るから・・・」
触れるだけのキスを交わし離れる2人。
薄れ行くジャックの姿を見送る遊星。
戻ると決めた以上遊星もココに留まっている理由なんて無い。
どうやって戻ればいいのか遊星自身知らないけど何となく戻り方が解る。
強く強く戻りたいと念じれば戻れる。
「そう言えばアキが言ってたっけ」
人の想いは、計り知れない力を持ち想像だに出来ない未来を造りだすと・・・。
だから遊星は、願った。大切な人達が居る現実世界に戻ると。
今一度彼等と共に有りたいと・・・
+++
どれだけの間意識を無くしていたのか解らない。
見なれない天井。
ジャックは、ゆっくりと躰を起すが軽い眩暈を起す。
「急に起きるとダメですよ。もう少し横になっていて下さい。」
何処と無くあどけなさを残した女性がジャックに声をかけるが
「遊星の手術は、どうなった?」
くらむ頭を片手で押さえながら女性の静止を振りきって起きあがると
「無事に済んだわ。でもそれは、目の方であって顔の方じゃない。顔は、少しずつだけど時間をかけて治すわ。
それにしても貴方の精神力は、化け物級ね。普通の人間じゃ相手の精神に取り込まれ廃人となるのがオチ
なのに意識を取り戻すなんて。」
「フン・・・俺の力だけじゃない。」
多分何の保護も無ければアキが言うように廃人になっていたかもしれない。
きっと遊星の両親が守ってくれたんだろう。
そう思わないと辻褄が会わなくなるから。
「そんな事より。この病院には、まだ空きの病室とベッドが在るか?」
「在るけど・・・どうしたの?」
自分の隣で眠る遊星。
彼女の意識が戻っている事をジャックは、感じていた。そしてもう少しで目覚める事も・・・。
「俺をそっちに移してくれ。」
「えっ!折角遊星さんと同じ病室に居るのに・・・」
「解ったわ。貴方が遊星と何を約束したのか知らないけど貴方がそれを望むなら。龍可急いで病室の手配を
して。」
「でも・・・アキさん・・・」
「これは、上官としての命令よ。」
「解りました。」
渋々というように女性は、空きの病室へジャックを移動させる手配を取りに行った。
「貴方のその反応からして遊星が目覚めるようね。」
「ああ・・・アイツの顔の傷が癒えるまで会わないと約束した。」
隣で眠る遊星の顔には、痛々しく包帯が捲かれている。
「確かに女の子なら誰しも傷の在る顔なんて見られたく無いモノだものね。しかしそれを貴方が受けいれるとは、
思わなかった。貴方の事だから無理矢理にでも傍に居ると思ったけど。」
「フン 生憎と遊星が俺の傍を離れないと約束した以上、俺もアイツとの約束を守らなければな。」
やっと遊星を手中に収めたのだ。
これで下らない事で彼女の機嫌を損ねるワケには、いかない。
そう思うジャックの傍らでアキは、別の事を考えていた。
(遊星 貴女は、何を考えているの?本当にそれだけの理由で彼を遠ざけたの?私には、もっと別の意味が
在る様に感じられる)
数分ぐらいして戻って来た龍可。
「アキさん部屋の用意が整いました。今すぐにでも移動可能です。」
そう言って車椅子を持参して来た。
「アトラスさんこれに乗って下さい。」
「そんなモノ不用だ。俺の足で移動できる。」
そう豪語したものの精神的疲労故に立つことままならず膝から崩れ落ちてしまい不愉快ながらも車椅子に乗る
事となった。
ジャックが連れてこられた病室は、遊星の病室の目と鼻の先。
会おうと思えば何時でも会える距離。
これは、誰かの計らいか?と思える状況だが本当にこの病院で空いている病室とベットが在るのはココだけなの
だった。
ジャックは、龍可が用意した車椅子に乗り病室を移動した。
そして暫くして目覚めた遊星。
何処かボンヤリとした表情を浮かべていたが意識が戻るにつれ顔半分を押さえ悶え苦しみだした。
「遊星!!遊星落ちついて!!直に鎮痛剤を打つから。」
焼ける様な引きつる様な得も言えぬ痛み。
アキは、遊星の躰をベッドに押さえ込みテレパシーを使ってディヴァインに応援を要請する。
駆けつけたディヴァインによって鎮痛剤を打たれ痛みが幾分引いた遊星は、荒い息を吐きながら横になる。
こんな時でも遊星の口からジャックの名前が出て来ない。
「遊星 貴女どうしてジャックに助けを求めないの?」
どんな約束をしたのか解らないけど恐怖や苦痛に苛まされる時人は、誰かに助けを求めるもの。
しかもそれが自分にとって特別な相手なら尚更だと思う。