ライバルから恋人へ-4-


何故自分は、遊星にあんな事をしたのか・・・

遊星は、もう2度と自分の前に姿を現さないかもしれない。

以前クロウが言っていた「遊星は、レベルを落してこの学校を選んだ」と。

だったら遊星が望めば何処かの学校に編入してしまうかもしれない。

学科別の試験、学年別の試験・・・ジャックは、遊星のテストの点数と順位を把握していた。

彼ほどの才能が有れば何処の学校でも大手振って喜ぶだろう。

それに彼の父親の名前が付いてくれば尚更だ。

『遊星粒子』を発見しモーメント開発の第一人者である不動博士の子息。

ジャックは、遊星を他校へ行かせる気になんて更々無い。

もし遊星が他校に行くと言うなら彼を誘拐し自分の手元で監禁する。

誰にも会わせない日の目にも会わせない。

遊星に自分だけを刻み込む・・・

何時の間に自分の世界に遊星は、居たのだろう?

あの入学式から1週間後彼がクロウに誘われてデュエル部に来た時からか?

クロウから遊星の事を聞いた時からか?

「ククク・・・そんな事関係無い。」

何時からであろうと関係無い。

自分が遊星に惚れていると言う事実さえ有ればそれでいいのだ。

 

「フン 俺らしくも無い・・・」

今迄何も望まなくても何でも手に入った。

女だって勝ってに向こうからやってくる。

生徒会長としての地位も教師と前任者のたっての希望。

成績だって勉強しなくても教師の話しを聞いているだけで頭に入る。

デュエルだってそうだ。

手加減しても勝ってしまう。

それなのに欲しいモノが出来た途端それが手に入らない。

初めて自分から望んだのに・・・

どう接して良いのか解らない。

だから自分の気持ちを押し付けてしまいそうになる。

否・・・今日ばかりは、押し付けてしまった。

我慢が出来なかった。

 

窓の外を何となく眺めていると

コンコン・・・

とノックの音。

返事をするのも億劫だったがそれでも

「入れ」

とだけ命令する。

控え目に開けられる扉。

「アトラス先輩・・・」

 

 

+++

 

帰宅後 遊星は、ジャックの行動が理解出来なかった。

何故彼は、自分にキスなんてしたのだろう?

以前同級生が言っていた様に彼ほどの頭脳と容貌があれば女の子を選び放題だと思う。

ジャックにとって自分は『特別な相手』なのかそれとも・・・『暇潰しの相手』なのか・・・。

『毛色の変わった玩具の類』?

色々考えるが解らない。

製作途中のD・ホイールを前に集中出来ない。

作業が捗らない。

こんな時は、何もしない方が賢明なのだ。

遊星は、製作を断念しながら風呂場へと向かう。

入浴後夕食を終え海外に居る両親からのメールをチェックする。

仕事の関係で数年前から海外に赴任している両親。

本当は、着いて行く話しが有ったが遊星は「日本に残りたい」と我儘を言って日本に残ったのだ。

相変わらず仲の良い両親の写真付きで送られて来るメール。

「全く相変わらずだな」

遊星自身写メは、しないが近況報告はちゃんとしている。

ただ・・・今日在ったジャックとの事は、省いて。

(クロウ 心配しているだろうなぁ。)

帰宅時のクロウを思い出す。

何時も兄の様に接してくれたクロウ。

何かあった時は、何時も相談していたのに・・・

今日の事は、言えなかった。

もし言えたとしても何と言えばいいのだ?

クロウに余計な心配をさせるだけ。

もしかしたら何かしらクロウに気付かれたかもしれない。

冷静になって考えてみればどんなに嘘を吐こうともクロウには、簡単に見破られていたのだ。

多分、遊星が吐いた嘘も見破っているのかもしれない。

 

+++

 

翌日・・・

何時もと何等変わり無く登校した遊星。

ただ昨日の事を除いて・・・。

「不動 登校して来たか。ちょっと職員室まで来てくれないか?」

担任からの呼び出し。

「不動何やらかしたんだ?」

「バ〜カ 不動みたいな優等生が問題なんて起すかよ。」

好き好きに言っているクラスメートを他所に

「ちょっと行って来る。」

とだけ言い残し遊星は、職員室へと向かった。

遊星が教室を出て暫くしてから

「おい あれってアトラス先輩じゃないか?」

「えっ?女と一緒に登校って・・・」

「しかもあの女子って・・・」

ジャックが女生徒と一緒に登校して来たのだが、その女生徒は以前遊星にジャックを紹介して欲しいと言って来た

女生徒。

「もしかして告ったのか?」

「やっぱりアトラス先輩も可愛い女には、弱いのかねぇ〜。」

「ああ〜俺もアトラス先輩みたいに可愛い女の子と付きあいてぇ〜」

 

 

---職員室---

 

「先生何かオレに用でも?」

「不動ちょっとこっちに来てくれないか?」

職員室横の応接室に案内される遊星。

校長と教頭と学年主任に生活指導の教師の姿があった。

異様な光景の様に見えた。

「不動君 君の将来に関るかもしれない大事な話しなんだ。心して聞いてくれないか・・・」

真摯な表情で話し出す校長に遊星は、不安感を抱いていた。


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